婚約者を妹に取られた私、幼馴染の〝氷の王子様〟に溺愛される日々

ぱんだ

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第27話

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一方、フレックスは、ユリアがカイルに密かにアプローチしていることには気づかず、相変わらず無邪気にユリアとの関係を楽しんでいた。彼は、今日のユリアの応援に感謝の意を込めて、おねだりされていた高価なブレスレットを彼女に贈った。

「ユリア、今日の応援、ありがとう。これは、僕からのプレゼントだよ」

穏やかな笑顔でブレスレットを差し出すフレックス。

「まあ、素敵! ありがとう、フレックス様!」

ユリアは嬉しそうに受け取る。その顔に浮かぶ天使のように愛らしい喜びは、フレックスにとっては何よりの報酬だった。

その裏で、フレックスの未来を脅かす時限爆弾がひっそりと存在していた。彼のポケットには、金融業者から届いた督促状が忍び寄り、その存在を日に日に強く主張していた。ユリアの邪悪なまでに純粋なおねだりに応じるうちに、フレックスは自分でも気づかぬうちに、手を出してはいけない領域に足を踏み入れてしまっていたのだ。

「これで、ユリアの笑顔が見られるなら……」

そう言い聞かせて、フレックスは心の中で自分を納得させ、その場で気持ちを落ち着けようとした。しかし、彼はまだ気づいていなかった。地獄の入り口に向かって進んでいるかのように、無意識のうちに自分を追い詰めていた。

そして、その夜。公爵邸の私の部屋で、二人きりの祝勝会が開かれていた。ワインがグラスに注がれ、柔らかな光が部屋を包み込んでいる。私はソファに座り、頬を膨らませて拗ねてみせた。少しだけわがままを言いたくなったからだ。

「ひどい人。本気で、心臓が止まるかと思った」

その言葉に、カイルは微笑みながら隣に座り、私の肩を優しく抱き寄せた。彼の体温が心地よく伝わり安心感を覚えた。

「お前が、あんな計算高い女に、あっさり席を譲るからだ。俺も隣になれて嬉しかったのに、俺がどれだけ妬いてるか、全然気づいてないだろ?」

カイルの声には少しの不満と、少しの甘えが混じっていた。その言葉に、私は口を尖らせながらも反論する。

「だって……」
「言い訳は聞かない」

彼は私をぎゅっと抱きしめ、私はそのまま彼の胸に顔をうずめた。彼の腕の中は、何よりも心地よく、世界で一番安心できる場所だと思う瞬間だった。

「……でも、最後の言葉、すごく嬉しかった」

素直にそう言うと、カイルは少しだけ目を細め、満足そうに微笑んだ。

「当たり前だ。俺の『』は、過去も、現在も、未来も、世界でお前ただ一人なんだから」

その言葉を聞いた瞬間、私は顔を赤らめ、照れくさくなった。そして、胸にじんわりと染み込んでいくのを感じた。

「お前の妹も、また懲りずに誘惑してきたし」
「すみません……」

申し訳なく思いながらも、カイルの表情を見ていると、そのまま甘いキスが私の唇に落ちた。そのキスが、すべての不安や疑念を消し去り、ただ一つ確かなものだけを残してくれる。もう、どんな勘違いも、どんなライバルも、私たちの邪魔はできない。彼の愛が最強の盾となって私を守ってくれるから。

私は、その腕の中で幸せなため息をつきながら、心から安心して笑った。
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