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12 約束

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「クロエありがとう。大変お世話になった」
「そんなお気になさらずに……これも何かのご縁です」
「本当に感謝している。今こうして生きていられるのもクロエのおかげだ」

レオンからありがたいと感謝の意を示されると、クロエは少し頬を赤らめつつ緊張した様子で受け答えをする。

クロエの治癒魔法で生気を取り戻した騎士達は、顔の色つやがよくなって気力が満ちあふれる。その姿にクロエも嬉しくなり口元がほころぶ。

レオンは彼女の横顔を眺めながら、優しく微笑むと改めてお礼の言葉を口にしました。

「旅路は大事な用事でどこかに向かってるの?」
「はい、そんなところです」
「急いでいたのに申し訳ない。クロエには情けをかけてもらった。でも残念だな……」

どこかに行く途中なのか?レオンがクロエの瞳を見つめて一段と上品な口調で問いを投げかける。クロは同意するように頷きます。今は自分の家が治めている領地に向かっている最中。

何となくクロエの心情を察したレオンは、緊急の用事があるのに面倒を見てもらい、クロエの深い愛をしみじみと噛みしめます。しかしその後に未練が残っているような言葉を寂しそうにささやく。


「なにがでしょうか?」
「いや、クロエに予定がなかったら私達の国に是非とも招待したかった。ここで君と別れるのは非常に悲しいからね」

レオンの意味深な呟きが心に引っかかるクロエは、素朴に質問した。切ない雰囲気なのに存在感を放っている美顔は語る。

苦しい状況から救ってくれた恩人のクロエを国に招き入れたい。レオンの純真な本音でした。このままクロエと離れ離れになるのは辛い。

とは言え、無理強いをして彼女を連れて行くわけにも行きません。義理と人情に厚いレオンは、道徳に反する行為はできない。

「クロエの用件が終われば国に来てほしい。その時は手厚くもてなすことを約束しよう」
「分かりました。私も伺うことを約束いたします」
「ありがとう……クロエが来てくれるのを胸をときめかせ首を長くして待っているよ」

用向きが完了すれば自分達の国家に訪問してくれと、同情を引く表情で頼み込まれる。そんなにすがるような瞳で見つめられて、ぎゅっと手を握られては無下に突き放すことはできないのが彼女。

温かく迎えることをクロエに誓いを立てるために、手の甲にキスをして契りを結ぶ。公爵令嬢のクロエにとってはキスくらい慣れたもの。心臓が一瞬だけ止まる程度でした。

馬車の中、クロエの脳裏に回想されるレオンの自然な振る舞いに、溢れるような美しさを感じるのです。
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