幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。

第2話

「どうして私がお荷物なの？」
「それじゃあ聞くがレベッカは戦闘の時に後ろで何をしてるんだ？」
「え？いや、みんなの様々な能力を付与ふよして上げてるけど？」

どうしても納得しきれないものがあったレベッカは、どうして自分は悩みの種なのか聞いた。レベッカは付与術師という職種で、メンバーの身体能力や魔法の威力を何倍にも上げている。実際に素晴らしい働きをしているのだが、メンバーにはどうにも理解されていないようなのだ。

「嘘をつけ！付与術師って胡散臭うさんくさいんだよ。いつも戦いのときは、こそこそと隠れて逃げ回って……敵にダメージを与えることも出来ないし、できる事と言えばご飯の用意くらいだろ？いい加減目障めざわりなんだよ」

その証拠にアルスが的外れな批判をしてくる。少なくとも戦闘の結果において、もっとも大きな役に立っているはずなのに無能呼ばわりされているという次第です。

「……レベッカ最後に聞いてあげる。君は戦力外で本当に無能だけど今まで出会った中で一番綺麗な女性だ。僕の愛人になるなら追放することはもう一度考え直すけど？」

アルスは頭にある考えが閃いてニヤリと笑って意地悪く言う。パーティーには不必要だが心を惹きつける魅力的な女性だから、愛人に加われば追放を考え直すらしい。

実はアルスはレベッカに対してしつこく言い寄っていた。何回口説いても説得出来なくて今は匙さじを投げていたところだった。ちょうどいい機会とばかりに尋ねてみた。

「ふざけないで！誰があんたみたいな汚らしい好色漢こうしょくかんに抱かれるか!!」

レベッカはアルスにどうにも抑えがたい嫌悪感を抱いて、部屋中に響くような声で言い返した。彼女は普段は冷静な態度であるが急に苛立ちを覚えた。けれど強気を装ってはいるが、心の中では不安な気持ちでいっぱいであった。

「私たちのアルスになんてことを言うの！」
「少し美人だからって調子に乗らないで！」
「……ひどい……！」

スケベ野郎のアルスに悪口をはき捨てるように言ったら、やっぱり案の定アルスの幼馴染の愛人たちが噛みつくように言葉を浴びせてくる。

「それなら仕方ないね」
「こんなパーティー喜んで辞めてやるわ！さよなら」

アルスは、みすみす手放すのは実に惜しいが諦めざるを得ないだろうという思いである。さよならの言葉を言うと逃げるようにレベッカは部屋から飛びだそうとした。

「ちょっと待てよ」
「なに？」

するとアルスがレベッカの腕をつかんで引き止めた。レベッカは困惑したような顔をして意外に思って聞き返す。内心ほっとした思いで、今までの話は冗談だと言われるのをレベッカは期待をした。