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神様の家出。

雨下の一幕

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 今夜はあつい雲がひろがってお空はまっくろ、地面もくらい。
 湿度も高くて、いまにも天からつゆが落ちてきそう。
 でもそれはとても居心地がいい。
 まえの日にはひさしぶりに気持ちいいところに入ることができた。
 大好きな人との楽しいお散歩だった。
 なのにすぐに邪魔が入った。
 でもいっぱい跳ねて、からだをうごかせたので楽しかった。
 いまのおうちは窮屈でちょっと乾燥している。
 だけど大好きな人といっしょにいるのには少しばかり居心地が悪くてもしかたがない。

 きょう、あの人は朝からなんにんかと出掛けていった。
 分からないように付いて行ったのに、あの人にすぐに見つけられてしまった。おうちへ帰るように言われたけど、知らんぷりをしてここまで付いてきた。
 あの人たちは、突き出た地面に開いた穴の中に入っていってしまった。
 身体が大きくて穴のなかには入れなかった。
 ……ついて行けなくて悲しい。
 あの人にはおうちに帰るように言われたけど、はなれたくないからここにいる。
 あの人たちがこの穴に入ってから、すごく時間がたっている。
 しんぱい。
 ポツン、ポツンと身体に天からのつゆがあたる。
 空を見ると、ピカリと光りのすじが地面に向かってはしった。
 まぶしくて目を閉じると、ドカーンという音がひびいてビリビリと空気がふるえた。
 怖いのでギューッてからだを固くしてちぢこまる。

「おかしな動きを感じて来てみたが、これは少々まずい事態になっているようだ」

 とつぜんちかくでだれかの声がした。
 目を開けると目のまえにうっすらと光かる人が立っていた。

「おまえ、たしかあの者の旅の友だったな」

 目のまえの人が、声をかけてきた。

「ふむ、知性は高い、力も体力も申し分ないな。……おまえ、あの者を助けたくはないか?」

 あの人を助ける? この穴の中であの人は困っているのだろうか……。なら、助けたい。
 キロ、と鳴く。

「ならばお前にその力を与えてやろう。だがそれは本来のお前とは違う力だ。故に代償があるが、それでもあの者を助けたいか?」

 大好きなあの人を助けられるなら問題ない。
 キロ、と鳴いた。

「わかった。その覚悟や良し。あの者のこと頼んだぞ」

 光をはなっている人は、近づいてきてその手を頭の上にのせてきた。
 急にねむくなってきて、目が閉じてしまう。
 暗い暗い闇のかなにあの人のちょっと困ったようすの笑顔が浮かんだ。
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