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第14話

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「どういう理由で私が殿下の私的な用事に同行するのでしょうか?」
「そ、そんな堅苦しいことを言うなよ。ちょっと気分転換に誘っただけじゃないか……怖い目で睨むのはやめろ。綺麗な顔が台無しだぞ?」
「私は予定がありますから失礼いたします」

輝きに満ちた端麗な顔は親のかたきのように睨みつけながら、愚かな男を調教するように妥協しない口調で責めた。

アルフィは動揺する気配を見せながらも全くへこたれない。それどころか下品な微笑みを浮かべからかうような調子で言う。

しかしオリビアも理性を超えて怒りが沸点を突破する。再び椅子から立ち上がり、足早にこの場を離れようとドアに近づく。

「!?……殿下おやめください!」
「嫌だ!」

退出しようと席を立ち出口に向かっていたら、後ろから全力でアルフィがしがみついてきた。オリビアは腰のあたりが痛いほどだった。

いきなり飛びつかれて彼の欲望むき出しの目を見れば、彼女はこの状況が普通に怖かった。部屋の外には付き人がいますが部屋の中では二人きり。彼女はこの獣を大人しくさせようと冷静に話し始める。

「殿下まずは離れてくださいませ」
「そんなに嫌がらなくてもいいだろう?僕達はついこの間まで婚約までした恋人だったんだから」
「いい加減になさらないと、殿下に襲われそうになりましたと恐ろしい悲鳴を上げますよ?」

後ろから抱きついてくるような頭のおかしい人には、ほとほと困る。なにしろ常識が通用しない。自分の感情をコントロールできないので他人の迷惑を考えない。

オリビアはその場から全力で逃げたいが、背中に顔を押しつけて、ぎゅっとしがみついている。この行儀作法を知らない男は何なのでしょうか?あり得ません。

彼女が冷ややかな目で見ながら、つき放すような言い方をしてもピッタリとくっついて離れない。彼は簡単には取れない汚れのように彼女の背中にこびりつく。

「ごめん……」
「ここまで手厳しく言わないと殿下の幼稚な頭はご理解いただけなかったのですね」
「ひょっとしてまだ妹のエリーと浮気したことを怒っているのか?」
「当然です!おふざけが過ぎる殿下には、顔のかたちが変わるほどの強烈な平手打ちを見舞う必要がありそうですね?」
「僕が悪かった!許してくれ!」
「お返事は?」
「はひぃ!」

ここまで追いつめて辛うじて離れてくれた。心が壊れてるアルフィは妹のことを言い出す始末。

これほどまで品性が下劣だとどうしようもない。こちら側も奇人変人になりきって、精神障害者のように怒り狂いビンタでも食らわせるしか手段はありません。

彼女の雰囲気に気後れして、的はずれな声を出すと同時に敬礼のような動作をした。彼は鉄の棒でも入れてるのかと思うほど背筋をピンと伸ばす。
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