王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

佐藤 美奈

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第11話

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――夫はついさっきまで妻に非を責められたショックで気絶きぜつしていた。

われが大ばか夫とは、心の底から愛おしい妻よ……あんまりではないか?」
「お母様……なぜそれほどクロエのことが大切なのですか?」

この男はエリザベスのことを心から愛していた。いつまでも初めて付き合った時の気持ちを持っている。好きすぎて毎日切ない思いにられていたほどです。それなのに大ばか夫と本気で怒られて、悲しくて泣きそうで目に涙を浮かべていた。

弱りきった顔で深く落ち込んでしまった父を見て、ガブリエルは気まずさを感じて口を開いたのです。母に問いたげな目を向けて、クロエのことがどうして重要なのか?母を刺激しげきしないように静かに話しかけました。

「もう身にしみてわかっているでしょう?」
「それは、どういう……?」
「はぁーっ……魔法が使えなくなったことですよ」

エリザベスは寂しい思いをしながら、愛しげに息子を見て優しい声で語りかけた。通常どおりの物分かりが悪い息子に、母はひたいに手を当てながら大きくため息をついて、魔法が使えなくなったことだと言う。

(どうしてこの子はなのかしら?容姿やスタイルは美しいのに……)

顔の形が素晴らしく整っている息子の間抜けな顔を見ながら母は考える。息子が異常に無学な理由は、生まれた時に与えられたステータスを容姿ようしとスタイルという、見た目の良さに全振りしたのだろうと思った。

「確かに今、この国の誰もが魔法を使えなくなっているようです。それとクロエが関係あるのですか?」
「大ありです。彼女はこのディオール魔法帝国の一番大切な宝で全てなのです」

少し真面目まじめな顔になったガブリエルは言う。不意打ちのように魔法が使えなくなって、国民全員が混乱している状況である。その事にクロエはきわめて密接な関係があると母は答えた。しかも今まで見下して無能だと言っていたクロエのことを魔法帝国で限りなくだと言うのです。

ガブリエルはすさまじい迫力に満ちた母の目を見て、不安そうな顔で内心あせり始めた。自分はとんでもないことしたのではないか?クロエと婚約破棄を宣言して、新しい婚約相手のアンジェリカと魔法が使えない不要物と言って意地悪く笑っていた。

「……ク、クロエは……そ、それほどの女性なのですか?」
「はっきり言いましょう!彼女が国にいるからみんなが平和で幸せに暮らせるのです。彼女が本体なら、私たち王族はただの歯車にすぎない。先ほどから、あなたたちは思い上がりもはなはだしい!!!私たち王族のために国があるのではありませんっ!!!!!」

とうとう彼は怖くなって怯えきった顔で震え声を出した。母は高圧的こうあつてきな口ぶりで語り出して、息子は土下座をしながら身体を丸めて小さくなった。一瞬、背筋に冷たいものが走り抜けた気がしたのだ。

この世界では、勇気に欠ける態度をとる事が男性にとってはもっとも恥ずべき事となっている。とは言え、今の精神状態せいしんじょうたいの彼には、そんなこと言っていられない。全精力ぜんせいりょくを注ぎこんでどんどん小さくなっていく。母は息子の身体が本当に小さくなったように見えた。

(こんな怖いお母様は初めてだ。恥かしいけど、つい少しらしてしまった……お父様……!?)

「……お父様……しっかりしてください……」
「……!?」

ふととなりにいる父を見ると、白目をき口から泡があふれていた。廃人はいじんと変わらない顔でたましいの抜けた体だけの抜けがらと化している父を見てしまう。次の瞬間、顔に苦悩の色を浮かべて、いかにも弱々しい声で呼びかけたのですが……。

身体が本能的にピクリと動いただけで、父は何も返事はしない。まるでしかばねのようである。

「……もうダメだ、おしまいだぁ……魔法帝国は……崩壊ほうかいするのだ……」
「男のくせに軟弱者なんじゃくものっ!!!弱音を吐いてあきらめるようなことだけは言わないでください。私の代わりに国を任せていましたが、やはりこの人は国民を守る王のうつわにはなれませんね……」

抜け殻状態で気を失っていた夫が何か話し出す。急成長をげて大いに栄えていたディオール帝国が、完全に崩壊するのではないかという不安をなさけない声でぶつぶつつぶやいた。

女王エリザベスは燃えるようなひとみにらみつけると、一切同情することなく厳しく叱責しっせきしたのだった。
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