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あとは明日!

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 真尋は途中になっている作業を気にして研究室へ戻っていった。やることが決まってしまえば、既に瀬尾への渡りはつけた事になるからだ。

 改めて、譲二、圭吾、登弥の三人は、瀬尾から操作方法についてレクチャーを受ける事になった。

 操作は簡単だった。『おしゃべり』の方は、ロボットにつけたカメラからの映像を見ながらインカムで答えるだけだったし、プロポの方は可動領域が少ないのでせいぜい前後ができる程度。

「何気にこれ、二人で大丈夫そうですね」

 プロポをいじっていた瀬尾が顔をあげると、瀬尾が答えた。

「しかし三日間だし、一人は外、一人は内だとトラブルの時困るからね、いや、本当に三人きっちり、助かった、真尋に感謝しないと」

「真尋さん自身は自分のやりたいことをやってるだけって気がしますけどねー」

 登弥がインカムをつけて、譲二が外でステノに話しかけている。

「おーすげー! ちゃんと会話できてるー」

 扉の内側のスピーカーから少し興奮気味の譲二の声が洩れ聞こえている。インカムをつけている登弥の方はおもしろがって片言風にしゃべっているが、ステノのスピーカーから出る声はエフェクトがかかっていて、特にテンションを変えなくてもそれらしく聞こえていた。

「なんか、人間がしゃべってるはずなのに、なんでかロボットの真似してしゃべっちゃうんですよねー」

 苦笑しながら圭吾が言うと、

「こうであって欲しいって気持ちが働いてるのかもしれないなー」

 瀬尾が続けた。

 当日の役割分担としては、ステノの横に一人ついてフォローをし、残り二人は扉の内側で、片方がインカムを着けて、手の空いている一人はフォローという形で進める事にした。

 一通りの説明が終わると、明日以降は、瀬尾も真尋と共に研究室に張り付く事になる為、企画展示の運営に三人は紹介された。

「ゴーゴンプロジェクトさんはスタッフ三人ね、了解しました」

 総合プロデューサーだという女性スタッフは、企画の規模の割に人数が多い事を特に不審には思われなかったようで、瀬尾と三人はほっとして少年少女未来館を後にした。

 真尋の車を瀬尾が運転して、三人は一刻寮まで送ってもらった。

「じゃあ俺は研究室の方戻るから、明日、頼むよ」

 運転席から顔を出している瀬尾は、本当に申し訳そうな顔をしていたが、研究室へ戻って作業を続ける事が本当に楽しいようで、少し興奮気味に目が輝いていた。

「俺、どっちかっつーと真尋さんの方の手伝いしたいなあ」

 圭吾が言うと、

「あー、確かに、専門じゃないはずなのになー、真尋さん」

「あの人何でもできるじゃん、基本的に」

 譲二と登弥が続く。

 秋休み中の寮内は人もまばらで、玄関周辺もいつになく静な気がした。

「もしかして真尋さんしばらく研究室へ泊まり込むのかなー」

 三人揃って部屋のある西棟へ戻ってくると、譲二の部屋は明かりが消えている。

「朝飯、届けるか? 瀬尾さんもいんだろ、どうせ」

 登弥の提案に圭吾も同意した。

「どうせ明日は早いし、一旦研究室寄ってみるか、朝飯持って、余ったら昼に食べればいいんだし」

「あー、じゃあ米炊くわ」

 譲二の実家は農家の為、定期的に米が届くのだ。

「じゃあ俺海苔提供するわ」

「俺、フリカケしかないけど……あ、味噌汁提供するわ、レトルトのやつまとめ買いしたのがあるから」

 朝5時に起きて準備をする事にして、三人は一旦別れた。どぷせ風呂で会うだろうが、その時はまたその時だ。

 譲二は真尋との共有スペースに置いている炊飯器の釜を取り出して、米を研ぐため調理室へ行った。
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