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千錦寮の秘密?
事件発生!? 緊急寮生大会(2)
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ややあって、もう一度放送が入った。
「緊急寮生大会を行います、千錦寮の皆さんは、寮食堂へお集まり下さい」
緊張気味の、しかし低く、よく通る声で、二回、放送が入った。
「早希先輩、寮生大会って……」
志信が尋ねると、早希がパジャマから着替えようと、各ベッドに作り付けられている小さなクローゼットに手をかけていた。
「うん、これから、皆で食堂に行こう」
そう言いって手早く着替え、志信と和美を伴って部屋を出た。
他の部屋からも、ぞろぞろと食堂へ向かっていく者達がいて、階段はざわついていた。
その中には、亜里沙や麻衣もいた。
「志信ちゃん、和美ちゃん」
亜里沙に声をかけられて、志信と和美は、亜里沙や麻衣と連れ立って、共通棟にある食堂へ向かった。はしの方で、数人の男子寮生が遅い夕食をとっていたが、晶子達が事情を説明すると、そそくさと食事を済ませて出て行った。
バイトから戻って来たらしい佳織も、そのまま食堂に現れ、上級生達の指示の元、テーブルと椅子を並べ替えた。アコーディオンカーテンの前にテーブルがひとつ置かれ、晶子の他三名、監査委員以外の寮生は、椅子を並べ、整然と着席した。
ざわつく場内を前に、晶子が立ち上がり、言った。
「今日は、急に呼び立ててしまって申し訳なかった、では、これから、千錦寮、緊急寮生大会を開催します、一同起立!」
号令と共に、皆が立ち上がり、
「礼!」
の掛け声で一礼し、
「着席!」
で、着席した。
場の空気は重く、先輩達は皆、深刻そうな表情を作っていた。
そんな上級生を見て、志信達一年生も、不安になってくる。
これから何が始まるのか、何かとんでもない事が起きているのか、志信は、ただ成り行きを見守るしかなかった。
「今回集まったのは、不審者侵入の顛末を説明する事と、施錠を怠った人に謝罪をしてもらう為です」
晶子が言うと、並んでいたもう一人が立ち上がった。
「顛末を説明します」
ショートカットで眼鏡をかけた、晶子同様、監査委員と思われる上級生が説明を引き継いだ。
内容については、さっき部屋で受けた説明と大差無かった。本来施錠されるべき鍵が閉まっていなかったという事、そこから不審者が立ち入り、2号室で中にいた寮生と鉢合わせし、逃げたところを追ったものの、結局は逃げられてしまったという事。
「施錠し忘れた人間がわかりました、二年、亀井里香さん」
上級生達が一斉に注目したので、志信達にもそれが誰なのかすぐにわかった。
綿入れ半纏を着て、眼鏡をかけ、髪を三つ編みにした亀井里香がのっそりと立ち上がった。
「はい……」
顔をひきつらせ、怯えているように志信には見えた。
「あなたは今日何時頃帰ってきましたか?」
言葉こそ丁寧なものの、晶子の言葉には威圧感があった。
「夜の……9時、頃、です」
里香は、びくつきながら、自分の指を組んだりほどいたりしながら、下を向いている。
「その時、鍵は閉めましたか?」
今度は、別の監査委員が咎めるように尋ねた。
「……覚えて、ません」
一方的に責められるようなもの言いに耐えかねて、里香が涙を浮かべる。
志信は、いくらなんでもこれはやり過ぎたと感じた。
挙手して、発言を求めようと腕をあげようとした時、和美が、志信の腕を掴んで挙手を阻んだ。
「和美ちゃ……」
小声で志信が言いかけたその時、食堂の扉が大きな音を立てて開き、桃色の特攻服姿の女性が入ってきた。
「なんなんっスカ、ショーコ先輩、何やってるンッすか、表で聞いてましたけど、これじゃあまるでいじめじゃないですかぁ」
特攻服に長いワンレンの髪。二十世紀のヤンキー漫画からそのまま出てきたような出で立ちの女性は、腰に手をあてつつ、上目遣いで睨みながら晶子の元へにじり寄った。
「真帆、あんた遅れてきてその態度は何」
晶子の方も真帆と呼ばれた女性に向かい合う。
長身の女性二人、しかもどちらも迫力系美女が睨み合う様は壮観な眺めだった。
「こんなン、聞いてませんもん、今日の今日で呼ばれて、来てみれば、皆して里香ちゃんいじめてるみたいじゃあないですかッ」
「すわんなッ! 今は、寮生大会やってンだよッ!」
つられて晶子の言葉遣いも荒っぽくなってくる。
「何ッすか、やるんですかぁ? 先代総長だって、ハンパな事やってるようなら、こっちも容赦しませんよ?」
「先代総長って、もしかして……」
志信が小声で和美にささやいた。
「志信ちゃん、あれ……」
和美が、アコーディオンカーテンを指差した。
見ると、わずかに内側から力がかかっているのか、揺れているのがわかる。
「え? なんで」
志信が言いかけた、その時。
「ちょーーーーーーっと待ったーーーーーーー!!!!」
恐らくはアコーディオンカーテンの内側から、声がして、さーーーーーーっとカーテンが開いた。
カーテンが開くと、そこには、プラカードを持ち、パンダの着ぐるみを着た人が立っていた。
