母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈

文字の大きさ
6 / 17

第6話

しおりを挟む
「今日はいつもより早いのですね」
「仕事にひと段落がついたからな」
「そう、いつもお疲れ様です」
「こちらこそいつもアイシャには感謝しているよ」

いつもなら職務がいつ終わろうと仕事関係者と酒を飲みに行って、そこで食事を済ませて夜遅く帰るのをアイシャは調査をして知っている。

話し相手のメイドはいるが、まだ子供のいない夫婦でどこか淋しい。切ない雰囲気のアイシャはいつも一人で夕食をとっていた。そう思えばナルセスと会話をしたのも久しぶりのこと。

その日は一緒に食事をして互いに尽きぬ思いを語り明した。気のせいかナルセスが少し嬉しそうな様子をしていたのをアイシャは感じ取る。まだ自分のことを愛していて夫婦として続けていく気はあるらしい。

「こんなにアイシャと話したのはいつぶりだろうな……」
「忙しければ仕方ありませんよ」
「最近は全然会話できなくて悪かった」

食事が終わりナルセスは風呂に入り数時間後、寝室のベッドの隣でナルセスが寝ている顔を見て、深い眠りに落ちている事を確認してから部屋を出る。

アイシャは夜中ひそかにろうそくを手にして移動する。薄暗い部屋に入りナルセスのことを数週間に渡って監視していた者から行動の報告を聞くためだった。

「どうだったの?」
「やはりナルセス様はある人物と決まった日にちに逢い引きを繰り返していました」
「相手は誰なの?」
「聞けばご不快になられると思いますが……」
「教えて!」
「それではこちらの報告書をご覧ください」

不安で胸が張り裂けそうになる気持ちを抑えて、部屋で待っていた者に問いかけました。相手の返答に何ともいえない感情がアイシャの胸の中で込み上げてくる。

アイシャは目を通していると、密会していた相手がルージュだと知り怒りに身を震わせる。結婚の挨拶の時に紹介しているので、当然ナルセスはルージュが自分の義姉だと分かっている。

継母のバーバラと一緒になって虐げられていたこともナルセスには包み隠さず伝えていた。その話を聞いたナルセスはつらかったね、これからは自分が支えて守っていくと慰めてくれたのです。

「とんでもない継母と義姉だ。アイシャの父も頭がおかしい。自分の子供が苦しめられているのを黙って見ているなんて情けない。アイシャの父は何を考えていたんだ」

そしてアイシャを傷つけた二人のことを許せないと、激しい怒りの念が込められた顔で言ってくれた。それなのにルージュと密かに会って関係を持っていたのかと思うと気が狂いそう。だけど今は冷静さを装い、怪しまれないような振る舞いを心がける必要があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷淡姫の恋心

玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。 そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。 我慢すれば済む、それは本当に? 貴族らしくある、そればかりに目を向けていない? 不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。 ※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

「前世の記憶がある!」と言い張る女が、私の夫を狙ってる。

百谷シカ
恋愛
「彼を返して! その方は私の夫なのよ!!」 「ちょっと意味がわかりませんけど……あの、どちら様?」 私はメランデル伯爵夫人ヴェロニカ・フェーリーン。 夫のパールとは幼馴染で、現在はおしどり夫婦。 社交界でも幼い頃から公然の仲だった私たちにとって、真面目にありえない事件。 「フレイヤよ。私、前世の記憶があるの。彼と結婚していたのよ! 彼を返してッ!!」 その女の名はフレイヤ・ハリアン。 数ヶ月前に亡くなったパルムクランツ伯爵の令嬢とのこと。 「パルムクランツ卿と言えば……ほら」 「あ」 パールに言われて思い出した。 中年に差し掛かったアルメアン侯爵令嬢を娶り、その私生児まで引き取ったお爺ちゃん…… 「えっ!? じゃあフレイヤって侯爵家の血筋なの!?」 どうしよう。もし秘密の父親まで超高貴な方だったりしたらもう太刀打ちできない。 ところが……。 「妹が御迷惑をおかけし申し訳ありません」 パルムクランツ伯爵令嬢、の、オリガ。高貴な血筋かもしれない例の連れ子が現れた。 「妹は、養父が晩年になって引き取った孤児なのです」 「……ぇえ!?」 ちょっと待ってよ。  じゃあ、いろいろ謎すぎる女が私の夫を狙ってるって事!? 恐すぎるんですけど!! ================= (他「エブリスタ」様に投稿)

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

公爵さま、私が本物です!

水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。 しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。 フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。 マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。 フローラは胸中で必死に訴える。 「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」 ※設定ゆるゆるご都合主義

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

処理中です...