妹の婚約者が子供の時に好きだった人で誘惑すると、彼は妹に婚約破棄を告げた

ぱんだ

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第2話

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「ここで暮らしてるんだね」
「はい」
「けっこう散らかってる。掃除してるの?」
「時々してます」
「シンプルだけどいい部屋だね」
「そうですかね、家と違って使用人もいないので飾り気のない部屋にしたんですよ」

心がくすぐられたヴィオラは眼の届くまで部屋中をキョロキョロ見回しながら部屋の匂いをかいだ。

多少片付いていない事を指摘していたずらっぽく思わせぶりな視線で見るとハリーにとっては悪魔じみた誘惑で気持ちが揺れる。

メイドもいない一人暮らしをしているハリーのような学生はそれなりに多く掃除も面倒なので控えめな部屋に決めたと話す。

「お腹減らない?」
「そうだね」
「これ一緒に食べよ」

前触れなくヴィオラがお腹が減らないと言うとハリーも同意するように頷く。ヴィオラの手には大きな風呂敷に包まれた弁当を持っていて給仕係に用意してもらっていた。

今日は学園は休みで一緒にお昼を食べようとハリーの家に訪れたのです。食事は舌も喉もとろける美味しさで空腹の胃に染み渡り彼の顔は満足そうでヴィオラも晴れやかな笑顔になり心に充実感がみなぎる。

「お姉さんとご飯が食べれて嬉しいな」
「え……?」

甘い顔立ちのハリーは異性を惹きつけるかわいらしさがあり、思いがけない言葉にすぐに返事ができないヴィオラは戸惑いながらも胸の中に喜びの花が咲く。

「どうしたの?」
「なんでもないよ。いきなりそんなこと言われて驚いた…それに」
「それに?」
「そのお姉さんていう呼び方もまだ慣れなくて照れくさい感じがして」
「でも間もなく結婚して身内になるからね。今から慣れとかないと」
「うん」

無邪気な顔で質問をしてくるハリーにヴィオラは気恥ずかしい思いになり少しばかりはしゃいだ声を出す。お姉さんという呼ばれ方も少しはにかんだような表情を見せながら答える。

彼は息がかかりそうな距離に近づいてきて、あどけない笑顔でそのうち息を吸うように身について来ると返されるとつい口元がほころぶ。

「ちょっと、え?なに?」
「こうすると落ち着くよ」

突然肩に手を置かれてそのまま彼の胸に引き寄せられ頬が心臓の上につく。かなり動揺するヴィオラだがハリーにやましい気持ちは全くない。

学園ではスポーツ系のクラブ活動をしていて妙な触れ合いがあり試合前にこのように仲間内で抱き合って心臓の音を聞くと気持ちが鎮静するのだ。

最初は激しい鼓動を打っていた彼女のハートは徐々に緩やかになる。心の中心から体全体に広がってほのぼのとした表情になり安らぎに浸かっていた。
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