192 / 332
190話 「変わりダネと定番?メニュー」
しおりを挟む
そろそろ夕食になりそうな頃、宿の食堂で一人もしゃもしゃと何かを食べる八木の姿があった。
「やっぱうめえな」
お皿に山盛りになったそれを口に放り込むとザクザクと小気味よい音が食堂に響く。
山盛りになった物の正体はたいりょうに揚げられた切り餅であった。一口大に切られたそれは揚げてから塩とそれに一部に胡椒が掛かっているだけと実にシンプルな物である。だがシンプルが故に単純に旨い。
「やめられない、とまらない……だったっけか。いくらでも食えそうだなこれ」
その食感と油で揚げたジャンク感が合わさり八木の手は止まることなく皿と口をいったりきたりしている。
そして山が半分ほどになった頃、食堂の扉を勢いよく開け中へ入ってくる者が居た。
「おっし、いっちばーん……じゃねーな。八木もう食ってんのか」
「ええ、まあちょっと」
一番乗りで食堂に来たと思えば八木がもう既に席に着いていた。
普段であれば皆より若干遅れ気味に来る八木がもう食堂に来ていて、しかも何かを食べている。そうなると自然と何を食べているのか気になるものある。
「お、それなんだ? 見たことねーなあ」
「これっすか? 今日入荷した食材で作ったやつでして――」
八木が食べているものに興味を示したヒューゴに対しもち米と今食べている物について説明する八木。
せっかくなので皆にも興味を持って貰いたいと結構真面目に説明しているようである。
ヒューゴも未知の食材に興味を持ったようでその視線は皿に盛られた揚げ餅に釘付けであった。
「ほーん…………いただきっ」
あっと八木が思った時にはヒューゴが手にとった揚げ餅は彼の口の中に納まっていた。
日頃の鍛錬によるものだろう、まさに目にもとまらぬ早業であった、
「いけるじゃん」
もっとも動きがゆっくりだったとしても八木に止めるつもりはなかったが。
それはともかく揚げ餅を食べたヒューゴの反応は悪くないようである。
ザクザクと咀嚼すると餅を飲み下しぺろりと唇を舐める。
「お、そうっすか?」
「食感がいいな表面サクッとしてて中はもっちり、味も変な癖ないし食いやすい。これ色んな味付けに合いそうだな」
「お? 試してみます? 加賀に頼んでいくつか作って貰うんすよ……加賀ー! ちょっといいか?」
思ってた以上に高評価なヒューゴの言葉に気をよくした八木は他のも食べてもらおうと大きな声で加賀を呼ぶ。
人間、自分が好きなものを褒められると嬉しくなるものである、加賀を呼ぶ八木の顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「……声でかい。で、どしたの? お代わり?」
やがて厨房からひょこりと顔をだす加賀。
八木の声が厨房に響いていたのかその顔は少しむーっとしている。
「いや、ピザとか準備はしてあんだろ? あれの他にも大福とおこわ……あと他に何かあれば持ってきてくんない? ちょっと試しに食って貰おうかと思ってさ」
「……うん、いいよ。味見用って事で少なめにしとく?」
八木の言葉を聞いてちらりと視線をヒューゴに移す加賀。視線の先では八木が背中を向けているのを良い事に揚げ餅を次々口に放り込んで行くヒューゴの姿があった。
それを見なかった事にした加賀、とりあえず了承し量をどうするか八木にたずねる。
「そうだなー……じゃ、少なめで」
「ん、了解。ちょっとまっててね」
そう一言残し厨房へと戻る加賀。ほどなくしてピザの焼ける香ばしい匂い、それに燻製肉を焼いた匂いが食堂へと漂ってくる。
「ピザ……となんだろ」
「さぁなあ……お、きたきた……」
ピザは生地を用意し具を乗せてオーブンに入れれば焼けるまでそう時間は掛からない、加賀が厨房にはいりそう待たないうちに料理は出来上がったようだ。
