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高校一年生、桜川高等学校合唱部
25話「雪葉先輩」
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コンクールが、終わる。
関東大会に、向ける練習が、明日始まる。
寮に帰ると、歌乃と葵が、コソコソと何か話してる。
「歌乃、葵。なにしてんの?」
ルアが、言うと、二人はぴくりと跳ねる。
「え、えーと、関東大会だな、って話」
葵が答えると歌乃も頷く。
「この人の切ない愛の話」
歌乃が葵を指差して言う。
「...え、葵好きな人いるの?」
赤崎葵は、ルアのマンションの隣の部屋に住んでいた、
幼なじみだ。なんか、気持ち悪い。
「え、いや、違う、いねえ。
高島変な事言うなよ!」
葵が歌乃に怒った。
「ルア、関東大会だよ」
いきなり歌乃がこちらを向く。
「うん、そうだね」
ルアは、至って落ち着いた声で言う。
「頑張ろう、二人とも」
ルアが、叫ぶと、二人は、うん、と言った。
部屋に帰って唐揚げを揚げる。
唐揚げは、ルアの大好物なのだが、
どうしても太るので、一週間に一度に留めている。
いい匂いが、部屋中にする。
ピンポーン、ピンポーン
チャイムが鳴る。
箸を置いて、火を一度止めて、扉を開けると、髪を下ろした部長がいた。
「ルアピー、唐揚げ作ってるでしょ」
部長がメガネをかける真似をする。メガネなんてないのに。
「私にも頂戴」
まさか、外からも匂いはするなんて。
流石、部長、というか、部長用の唐揚げを、お皿に盛る。
一応ご飯と味噌汁も。
「はい、どうぞ」
テーブルに差し出すと、味噌汁とご飯の湯気が目立つ。
「ありがと。」
私は自分の分も持ってくる。
二人がいただきます、と言って、食べ始める。
大好きな唐揚げは、歯を立てると、かり...っと鳴って、
中はジューシーな肉の肉汁が溢れてきた。
美味しい。
ご飯を口に入れる。ぷりぷりなお米の理由は、お酒を一滴入れているからだ。
味噌汁は、白味噌。クリーミーな甘さに、優しい豆腐と、
静かなワカメが混じり合う。
「ルアピー、お料理上手いね」
部長がいう。
「それは良いですけど、部長。
あの、一つ聞きたい事があって」
喉がふるえる。
「首どうしたんですか」
今はパーカーで隠れてるが、合唱の時、確かに首は赤かった。人工的な赤さ。
「あ、わかっちゃった?
んー。唐揚げ作ってくれたルアピーには教えてあげる。
首、絞められたの」
こう!と部長は、絞める真似をする。
「し、絞めるって、誰に」
「ママ」
部長は即答した。
「でも、私のせい」
泣きそうな顔だ。まさか、前のお休みの時、実家で?
「首絞めるなんて下手したら死にますよ!雪葉先輩!
もしかしたら、虐待何じゃ」
「やめて」
雪葉先輩が言う。真剣な顔だと想うのもつかの間、
また、取り繕ったヘラヘラした笑顔で、言う。
「虐待なんかじゃない。」
雪葉先輩がいう。
きっとそれは、悪い意味の方だろう。
「虐待なんかに、収まらない」
雪葉先輩が、寮に住んでて良かったと心から思う。
可哀想だから。
きっと、雪葉先輩は、家族に、ヒドい目に会わされてる。
助けたい。
でも、きっとルアでは無理だ。
虐待なんかに、収まらない。
その言葉を脳内で何回も再生する。
「ごめんね、変な気分にしちゃって。
実は、誰かに打ち明けてみたかっただけなの。
またね、唐揚げ美味しかったよ。ありがと。ルアピー」
雪葉先輩は早足で扉に向かう。皿は綺麗な白になっていた。
扉が閉まると、雪葉先輩が心配になった。
つづく
関東大会に、向ける練習が、明日始まる。
寮に帰ると、歌乃と葵が、コソコソと何か話してる。
「歌乃、葵。なにしてんの?」
ルアが、言うと、二人はぴくりと跳ねる。
「え、えーと、関東大会だな、って話」
葵が答えると歌乃も頷く。
「この人の切ない愛の話」
歌乃が葵を指差して言う。
「...え、葵好きな人いるの?」
赤崎葵は、ルアのマンションの隣の部屋に住んでいた、
幼なじみだ。なんか、気持ち悪い。
「え、いや、違う、いねえ。
高島変な事言うなよ!」
葵が歌乃に怒った。
「ルア、関東大会だよ」
いきなり歌乃がこちらを向く。
「うん、そうだね」
ルアは、至って落ち着いた声で言う。
「頑張ろう、二人とも」
ルアが、叫ぶと、二人は、うん、と言った。
部屋に帰って唐揚げを揚げる。
唐揚げは、ルアの大好物なのだが、
どうしても太るので、一週間に一度に留めている。
いい匂いが、部屋中にする。
ピンポーン、ピンポーン
チャイムが鳴る。
箸を置いて、火を一度止めて、扉を開けると、髪を下ろした部長がいた。
「ルアピー、唐揚げ作ってるでしょ」
部長がメガネをかける真似をする。メガネなんてないのに。
「私にも頂戴」
まさか、外からも匂いはするなんて。
流石、部長、というか、部長用の唐揚げを、お皿に盛る。
一応ご飯と味噌汁も。
「はい、どうぞ」
テーブルに差し出すと、味噌汁とご飯の湯気が目立つ。
「ありがと。」
私は自分の分も持ってくる。
二人がいただきます、と言って、食べ始める。
大好きな唐揚げは、歯を立てると、かり...っと鳴って、
中はジューシーな肉の肉汁が溢れてきた。
美味しい。
ご飯を口に入れる。ぷりぷりなお米の理由は、お酒を一滴入れているからだ。
味噌汁は、白味噌。クリーミーな甘さに、優しい豆腐と、
静かなワカメが混じり合う。
「ルアピー、お料理上手いね」
部長がいう。
「それは良いですけど、部長。
あの、一つ聞きたい事があって」
喉がふるえる。
「首どうしたんですか」
今はパーカーで隠れてるが、合唱の時、確かに首は赤かった。人工的な赤さ。
「あ、わかっちゃった?
んー。唐揚げ作ってくれたルアピーには教えてあげる。
首、絞められたの」
こう!と部長は、絞める真似をする。
「し、絞めるって、誰に」
「ママ」
部長は即答した。
「でも、私のせい」
泣きそうな顔だ。まさか、前のお休みの時、実家で?
「首絞めるなんて下手したら死にますよ!雪葉先輩!
もしかしたら、虐待何じゃ」
「やめて」
雪葉先輩が言う。真剣な顔だと想うのもつかの間、
また、取り繕ったヘラヘラした笑顔で、言う。
「虐待なんかじゃない。」
雪葉先輩がいう。
きっとそれは、悪い意味の方だろう。
「虐待なんかに、収まらない」
雪葉先輩が、寮に住んでて良かったと心から思う。
可哀想だから。
きっと、雪葉先輩は、家族に、ヒドい目に会わされてる。
助けたい。
でも、きっとルアでは無理だ。
虐待なんかに、収まらない。
その言葉を脳内で何回も再生する。
「ごめんね、変な気分にしちゃって。
実は、誰かに打ち明けてみたかっただけなの。
またね、唐揚げ美味しかったよ。ありがと。ルアピー」
雪葉先輩は早足で扉に向かう。皿は綺麗な白になっていた。
扉が閉まると、雪葉先輩が心配になった。
つづく
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