ま×ま

空白メア

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第5話魔法の力量テスト

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「そしたら。お前らの力量測定だな。まぁ、学校でやってるのと同じだ。順番は忘れたから適当にするけど。」
奏斗はそう言うと立ち上がる。彼は手のひらを上にしてパーの形にする。すると次の瞬間彼の手の上には紙のペンが手に乗っていた。
「まぁ、実技を学校でやってるから分野ごとに何を出せばどう言った基準になるか分かってるよな。」
俺らはそれに頷くと立ち上がる。
「まずは複製魔法だ。」
複製魔法はコピー能力を問うものだ。用意されたお題をどれだけ精密に再現出来るかで判断される。今回のお題は奏斗が自分のポケットから出した筆記具だ。俺はボールペン、藍色は、メモ帳、天はマーカーペンだ。
 まず俺はボールペンを分解して中まで見る。ネジの構造、芯の種類、買った時に貼ってあるシールやその寂れ具合等々を確認した上で作る。作ること自体は俺には容易いが、集中力が必要だった。
「精度としては、天、律人、藍色の順か。お題がバラバラなのを考慮してもこうかな。」
と彼は先程自分で生み出した紙に何かを書いていた。いつの間にかバインダーも付いていた。
「次は製造魔法。」
製造魔法はゼロからイチを作る魔法だ。俺が前に作った剣もこの魔法によるものだ。ただ、すごい人だと理論上宇宙を作れちゃうらしいので審査には制限もあったりする。
「製造魔法は律人がズバ抜けていて次に天、藍色の順か。」
この分野の基準は大きさと、構造の複雑さだ。藍色はお土産屋によく売っている剣と盾のストラップ。天はマッチ箱とマッチ。そして俺はハムスターを作った。
「しかし、この歳で生物を作り出せるのはすごいな。ちなみにこいつは動物園行きだな。」
まず、ものを創造するにはかなりの魔力が必要だ。更に全体の面積が広いほど力は膨大にいる。生物を作るとなると、構造を知らないといけなかった。細胞が臓器が動くような構築が必要だからだ。しかし、俺にはできてしまう。
「そりゃ、得意魔法だからな。」
魔法の能力に関しては個人差がある。各々が一番秀でている魔法が得意魔法だ。ちなみに、特定の人しか使えない特異魔法というのも存在する。同音異義語なのでややこしい。
「なるほどな。お前も大変な得意魔法になったな。」
まぁ、得意魔法と言ったら自然を利用した魔法が多い。藍色と天もそうだ。製造魔法や複製魔法はそれらを補助するためにあるものでメインで使うものでは無い。だから、普通は天や藍色みたいに小さくて単純なものしか作れない。まぁ、魔力が多かったらまた別だろけどな。実際、評価としてはストラップサイズの人工物が並、マッチ等の構造を知ってないと作って活用できないものができただけですごいという感じだ。
生物は評価基準にないし、そんな事しなくても特別優秀的な評価にはなる。ただ、魔法の力測定は得意魔法をどれだけ伸ばしたかというのを見る場所でもあった。つまりは限界を知るために動物を作ったのだ。
「じゃぁ、次は自然利用の魔法な。」
自然利用の魔法は、自然界に存在してる物質を利用して何かをするというものだ。こちらも大きさや精度が評価対象だ。
俺はこの手のことが苦手だった。唯一まともにできたものは、風魔法だ。まぁ、と言っても台風以下の少し強めの風を吹かすぐらいしか出来ないけど。天は床板を樹木に変えて小さい森を作った。植物の成長促進、これが彼女の得意魔法だ。そういえば、ここの床はフローリングだったんだな。次に藍色は氷の小さなお城をつくりあげた。少し大きめのドール用のお城といった感じ。奏斗と一緒に中を覗くとしっかりと家の構造になっていた。空気中の水分子を凍らせる。それが、藍色の得意魔法だつた。
「これは、天と藍色が同じくらい。律がダメダメって感じか。そしたら、次は……」
その後、物質移動魔法、強化魔法の試験を行った。
「最後は特異魔法研究だが、天が一応治癒魔法使えるんだっけ?」
「うん。でも大したことないよ。それに練習もしてないし」
「了解。そしたら、成績はこんなものか。よし、そしたらトレーニングを組むから来週から本格的にやるぞ。」
「はい。」
俺らは声を揃えて奏斗に返事した。
「とりあえず。来週月曜日に三角公園に集まろう。動きやすい服で来いよ?あ、あとポンチョ忘れるなよ。」


先週末のあの言葉を真に受けて良かった。まさか、こんなに走らされると思ってなかった。
走ること約2時間半俺らはへばる。自分の運動不足を祟りたい。
「お前ら遅くね?多く見積っても50分あれば十分だろ?」
奏斗は息を切らして床に座る俺らを見下ろしながら言う。彼は今日は私服だった。コースは町内一周。うちの町は広くないが何せ、坂が多かった。しかも全部登りだ。
「うるせぇ。高等部は部活がないんだ。多少体力が衰えていてもおかしくないだろ」
ちなみに俺は中学ではサボれるという理由で地学研究部に入っていた。運動部に行った方が良かったと今初めて思った。サッカー部だった藍色とテニス部だった天は俺より息を切らすのが遅かった。ちゃんと運動していれば呼吸のペースとかわかったのかもな。
「うーん。まぁ、そういうことにしといてやる。でも、体力イコール魔力なことを忘れるなよ。明日はどうせ筋肉痛だろうから俺の家で勉強会だ。家覚えてるよな?」
同じ道を走ってきたと思えないくらいスラスラと奏斗は言葉を並べる。
「まぁな。」
奏斗の家は隣町にある。すこし行きにくい場所であるが場所は覚えている。
「じゃぁ、今日は解散。各自ストレッチをしておて…………」
ドンッ
奏斗の声がとても大きな音に消された。
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