婚約者を妹に取られた私、幼馴染の〝氷の王子様〟に溺愛される日々

ぱんだ

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第32話

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男爵夫婦の反応に、カイルは動揺を見せず冷ややかな目線を彼らに向けた。そして、次に放たれた言葉が、さらにその場の空気を張り詰めさせた。

「間抜けな顔して、何をぼんやりしている? 頭だけじゃなく耳まで悪いのか?」

その言葉は、冷たい鉄のように鋭く無慈悲だった。カイルの顔に変化はなく、心の中に一切の情が感じられないかのように、ただ事務的に言葉を放っているかのようだった。

「卑しい平民の小僧が! ふざけた態度を取るな!」

男爵夫婦は、カイルの言葉に完全に切れ散らかした。夫は顔を真っ赤にし、怒りを抑えきれずにその場で震えていた。彼の手は、震えながらも拳を握りしめており、何かを壊してしまいそうなほどだった。

「その通りですわ! 自分の立場をきちんと理解しなさい!」

一方、妻は興奮した様子で声を荒げながら反論した。二人は、自分たちが正当であることを証明しようとしているかのようだった。その声は周囲に響き渡り、まさに混乱の象徴のように激しく響き渡った。

カイルは無表情で見下ろして見つめ返すのみだった。だが、ついにカイルはその場を支配する決断を下した。

「馬鹿な奴らめ。今はデート中で機嫌が良かったんだがな……気が変わった。貴様らはだ。もう逃さんぞ」

その言葉には、優しさは含まれていなかった。彼の目に映るのは、ただのターゲットでしかなく、慈悲の余地はないという冷徹な意思が伝わってきた。カイルはその瞬間、男爵夫婦に裁きを下す決意を固めた。

「……はぁ? 平民の小僧が処刑とは笑わせる! 自分が誰に口をきいているのか、分かっているのか?」

「ああ、分かっているさ。貴様らがだってことがな」

カイルは完全に喧嘩モードに突入していた。彼は堂々とした物言いで落ち着いているが、男爵夫婦は、膨れ上がる怒りをこらえながら、拳を強く握りしめていた。自分に対して反抗するどころか毒づく平民の若造、その事実に驚きと憤りが交じった表情をしていた。

私は、そんな両者を見て、心の中で止めるべきだと思った瞬間には体が勝手に動いてしまった。気がつけば、私は二人の間に割って入っていた。

「お願いです、落ち着いてください!」

「なんだ、小娘! 今さら謝ったところで許されると思っているのか……ん?」

私が必死に声を出した。その時、背の低い太った男爵が怒気をこめた声で私を睨みつけた。だけど、男爵の言葉が急に止まり、次に彼の目が私の顔をじっと見つめ始めた。その視線に違和感を感じ、私は思わず一歩後ろに下がりそうになった。男爵は一瞬の沈黙を破り、にやりと不適に笑って言い放った。

「お前、平民にしては、かなりの美人だな。貴族の令嬢でも、こんなに美しいのは滅多にいないぞ」

「え?」

私は驚き、思わず声をあげた。すると、男爵は冷笑を浮かべながら、軽蔑のまなざしを私に向けて言った。

「俺のになれば、この生意気な小僧の言ったことは、許してやってもいいぞ?」

その言葉に、公爵令嬢の私は大きな衝撃を感じ、胸の中で心臓が激しく跳ねるのを感じた。
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