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第1話

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子爵令嬢のエマは伯爵家の令息アイザックと結婚して10年になる。エマは伯爵夫人として3人の子宝をさずかり日々幸せな生活を過ごす。形だけは仲の良い夫婦でありながらエマ夫人はある不満を胸に抱えていた。

今朝手紙が届く。差出人は夫のアイザックの母親マリアンヌからだった。2年前に伴侶はんりょに先立たれてひとり暮らしが寂しいらしい。とは言っても身辺の世話をしてくれるメイドもいて日頃話し相手もしてくれるので特に問題はない。

「明日からお祖母様の家に行こう。今は仕事も忙しくないから5日は泊まることにする」
「また行くのですか?」

突然アイザックが実母のマリアンヌの家に訪ねようと決め付けるように言い出す。

しかしエマは乗り気でなかった。理由はマリアンヌは世間知らずのわがままな偏屈な人でエマやエマの子供達を自分の手足のように扱い、エマがまともに返答せず黙り続けていると怒鳴りつけるような大声で命令してヒステリーを破裂させるのです。

そういう訳で夫の母親に会うのは窮屈でならない。それはエマの子供も同じように感じている。ところがマリアンヌは自分の息子であるアイザックとエマの子供の長男レオだけには肩をくっつけて寄り添い猫なで声を出して愛想を振りまく。

逆にエマと子供の長女ミアと次女ルナには大変に厳しい態度で意地の悪さが見え隠れする口汚い言葉を容赦なく吐き道具のように扱う。

「僕はお祖母様と会いたいありません」
「どうしてだレオ?お前はとても可愛がられているじゃないか。てっきり賛成してくれると思っていたが…」

自分の母親がエマ夫人とミアとルナには理不尽すぎる不当な仕打ちをしているのはアイザックも大体分わかっているので行きたがらないのも納得できるが、レオのことは目に入れても痛くないほど可愛がっていることを知っているから理解できないという顔になり脳内に疑問が沸き起こる。

その時、アイザックにある思いがふと閃く。エマ夫人がレオをそそのかして祖母に会いに行きたくないと言わせているのだと考えて妻のエマのことを不服そうに睨んだ。
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