彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む

第38話

強い糸で結ばれた間柄のアンドレとキャンディの決別の嵐が過ぎ去り、私たちの恋は雨上がりの空のように澄み渡っていた。アンドレは生まれ変わったかのように、私だけを愛して私だけを大切にしてくれた。その年のクリスマスは、私にとって生涯忘れられないほど最高に幸せな夜となった。

王宮主催のクリスマスパーティー。煌びやかなシャンデリアが輝く会場で、私はアンドレの腕にエスコートされて足を踏み入れた。私の身を包む深紅のベルベットのドレスは、鮮やかな赤い薔薇ばらが咲いたかのように華やかで、見る者の目を引く美しさを放っていた。

彼が身に着けた上品で洗練された黒の礼装は、シンプルながらも目を引く魅力を持っていた。二人の姿は、誰もが羨む理想的な組み合わせのように輝いていた。どこからも羨望の眼差しが向けられ、周りの世界が私たちだけを祝福しているかのように感じられた。

「綺麗だよ、ニーナ。今夜、この会場の誰よりも」

アンドレの声は優しく、心に深く染み入るような温かさを帯びていた。

「あなたこそ素敵よ、アンドレ」

私は彼の目を見つめ返して微笑みながら答えた。

シャンパングラスが軽やかに重なり、二人で踊る甘いワルツのリズムが心の奥まで響き渡る。彼の腕の中は、一番安全で温かな場所。今は何も怖いものはない。全てが完璧で、未来が輝いているように感じた。

ダンスの合間に、私たちはバルコニーに出て、冬の冷たい空気に包まれながら王都のイルミネーションを眺めた。吐く息が白く染まる寒さの中、アンドレは私をしっかりと自分のコートで包み込んだ。彼の背中に感じるその温もりが、私の心を優しく満たしていく。背中から伝わる彼の心臓の鼓動が唯一の音のように感じられた。

「メリークリスマス、ニーナ」
「メリークリスマス、アンドレ」

アンドレの声が、夜空の下で優しく響き、星々がその音を受け止めて輝いているかのように感じられた。私は自然に彼の手をしっかりと握り返して心の中で強く誓った。この瞬間が永遠に続き、二人の時間が止まってほしいと願わずにはいられなかった。この世の全ての幸せが、今この瞬間に凝縮されているかのような満ち足りた気持ちが心に広がった。

私たちは、この広い世界に二人きりしかいないかのように、幸せな時間にひたすら浸っていた。アンドレの温かな手が私の手を包み、彼の笑顔が私の心を満たす。しかし、その幸せなその光景を、柱の陰から憎しみに満ちた目で見つめている影があった。それは、キャンディだった。

アンドレに振られて以来、すっかりやつれてしまった彼女は、今日のパーティーにも意地で参加してきたのだろう。彼女の姿は、すべての希望を失ったかのように感じられた。幸せそうな私たちの姿は、彼女の心をナイフのように切り刻んでいた。

「……辛いのなら、参加しなくてもいいんじゃないか」

突然、王太子ロッドがキャンディの隣に歩み寄って声をかけた。彼の言葉は、彼女の心情を察するかのように優しさに満ちていた。どこか気遣うような響きがその声に込められていて、彼の温かな眼差しがキャンディを見守っているのがわかった。ロッドは、今はただひたすらに彼女を思いやるような表情を浮かべていた。

私自身も、過去に何度も、彼の深い愛情と優しさにどれほど助けられたことか。彼は周りの人々を常に配慮し、無償でその心を捧げるような人物だ。それが、改めて私の心に強く響き、再認識させられる瞬間だった。ロッドの優しさは、決して偽りではなく彼の本質そのものであることを私はよく知っている。