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第15話 親子鑑定する必要は絶対ない!

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「お兄ちゃんどういうことなの?」
「こいつはとんでもない男だったよ。ソフィアを裏切ってをしてたなんて……」

ソフィアも知らなかったようで疑問に思い直ぐ兄に聞いた。ダニエルは妹が間近に迫り心のうちで嬉しく思いながら、眉間にしわを寄せ渋い表情をしてジャックの本性を語った。

妻には子供の顔が自分と似てないと言って、過去に不倫をしていただろうと托卵を疑い離婚と慰謝料を要求した。それなのに当の本人の夫は人に言えない秘密があり、許されざる所業をしていたと兄は言ったのです。

「この人は私の知らないところで何をしてたの?教えて!」
「裏付ける証拠を集めるのに苦労したな」

お兄さん僕の隠し事を言わないでください!取り乱した感情を思わせる様子で、ジャックは余裕を無くしてお願いする顔をしている。その姿を見ればソフィアは夫が何をしてたのか?兄の顔を覗き込んで鋭い目で追及した。

表沙汰にすることができない事をジャックはしていた。警戒心が強くて後を追いかけるのに神経がすり減ったともらす。本当は特に苦労はしていない。ダニエルほどの並外れた魔法使いなら、精霊に頼んで尾行をしてもらえばいい。

実際ダニエルは精霊にそのように頼んだので、取り立てて自分が労力を費やすことはなかった。証拠を集めるのに苦労したと少し格好をつけて誇らしげに言った理由は、妹に恩を着せるのも悪くないと思ってのことだった。

「僕が悪かった!」
「あなた急に何?」
「子供と顔が似てないからって検査をしたいなんて言って反省してる……」

ジャックは取り返しがつかない絶体絶命の大ピンチに陥る。子供との鑑定をしたいと言ったばかりに、今まで隠していた自分の秘密がバレる恐怖で、後悔で胸がいっぱいになりに立たされてしまった。

ジャックは追いつめられて逃げ場を失って、こうなったら後先考えず謝罪するしかないと思って行動を開始した。いきなり土下座をして許してくれと叫んだ。

「今さら謝るの?」
「もう二度と親子鑑定してくれなんて言わないから許してくれ!」
「さっきまで鑑定しないなら離婚と慰謝料だって怒ってたくせに都合がよすぎます」

許してくれなんて虫がいい話だとは自分でも思っているが、ごめんなさい!夫はそういうしかないのです。きっかけは下の子と自分が似てないな?と少し思っただけだったのに、友人と酒を飲んで子供の写真を見せた時だった。

「よく考えたら僕の妻が不倫なんてするわけないんだ。だから最初から調べる必要はなかった。むしろ絶対に親子の血液鑑定をする必要はない!!むしろ調べてくれと言う事が妻への裏切り行為で、そんなことをいう男は人間性のかけらもないだと僕は思う」
「そんな事言ってもお兄ちゃんに、あなたの秘密を全て話してもらいますからね」

お前と似てないけど実はお前の子供じゃないんじゃないか?と冗談で、からかい半分で言われた言葉に感化されて、何度も過ちを繰り返して妻にひどい台詞を吐いた事が情けないし恥かしい。どうして妻を信頼してあげられなかったのか?

「それに例え子供が夫である僕の子供じゃなくても全然問題ない。愛して結婚した妻が産んだのだから、妻の細胞は間違いなく子供に入ってるんだからね。妻のことを本当に愛しているなら他人の子供でも僕は喜んで自分の子供として育てられるよ!」

強張った青白い顔でうっすら涙を流し、自分の意見を不思議に明るく元気のいい声で言い終わったジャックは、顔を伏せたまま身体は小さく丸まって精神は小さくまとまっていた。
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