6 / 7
第6話
しおりを挟む
「殿下は私の家庭は無茶苦茶にしたくせに自分の結婚は命がけで守りたいのですね」
「僕は最低野郎だよ。好きなだけ罵ってくれ…アイリにはその権利がある」
ピエール殿下は話の流れでマリア令嬢と結婚することをうっかり口に出したことをひどく後悔していた。アイリの言葉は自分に重くのしかかってきて、この問題からはもう逃げだすことはできない。
表面では観念し頭を下げて心のこもった顔になり誠意のある態度で接した。これからは精一杯尽くして手助けをするとアイリに従順さを示す。
しかし心の中では婚約者を巻き込みたくないと言う強い意思。アイリを口説いて不倫に導いたのはピエールのほうだが自分もふしだらな関係に同意したじゃないかと言う思いで、夫にバレて追い出されたのは胸を痛めるが頼られても迷惑だとどす黒い悪意に満ちた感情が渦巻く。
「僕がマリアと別れて結婚が水の泡になればアイリは気が済んで満足か?」
謝罪が終わりこれからのアイリの住まいや生活費のことを話し合っている最中に何の前触れもなくピエール殿下が雰囲気を悪くするように声を荒くして叫ぶ。理由はアイリの希望する生活費の金額がピエールの想像の域を遥かに超えていたからだ。
アイリの本音を明かすと親友マリアとの結婚を教えられた時からピエールを許す選択はとうに無くなり、絶対に出来ないような無理難題なお願いをして困らせることしか頭にない。それでピエールから到底できないと返ってくればマリアに話すと答える。
「淑女はお金がかかるのです。今後は子供も産み育てなければなりませんから…」
「それにしても法外すぎる無茶な要求だ!断固拒否する!」
「それでは遠慮なくマリアに私達の過ちを告白します」
「待ってくれ!だがそのお金はあまりにも…結婚しても僕とマリアが生活できないだろう?」
「そんなことは私には関係ございません」
「親友のマリアがひもじい思いをしても構わないと言うのか?」
「でしたら殿下の食事を全てマリアに与えれば問題ないですね」
「何を言っている!逆に僕が飢えて死んでしまうだろ!」
「なら殿下が物乞いをすればよろしいと思いますが?」
「王太子の僕に乞食のまね事をしろと言うのか!」
二人の話し合いは平行線をたどり互いに譲り合って折れることもなかった。引くに引けなくいつまでも続く出口の見えない状態。
数十分後、ピエールが泣きながら鼻水をすすり悲痛な声でどのような償いでもするからとアイリにすがりついていた。今すぐに返事をするのは厳しいから少しだけ待っていてほしいと言い近いうちにまた対話して落とし所を見つけるべきだと主張する。
「殿下はこのまま何も誠意を見せないでお帰りになるつもりですか?」
「そ、そんなことはほんの僅かでも考えていない…」
気迫のこもった顔でアイリに詰め寄られると押し潰されそうな気持ちのピエールは自分の配下の者を呼び寄せお金を持ってくるように指示を出す。
結構な金銭の入った鞄を渡す時にぎこちない笑顔を向けるがアイリの表情は鉄仮面だった。ピエールはなんだか自分が恥ずかしく情けなくなり足早に居なくなる。その場の危険からやり過ごしてつかの間の安堵を得られピエールは深いため息をついた。
「僕は最低野郎だよ。好きなだけ罵ってくれ…アイリにはその権利がある」
ピエール殿下は話の流れでマリア令嬢と結婚することをうっかり口に出したことをひどく後悔していた。アイリの言葉は自分に重くのしかかってきて、この問題からはもう逃げだすことはできない。
表面では観念し頭を下げて心のこもった顔になり誠意のある態度で接した。これからは精一杯尽くして手助けをするとアイリに従順さを示す。
しかし心の中では婚約者を巻き込みたくないと言う強い意思。アイリを口説いて不倫に導いたのはピエールのほうだが自分もふしだらな関係に同意したじゃないかと言う思いで、夫にバレて追い出されたのは胸を痛めるが頼られても迷惑だとどす黒い悪意に満ちた感情が渦巻く。
「僕がマリアと別れて結婚が水の泡になればアイリは気が済んで満足か?」
謝罪が終わりこれからのアイリの住まいや生活費のことを話し合っている最中に何の前触れもなくピエール殿下が雰囲気を悪くするように声を荒くして叫ぶ。理由はアイリの希望する生活費の金額がピエールの想像の域を遥かに超えていたからだ。
アイリの本音を明かすと親友マリアとの結婚を教えられた時からピエールを許す選択はとうに無くなり、絶対に出来ないような無理難題なお願いをして困らせることしか頭にない。それでピエールから到底できないと返ってくればマリアに話すと答える。
「淑女はお金がかかるのです。今後は子供も産み育てなければなりませんから…」
「それにしても法外すぎる無茶な要求だ!断固拒否する!」
「それでは遠慮なくマリアに私達の過ちを告白します」
「待ってくれ!だがそのお金はあまりにも…結婚しても僕とマリアが生活できないだろう?」
「そんなことは私には関係ございません」
「親友のマリアがひもじい思いをしても構わないと言うのか?」
「でしたら殿下の食事を全てマリアに与えれば問題ないですね」
「何を言っている!逆に僕が飢えて死んでしまうだろ!」
「なら殿下が物乞いをすればよろしいと思いますが?」
「王太子の僕に乞食のまね事をしろと言うのか!」
二人の話し合いは平行線をたどり互いに譲り合って折れることもなかった。引くに引けなくいつまでも続く出口の見えない状態。
数十分後、ピエールが泣きながら鼻水をすすり悲痛な声でどのような償いでもするからとアイリにすがりついていた。今すぐに返事をするのは厳しいから少しだけ待っていてほしいと言い近いうちにまた対話して落とし所を見つけるべきだと主張する。
「殿下はこのまま何も誠意を見せないでお帰りになるつもりですか?」
「そ、そんなことはほんの僅かでも考えていない…」
気迫のこもった顔でアイリに詰め寄られると押し潰されそうな気持ちのピエールは自分の配下の者を呼び寄せお金を持ってくるように指示を出す。
結構な金銭の入った鞄を渡す時にぎこちない笑顔を向けるがアイリの表情は鉄仮面だった。ピエールはなんだか自分が恥ずかしく情けなくなり足早に居なくなる。その場の危険からやり過ごしてつかの間の安堵を得られピエールは深いため息をついた。
13
あなたにおすすめの小説
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました
当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。
リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。
結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。
指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。
そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。
けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。
仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。
「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」
ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。
婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました
よーこ
恋愛
侯爵令嬢のアレクシアは婚約者の王太子から婚約の解消を頼まれてしまう。
理由は初恋の相手である男爵令嬢と添い遂げたいから。
それを聞いたアレクシアは、王太子の恋を応援することに。
さて、王太子の初恋は実るのかどうなのか。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
婚約解消の理由はあなた
彩柚月
恋愛
王女のレセプタントのオリヴィア。結婚の約束をしていた相手から解消の申し出を受けた理由は、王弟の息子に気に入られているから。
私の人生を壊したのはあなた。
許されると思わないでください。
全18話です。
最後まで書き終わって投稿予約済みです。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる