聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

佐藤 美奈

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第23話

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「ア……アメリアお姉様……?」

フローラとエリザベスは振り返ってみるとアメリアが立っていた。エリザベスは見た瞬間、身の縮む思いがして恐怖で声が震えていた。フローラはアメリアが恐ろしくて両足がわなわな震えて、口を開いたままで言葉が出ず金縛りにあったように身動きできなかった。

「二人とも顔色が悪いよ?弱い小動物みたい、野ねずみのように怯えて昔の私とそっくり」

意地悪な姉と妹にアメリアは自分のことを生まれたてのひなで、脆くて弱い生き物だと思い込まされていた。少し前までのアメリアは自分に自信がなくて、いつも何かに怯えてるように見えた。嫌われないように他人の顔色ばかりうかがって、無理に笑顔を作って愛想を振りまいていた。

昔のアメリアはそんな感じなので、初めて会った人には必ず人間的に下だと思われた。第一印象でアメリアは合格点に満たない器の小さい人間だとなめられ続けた。いくら美人で公爵令嬢という立場で強大な権力を持っていても後ろ向きな性格なので、レベルが低いしょぼい女性だと思われた。

勇気に欠ける臆病なアメリアは自分よりずっと年下の子供にまでされた。見下されて小馬鹿にするように笑われて軽く扱われる辛くて悲しい人生だった。フローラとエリザベスから意図的な悪意ある洗脳を受けて、アメリアは精神を支配されていたので仕方ないことだったが今は完全に洗脳が解けている。

(この人は誰……?本当にアメリアなの?なに……これ……いつも弱気で度胸も思い切りもなかったあのアメリアなの?)

頭の中でフローラは自問自答を繰り返していた。自分自身に問いかけ自分で答えては衝撃を受ける。フローラは様々な思いが頭をよぎっていく。この前の風呂場でのやり取りを思い出した。

フローラはクロフォードと一緒に風呂に入ろうとしていた。フローラは先に入って待っていたけど、クロフォードがいつまで経っても入ってこないので様子を見に出てきた。その場には何故かアメリアがいてクロフォードと揉めていた。

自分の婚約者が姉と風呂に入ろうとしているので怒るのは当然だが、弱気なアメリアはフローラに向かってペコペコ頭を下げていた。自分の男を姉にとられているのにアメリアは本当に情けない姿であった。

フローラに怒られるのが怖くてアメリアは媚びるような目を向けながら、ぎこちなく笑ってフローラに見えすいたお世辞を言ってご機嫌をとるのに必死だった。されているフローラでさえ痛ましく感じて、負け犬を見るような眼差しで見つめて冷たい薄ら笑いをうかべていた。

フローラはクロフォードと一緒に風呂に入るから邪魔だと言ってアメリアを追い出した。中からは楽しそうに遊んでふざけて笑いあっている声が聞こえていた。アメリアは自分が惨めに思えて泣きそうな顔になる。二人は嬉しさではしゃいで思いっきりストレス発散していた。アメリアは絶望で目の前が真っ暗になって、体から力が抜けて静かにその場に崩れ落ちた。

「フローラ、クロフォードとお風呂に入って体をくっつけて仲良く戯れて楽しかった?」

自分のことを子犬と思い込んで姉と妹に弱気で怯えていたアメリアはいなかった。フローラはアメリアのことが神話の中の生き物の巨竜に思えたし、人間にはどうすることもできない存在の魔王や神とさえ思えてならなかった。
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