王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる？衝撃の真実がわかった。

第8話

「美肌効果があると言われてるのよ」
「はやく温泉入りたい！」
「私は新鮮な海の幸が楽しみ！」

次の話し合いまでヘンリーとは一定の距離を置くことにした。セシリアとシャロンは肉体的にも精神的にも疲れ切った状態にあった。

なのでセシリアの家が所有している海辺の別荘でのんびりすることにした。この場所は体を癒す温泉が楽しめるので、移動の馬車の中で二人には純粋な喜びの表情が輝いて期待が膨らむ一方だった。

だが、あの男が別荘に突然姿を現わす。セシリアとシャロンの家を訪れて、どこに行ったのか？と詳しく話を聞いたりして二人の行方を追って乗り込んできたのだ。

セシリアとシャロンの家族は当然教えませんでした。ところがヘンリーは屋敷の使用人などを買収し、情報を掴んだのです。二人の行き先を知った時には何とも言えない達成感が顔に満ち溢れていた。

「キャーっ！」

最初に見た時には恐怖で悲鳴を撒き散らした。二人が部屋でくつろいでいると、ヘンリーが窓ガラス越しに微笑んで手を振り続けていたから当然の反応である。

絹を裂くような可愛らしい乙女のキャー！という絶叫。耳をつんざく叫びは、別荘を管理している大勢の使用人が部屋に到着するまで途切れることはなかった。

「どうされましたか！」
「この騒ぎはいったい何事ですか！」
「お嬢様方大丈夫ですか！」

仕える使用人たちはノックもなく部屋に雪崩れ込んで慌ただしい口調で尋ねた。公爵令嬢と伯爵令嬢の良家のお嬢様に何かあれば大変だ。

悲痛な叫び声に容易ならぬ一大事が起こったに違いないと思うのは自然なこと。現場へ駆けつけた一同は、部屋の中をぐるりと見渡すがおかしいところはなさそう。

あれ？部屋には何も変わったところはありませんけど？使用人の男女が十人余り集まって、問題の糸口が見つからないという表情で首をかしげ、こう思った。

にも関わらず、お嬢様方は口を開けたまま人形みたいに固まって動かない。そして怯えで瞳が揺れている。その時、背中に視線を感じた女性がいて振り返ると男が窓ガラスに顔を押しつけているのに気がつく。

「ヒィーっ！」
「うわぁーっ！」

まず女性の使用人が鳥の鳴くような短い叫び声を上げると、次々に女性の見ている方向に視線を向けた。厨房で働く男性の料理人が野太く荒っぽい声を張り上げた。

誰もが戸惑いの表情を連続して浮かべて、まことに驚くほかはありません。一目では何者かわからない怪しい変な男が家の中を眺めているのです。

「誰かあいつを捕まえろ！」

使用人の誰かがそう叫ぶと、全員が鬼気迫る表情で一斉に男を逃がすまいとして飛び掛かった。じたばた暴れる男に何人もの使用人が乗っかり、地面に押さえつけると正体不明の男は抵抗する気力を失った。