和美が指差した方を見た志信は絶句した。
プラカードには『ドッキリ! ごめんなさい』と、書かれていた。
「緊急寮生大会を行います、千錦寮の皆さんは、寮食堂へお集まり下さい」
緊張気味の、しかし低く、よく通る声で、二回、放送が入った。
「早希先輩、寮生大会って……」
志信が尋ねると、早希がパジャマから着替えようと、各ベッドに作り付けられている小さなクローゼットに手をかけていた。
「うん、これから、皆で食堂に行こう」
そう言いって手早く着替え、志信と和美を伴って部屋を出た。
他の部屋からも、ぞろぞろと食堂へ向かっていく者達がいて、階段はざわついていた。
その中には、亜里沙や麻衣もいた。
「志信ちゃん、和美ちゃん」
亜里沙に声をかけられて、志信と和美は、亜里沙や麻衣と連れ立って、共通棟にある食堂へ向かった。はしの方で、数人の男子寮生が遅い夕食をとっていたが、晶子達が事情を説明すると、そそくさと食事を済ませて出て行った。
バイトから戻って来たらしい佳織も、そのまま食堂に現れ、上級生達の指示の元、テーブルと椅子を並べ替えた。アコーディオンカーテンの前にテーブルがひとつ置かれ、晶子の他三名、監査委員以外の寮生は、椅子を並べ、整然と着席した。
ざわつく場内を前に、晶子が立ち上がり、言った。
「今日は、急に呼び立ててしまって申し訳なかった、では、これから、千錦寮、緊急寮生大会を開催します、一同起立!」
号令と共に、皆が立ち上がり、
「礼!」
の掛け声で一礼し、
「着席!」
で、着席した。
場の空気は重く、先輩達は皆、深刻そうな表情を作っていた。
そんな上級生を見て、志信達一年生も、不安になってくる。
これから何が始まるのか、何かとんでもない事が起きているのか、志信は、ただ成り行きを見守るしかなかった。
「今回集まったのは、不審者侵入の顛末を説明する事と、施錠を怠った人に謝罪をしてもらう為です」
晶子が言うと、並んでいたもう一人が立ち上がった。
「顛末を説明します」
ショートカットで眼鏡をかけた、晶子同様、監査委員と思われる上級生が説明を引き継いだ。
内容については、さっき部屋で受けた説明と大差無かった。本来施錠されるべき鍵が閉まっていなかったという事、そこから不審者が立ち入り、2号室で中にいた寮生と鉢合わせし、逃げたところを追ったものの、結局は逃げられてしまったという事。
「施錠し忘れた人間がわかりました、二年、亀井里香さん」
上級生達が一斉に注目したので、志信達にもそれが誰なのかすぐにわかった。
綿入れ半纏を着て、眼鏡をかけ、髪を三つ編みにした亀井里香がのっそりと立ち上がった。
「はい……」
顔をひきつらせ、怯えているように志信には見えた。
「あなたは今日何時頃帰ってきましたか?」
言葉こそ丁寧なものの、晶子の言葉には威圧感があった。
「夜の……9時、頃、です」
里香は、びくつきながら、自分の指を組んだりほどいたりしながら、下を向いている。
「その時、鍵は閉めましたか?」
今度は、別の監査委員が咎めるように尋ねた。
「……覚えて、ません」
一方的に責められるようなもの言いに耐えかねて、里香が涙を浮かべる。
志信は、いくらなんでもこれはやり過ぎたと感じた。
挙手して、発言を求めようと腕をあげようとした時、和美が、志信の腕を掴んで挙手を阻んだ。
「和美ちゃ……」
小声で志信が言いかけたその時、食堂の扉が大きな音を立てて開き、桃色の特攻服姿の女性が入ってきた。
「なんなんっスカ、ショーコ先輩、何やってるンッすか、表で聞いてましたけど、これじゃあまるでいじめじゃないですかぁ」
特攻服に長いワンレンの髪。二十世紀のヤンキー漫画からそのまま出てきたような出で立ちの女性は、腰に手をあてつつ、上目遣いで睨みながら晶子の元へにじり寄った。
「真帆、あんた遅れてきてその態度は何」
晶子の方も真帆と呼ばれた女性に向かい合う。
長身の女性二人、しかもどちらも迫力系美女が睨み合う様は壮観な眺めだった。
「こんなン、聞いてませんもん、今日の今日で呼ばれて、来てみれば、皆して里香ちゃんいじめてるみたいじゃあないですかッ」
「すわんなッ! 今は、寮生大会やってンだよッ!」
つられて晶子の言葉遣いも荒っぽくなってくる。
「何ッすか、やるんですかぁ? 先代総長だって、ハンパな事やってるようなら、こっちも容赦しませんよ?」
「先代総長って、もしかして……」
志信が小声で和美にささやいた。
「志信ちゃん、あれ……」
和美が、アコーディオンカーテンを指差した。
見ると、わずかに内側から力がかかっているのか、揺れているのがわかる。
「え? なんで」
志信が言いかけた、その時。
「ちょーーーーーーっと待ったーーーーーーー!!!!」
恐らくはアコーディオンカーテンの内側から、声がして、さーーーーーーっとカーテンが開いた。
カーテンが開くと、そこには、プラカードを持ち、パンダの着ぐるみを着た人が立っていた。
和美が指差した方を見た志信は絶句した。
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