世界に女は自分だけ妊娠して人間を救え「断る！私は子供は産まないし結婚しない」特別に重要な女性の幸福な独身生活

第5話 断る！私は子供は作らない

「アイは人類最後の希望なのだ。何分よろしく頼む」
「アイお願いだから子供を作ってこの世界を救ってくれ」

国王カルロスと息子のアルシオンは藁わらにもすがる思いで愛に助けを求めてきた。話を聞いて愛はこの世界の状況を把握する。床に座り頭を下げる二人の芝居がかった態度とは裏腹に困っているのは間違いないようだ。

今すぐにでも愛を何とか説得して子作りをしてもらわないと、近い未来には窮地に追い込まれることになる。女性が消えてから数年しか経っていないので今はまだこの世界に男は何十億人いる。愛が積極的に頑張れば人類が滅びる未来は防ぐことができる。

「断ります！私は子供を作りません」

今まで比較的穏やかな対応ぶりを見せていたが、愛は怒ったような顔をして急な勢いで子作りをしたくないと完全に否定した。

「え!?アイどうしてなんだ？」
「息子がタイプではないのか？それなら別の男を連れてくるからアイの好みの男を教えてくれぬか？」

愛に事情を説明すればわかってくれて直ぐにこの国の男たちと子供を作ってくれるだろう。カルロスとアルシオンは安易に考えていたのが誤算になった。

睨みつける愛の視線に耐えられず、カルロスとアルシオンは困ったような表情を浮かべて話しかけてくる。何が不満なのか？カルロスは息子と結婚させたいというのが本心ですが、愛のタイプの男ではなかったのだろうと思い言葉を口にした。

一般的に判断してアルシオンはすらりと背が高く美しい容姿を持ち、性格も心温かく気のいい男で人間性も優れている。親のカルロスから見てもアルシオンは、上品な美貌をして人の立場を考えて気配りができる申し分のない男だと常々思っている。

「アイの好みのタイプでないのは悲しいけど、私は愛の理想的な男になれるように努力するからね」

アルシオンはふと視線をそらし寂しそうな顔で言う。フロンティア王国のアルシオン王子といえば金髪で青い眼をし氷結の貴公子と呼ばれ、人柄も良くで柔らかみのある端麗な顔立ちで世間から高い評判を得ていた。

女性がいた数年前までは上流の令嬢たちに囲まれて、ほとんど幸福とさえ言える日々を過ごした。彼は女性たちから引く手あまたの状態であった。しかし今は状況が大きく変化している。

王子という立場は後に国王という絶大な権力が確立して向かうところ敵なしだろう。だがこの世界にとって愛は唯一無二の存在で一国の王子の権力など霞かすんでしまう。愛の言葉が全てにおいて最優先事項とし、愛に危害を加えることは許されないとカルロスが決定していた。