おしゃべりロボットの秘密 ―中に人はおりません?―

皇海宮乃

文字の大きさ
26 / 63

幼子たちからの洗礼(1)

しおりを挟む
「マジか、あれって、開場待ちの列?」

 二日目ではあったが、休日という事で、三人は示し合わせて早く寮を出た。少なくとも金曜日より来場者が多いであろう事、そして、金曜日には居なかった子供たちが来る事を警戒して、早めに気持ちを作っておきたかったからだ。

 開場予定は10:00で、一時間前にも関わらず、入り口には列が出来ていた。

 驚いて圭吾が言うと、待機列をじっと見た登弥が言った。

「どうだろう、そこまで人気かあ? この企画展……」

 身も蓋も無いが、それほど宣伝をしているようにも見えない。第一三人は、そういう企画展示がある事すら知らなかった。大学構内でもポスターは見かけなかったし、市の図書館などについてもしかりだ。

「あー、わかった、あれ、プラネタリウムの待機列だ」

 並んでいる場所や、待っている者たちの様子を見て判断したのか、合点がいったように登弥が言った。

 三角市少年少女科学館のプラネタリウムは昨年設備を一新しており、近隣の他施設に比べて先進的なものが導入された事を売りにしていた。昼の情報番組で芸能人がレポートをしていた事を思い出したのだろう、登弥は納得したように悦に入っている。

「だいたいさあ、子供ならともかく、男女で来るか? しかも開場前に」

「ロボット好きなカップルだっているかもしれないだろ?」

 不服そうに圭吾が言うと、

「確かに、キラキラおしゃれ女子が朝一に並ぶか、といえば、ちょっと疑問かも……」

 自信なさそうに譲二がフォローした。

「だろー? だって、ロボットだぞ、ロボット、AIとか、それ系のテクノロジーって事であればまだしもロボット好き女子って」

 茶化すように言う登弥に圭吾が冷水を浴びせかけるかのような事を言った。

「でも、昨日クローズ間際にきた紅緒さんは、ロボット好き女子なんじゃないのか?」

「確かに……」

 譲二も圭吾に同意する。すると登弥はあきらかに表情を変えた。

「きっかけはそうかもしれないけど、……けど」

 急に登弥が自信が無さそうに語尾を弱める。

「話の内容からしてリケジョって感じだったもんなあ、ロボット好きなのかもなー」

「それどころかオタクかもしれないぞ、家にはガンプラの山が……」

 調子にのって圭吾と譲二が続ける。

「なんでリケジョでガンプラなんだよ、アニメオタクとは限らないだろ?」

 登弥が言うと、

「なんでそんなにアニオタを嫌がるんだ」

 圭吾が混ぜっ返す。

「誰も嫌だなんて言ってねーよ」

 登弥が言えば、

「いいや、今、ガンプラを否定するニュアンスが含まれていたね!」

 圭吾が断定する。

「誰もそんな事言ってない、てか、なんでそんなにガンプラに食いつくんだ、つっこむところそこか?」

「静岡県民はガンプラを大切にするんだよ!」

「適当な事言ってんじゃねーーーーッ」

 いよいよ圭吾と登弥の言い合いが不毛になってきたところで譲二が二人の間に割って入っった。

「はい、そこまでッ!」

 風の谷のナウシカのルパ様か、サンとエボシに割って入ったアシタカのごとくに、譲二が二人の間にいる。

「何のために早く来たんだ? コントの練習じゃないだろ?」

 譲二の言葉に登弥も圭吾も納得したように、三人は関係者用出入り口を目指したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...