エロ絵師、江戸に飛ばされて春画描くってよ。

マンボウ

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第一幕 江戸にイこう!

第九話 膨らむ誤解

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 Oh……。

 あの物しか連想せざるを得ない卑猥単語のオンパレード。凍りつく俺と忍者娘のミツ。千代姫の力説を耳にすればするほど、わなわなと肩が震えていき、こちらも身震いが止まらない。千代姫、もういいです! と、目で必死に訴えかけるもそれらは届くはずもない。

「本当に素晴らしかったのよ。こう手の中で上にそそり立ってるだけじゃなくって、触り心地もカッチカチに硬いの!」

 こーんなにすごいのよ! トトロに出会ったサツキとメイのごとく大はしゃぎで語りまくる千代姫は、こんなときでも胸がパチパチとはじけるような可愛さだった。こんなに愛おしいと怒る気にもなれない。ここまでくれば可愛いは正義なのだ。

「あのー、千代姫が言っている物は俺が持っているスマホ……えっと、日用品のことなんですよ? 誤解しないでくださいね?」

 ずっと震えているミツにおずおずと話しかけても返事どころか顔を合わすこともあしない。聞こえていないのか再度伝えようとしたところ、上の立場である千代姫が全て話終えるのを待っているのだと感じたので、すぐさま話しかけるのをやめた。

 それから五分ほど千代姫の長い長い語りはようやく終わりを迎え、

「ね? 私も見たことがない素晴らしいお品を持つくらいだもの。危険なお方じゃないでしょう?」

 言いたいことを全て言えたといった感じでスッキリと爽やかな笑顔でそういえば、間を置かずにミツは暗く「そうですね」とだけ。
 ああ、こりゃ納得してねぇ。嫌な未来が見えるぞ……。

 口元を引き気味にしていれば、予感は的中。いきなりミツは目尻を最高潮に吊り上がり。そんな怒りの色を見せては後頭部を鷲掴みにすれば、湿った地面に押し付ける。そこから流れるように股の間から縄を引っ張りだしては、両手両足を光の速さで縛られてしまった。

 早すぎて分からなかった。俺は一体何をされたんだ!? 突っ込む時間も余裕は一ミリもなかった。あるのは股に長時間隠し持っていたからか、人肌っぽい微かな暖かさと反応した邪な気持ちのみ。

「ひどいっ、なにをするの! 縄を解きなさい!」

「いいえ。千代姫の命令でもそれだけはできません。こいつは完全に黒です。神通城に盗みと姫に危害を加える曲者だと私は見なしました。まだ何にも知らない千代姫を一体どこまで汚した!? 吐けウジ虫!!」

 髪を掴まれて、耳の中に罵声が次々と入り込む。

 いてて、キーンと頭痛がしそうだ。たしかに向こう側からしたら、俺は不審人物に見えてもおかしくはない。それと携帯のこともあり、これは誤解をされても文句は言えない。――ので、こっちも負けずに強気で言い返すことにした。

「あのなあ、女の子に俺がそんなことするわけないだろ! ただ迷いこんだだけなんだ! やましい感情は一切ないんだって!」

「ふんっ、口ではなんとでも言える。そんな証拠どこにある? 顔も声も身に纏う衣も存在も全部が疑わしい。どうせ江戸の外でも女を狙う悪人で通っていたのであろう?」

「んなわけあるか! ハッキリ言うけど俺はな、未来から江戸時代に飛ばされた童貞なんだよ! 頭おかしいと思われてるかもしれないが、これだけは本当なんだ! 信じてくれ!」

「ど、どど、童貞っ!? ……じゃなく、よくもまあアホくさい嘘を並べられる。こんな外道は見たことがない。もう島流しですら生ぬるい。覚悟しろ、殿様に突き出してやる」

「やめろ! 逆に俺は被害者だー!!」

 ギャーギャーと喚く俺に千代姫も助け船を出そうとする。

「そうよミツ! この方の物は立派なのよ!」

 が、無意味。むしろ油に火を注ぐ。

「千代姫、今は黙っててくだされ……っ!」

「む!? 姫になんという口の利き方っ、死ね!」

「待て待てタンマタンマ!」

「た、たた……玉だと!? 貴様……っ、私まで辱めるか!?」

「もうやだこの忍者娘!」

 カオスな空間と化するとこに、縁側の奥からドタドタとこちらに大慌てで向かう数人の足音がした。言い争いはここで一旦ストップ。

 揃って三人が目線を暗闇にあてれば、袴姿の男たちと初老にさしかかった白い髭を生やした男。ざっくり例えるなら家来と爺や的な。

「千代姫様、ミツ! 一体なにごとじゃあ!」

 白い髭をなびかせた男が息を切らして問う。

「あっ、爺やだわ」

 本当に爺やだった。
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