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第一幕 江戸にイこう!
第十話 液体と体液
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ミツは騒動の内容を事細かく爺やに伝えれば、それを耳にした家来たちが見る見るうちに殺気立ったかと思えば、俺の身体に「よくも姫様を汚したな!」等と怒号を上げながら次々と足蹴りをしていったのだ。当然手足は縛られているため、庇うこともできず、痛みがダイレクト。顔面こそ蹴られなかったが、サッカーボールのように転がされてしまったので、全身は砂埃まみれ。
「あなたたち、おやめなさい!」
「おお、おいたわしや千代姫様。もう安心ですぞ。さあ、こちらへ」
「爺や! みんなを止めて 私はなにも酷いことされていないわ!」
「いいや。あの小僧はとんでもない罪人ですぞ」
なんとしてでも俺を助けようとする千代姫の言葉は爺やにも家来たちにも交わされ、誰ひとり聞く者はいなかった。今も「違うのに」と涙をためて立ち尽くす姿を見て、なんだか可哀想に感じてしまう。
今度しっかり自分の意見を話せば分かってくれますよ。……って、俺はなんてことを言ってしまったんだ。彼女がこうして正直に生きていくと決めた矢先に、こんなことがあってはたまったもんじゃない。もしかして今回が初めてではなく、過去に何回もこんなことがあったのでは? ボコボコにされている立場なのに千代姫の心配ばかりしてしまう。
よっしゃ、ここは俺がビシッと決めてやる!
「あのー、千代姫の意見を聞いてもらってもよろしいでしょうか? 何か言いたげですよ?」
「どの口がほざく!!」
「ヒェッ……! しゅみましぇん……っ」
勇気をもって意見をしたが、爺やの迫力のある喝で見事撃沈。ごめん、千代姫姫。俺はあまりにもチキンすぎた……。
「あああああーっ!?」
がっくりとしている横で、突如ミツの悲鳴が夜空に残響音が広がった。びっくりして、この場にいる全員がミツを見ればコンビニ袋を持って腰を抜かしていた。
「どうしたのじゃミツ!」
「大変です、二郎様……。この巾着の中に白い液体が……っ! それも粘り気のある……っ」
泣きそうな声でそう話すミツ。
現代っ子である俺は瞬時にそれがバニラアイスと分かった。だが! アイス、すなわち評価がない江戸時代。それが食べ物であると一目で理解するのは難しく、この状況での白い液体は、またも大きな誤解を生む種となる!
まずいまずい! 打ち首ルート待ったなしだぞ!?違うんですよ! すぐに弁解を述べたかったが、
「白の、液体だと……?」
「液体、液体……」
「たい、えき……」
連想ゲームみたく、家来たちは先に答えに辿りついてしまった。体液と聞いた爺やは真っ青になると「あばばば!」とバグりながら泡をふいて気絶。終わりだ。誤解の収集を追いかけるのは無理だ。どうすることもできずに固まっていれば、すぐさまミツがTシャツの襟をを掴んでくる。
「貴様ぁ! これで姫にナニしようとした!?」
「な、なにもしてねーよ! それに誤解だ! あれは食べ物だぞ!」
「食べ物だと?」
「そうだ。江戸にはまだ売ってない美味しい食べ物だ。ほうら、お前も舐めてみろ。頬がとろけるくらいうまいゾ~」
「ヒィッ!」
しまった。アイスを美味しそうに紹介するつもりが変態チックに伝えてしまった。
「誰がウジ虫のブツを咥えねばならんのだ!」
なんかこいつもズレてんな。
「もう死ね!」
「へ?」
軽く瞬きをした次にはもう、ミツの鉄拳が顔の前に来ていた。こりゃ死ぬわと心で思ったのと、千代姫の裂けるような叫びを最後に深い眠りへ落ちていく—―。
「あなたたち、おやめなさい!」
「おお、おいたわしや千代姫様。もう安心ですぞ。さあ、こちらへ」
「爺や! みんなを止めて 私はなにも酷いことされていないわ!」
「いいや。あの小僧はとんでもない罪人ですぞ」
なんとしてでも俺を助けようとする千代姫の言葉は爺やにも家来たちにも交わされ、誰ひとり聞く者はいなかった。今も「違うのに」と涙をためて立ち尽くす姿を見て、なんだか可哀想に感じてしまう。
今度しっかり自分の意見を話せば分かってくれますよ。……って、俺はなんてことを言ってしまったんだ。彼女がこうして正直に生きていくと決めた矢先に、こんなことがあってはたまったもんじゃない。もしかして今回が初めてではなく、過去に何回もこんなことがあったのでは? ボコボコにされている立場なのに千代姫の心配ばかりしてしまう。
よっしゃ、ここは俺がビシッと決めてやる!
「あのー、千代姫の意見を聞いてもらってもよろしいでしょうか? 何か言いたげですよ?」
「どの口がほざく!!」
「ヒェッ……! しゅみましぇん……っ」
勇気をもって意見をしたが、爺やの迫力のある喝で見事撃沈。ごめん、千代姫姫。俺はあまりにもチキンすぎた……。
「あああああーっ!?」
がっくりとしている横で、突如ミツの悲鳴が夜空に残響音が広がった。びっくりして、この場にいる全員がミツを見ればコンビニ袋を持って腰を抜かしていた。
「どうしたのじゃミツ!」
「大変です、二郎様……。この巾着の中に白い液体が……っ! それも粘り気のある……っ」
泣きそうな声でそう話すミツ。
現代っ子である俺は瞬時にそれがバニラアイスと分かった。だが! アイス、すなわち評価がない江戸時代。それが食べ物であると一目で理解するのは難しく、この状況での白い液体は、またも大きな誤解を生む種となる!
まずいまずい! 打ち首ルート待ったなしだぞ!?違うんですよ! すぐに弁解を述べたかったが、
「白の、液体だと……?」
「液体、液体……」
「たい、えき……」
連想ゲームみたく、家来たちは先に答えに辿りついてしまった。体液と聞いた爺やは真っ青になると「あばばば!」とバグりながら泡をふいて気絶。終わりだ。誤解の収集を追いかけるのは無理だ。どうすることもできずに固まっていれば、すぐさまミツがTシャツの襟をを掴んでくる。
「貴様ぁ! これで姫にナニしようとした!?」
「な、なにもしてねーよ! それに誤解だ! あれは食べ物だぞ!」
「食べ物だと?」
「そうだ。江戸にはまだ売ってない美味しい食べ物だ。ほうら、お前も舐めてみろ。頬がとろけるくらいうまいゾ~」
「ヒィッ!」
しまった。アイスを美味しそうに紹介するつもりが変態チックに伝えてしまった。
「誰がウジ虫のブツを咥えねばならんのだ!」
なんかこいつもズレてんな。
「もう死ね!」
「へ?」
軽く瞬きをした次にはもう、ミツの鉄拳が顔の前に来ていた。こりゃ死ぬわと心で思ったのと、千代姫の裂けるような叫びを最後に深い眠りへ落ちていく—―。
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