幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。

第20話 幼馴染の勇者パーティー視点4

――レベッカの幼馴染の勇者パーティーは、思いがけず路上強盗に出くわして見事に退治した。今は助けた男に、どうしてもお礼がしたいと言われて自宅に招かれていた。

予想通り男は、かなり裕福な商人で莫大な財を築いていた。豪壮ごうそうな邸宅をかまえていて、この辺りは高級住宅地と言われる。立派な門構えの大きな屋敷が建ち並んでおりました。

「勇者様おかげで助かりました。改めて厚くお礼申し上げます」

黒革のソファに腰を下ろした男が、勇者パーティーに向かって深く頭を下げた。強盗集団の標的にされて、危ないところを防いでくれた勇者たちは、自分の命を助けてくれた大切な恩人である。男が感謝するのは、ごく当たり前のことだった。

「僕たちは当然のことをしただけですよ。心穏やかに平和な生活をしている人を守るのが勇者パーティーの務めですからね」

リーダーのアルスが、もっともらしい顔をして話す。彼の瞳と口調は真剣そのものである。実際のところは、正面に座っている男を自分たちが襲いかかるところでした。

その理由も呆れたもので、ギャンブルで有り金を全部ぶち込んで完全にすっからかんになってしまった。それもそのお金は追放したレベッカから没収ぼっしゅうしたものであります。性格が歪んでいる彼らは、強盗計画を実行しようとしていたのだ。

「さすが勇者様！何と素晴らしい心持ちですな。本当にありがとうございます。あのこれは少ないですがお礼です」

だが商人の男は、そんな事はわからないので命を助けられたことを大粒の涙を落としながら、労ねぎらいの言葉を口にすると、せめてもの誠意としてお金を差し出しました。

「そんなの受け取れない。僕たちはお金が欲しくてあなたを助けたわけではありません！」
「彼の言う通りです。心外ですわ」
「私たちは別に金銭的な見返りを求めているわけではないですけど……」

アルスは畏かしこまった態度をとって真面目な声で言う。ギャンブルで負けてほとんど無一文なので、本当はすぐに飛びついてお金を受け取りたいのに丁寧ていねいにお断りする。

アルスと愛人関係の付き合いをしているグレースとジェシカも、お礼を期待して助けたわけではないと不機嫌そうに顔をしかめてアルスに同意する意見を口にする。

「申し訳ございません！ですが先ほどの勇者様のお言葉でそれは重々わかっております。これは命を救っていただいた私からのせめてもの恩返しだと思ってください」

大変失礼をいたしましたと、商人の男は目頭に涙を一杯溜めて謝罪した。続けて非常に親切な勇者様の愛と優しさは身にしみて感じていると答えた。男は少しでも恩返しをしなければ気がすまないと思っている。

「はぁーっ、そこまで言われたら仕方ないか……それではこの人の面子を立ててお金はありがたく受け取ろう。みんなそれでいいな？」
「それならしょうがないか……」
「相手の面目をつぶすわけにはいかないですからね」
「ご遠慮なくお納めください」

アルスは肩を落としてため息をついた。そこまで言われたら仕方ないと言い、気の進まない様子で彼らはお金を受け取るのだった。