二人の前に加賀がお皿を置いて行く。一つはピザが乗った大き目の皿でもう一つは丸めたベーコンの串焼きのようなものである。
「お、ベーコンで巻いたのか。やったぜこれ大好き」
「ほー? まあ、とりあえず温かい内に食おあつっ……ちいいいぃい!」
温かい内に食べよう、そう考えたヒューゴは何時もと同じ感覚でピザへと手を伸ばす。だが伸ばした指先にあったのは熱々のお餅である。
触れた瞬間熱さに気が付いたヒューゴはすぐさま手を引っ込める、が見事にヒューゴの指先に引っ付いた餅はヒューゴへ持続ダメージを与えていく。
「……じゃ、先にベーコン貰おうかな」
もがいて苦しむヒューゴを見てピザを後回しにする事にした八木、串に触ったベーコンを一つ口に放り込む。
「っほあーっ あっふ!」
噛んだ瞬間中からとろとろになった餅とチーズが飛び出す。あらかじめ心構えしていた為そこまで取り乱す事は無いがそれでも熱いものは熱い。
「っくはー……うめえ。むっちゃうまい、てかビール欲しい」
「ほい」
久しぶりに食べた餅とチーズのベーコン巻きはうまかったらしい。
ビールを飲みたくなった八木が手をわきわきしていると、その手に加賀がビールを渡してくれる。
どうやら事前にビール欲しがるであろうと予測し注いでくれていたようだ。
「ありがてえ、ありがてえ」
「加賀ちゃん俺にもー…‥お、ピザうめえ。ちょっと何時ものと違うけど、うんうまいよこれ」
ぐびぐびとビールを煽る八木。そして片手をぶらぶらさせながらもう片方の手で持ったピザを頬張るヒューゴ。どちらも好評なのは見てすぐわかる。
この様子なら他の人も大丈夫そうだと少し安心した加賀、これからくるであろう他の探索者達にそなえ厨房へと戻るのであった。
「やっぱうめえな」
お皿に山盛りになったそれを口に放り込むとザクザクと小気味よい音が食堂に響く。
山盛りになった物の正体はたいりょうに揚げられた切り餅であった。一口大に切られたそれは揚げてから塩とそれに一部に胡椒が掛かっているだけと実にシンプルな物である。だがシンプルが故に単純に旨い。
「やめられない、とまらない……だったっけか。いくらでも食えそうだなこれ」
その食感と油で揚げたジャンク感が合わさり八木の手は止まることなく皿と口をいったりきたりしている。
そして山が半分ほどになった頃、食堂の扉を勢いよく開け中へ入ってくる者が居た。
「おっし、いっちばーん……じゃねーな。八木もう食ってんのか」
「ええ、まあちょっと」
一番乗りで食堂に来たと思えば八木がもう既に席に着いていた。
普段であれば皆より若干遅れ気味に来る八木がもう食堂に来ていて、しかも何かを食べている。そうなると自然と何を食べているのか気になるものある。
「お、それなんだ? 見たことねーなあ」
「これっすか? 今日入荷した食材で作ったやつでして――」
八木が食べているものに興味を示したヒューゴに対しもち米と今食べている物について説明する八木。
せっかくなので皆にも興味を持って貰いたいと結構真面目に説明しているようである。
ヒューゴも未知の食材に興味を持ったようでその視線は皿に盛られた揚げ餅に釘付けであった。
「ほーん…………いただきっ」
あっと八木が思った時にはヒューゴが手にとった揚げ餅は彼の口の中に納まっていた。
日頃の鍛錬によるものだろう、まさに目にもとまらぬ早業であった、
「いけるじゃん」
もっとも動きがゆっくりだったとしても八木に止めるつもりはなかったが。
それはともかく揚げ餅を食べたヒューゴの反応は悪くないようである。
ザクザクと咀嚼すると餅を飲み下しぺろりと唇を舐める。
「お、そうっすか?」
「食感がいいな表面サクッとしてて中はもっちり、味も変な癖ないし食いやすい。これ色んな味付けに合いそうだな」
「お? 試してみます? 加賀に頼んでいくつか作って貰うんすよ……加賀ー! ちょっといいか?」
思ってた以上に高評価なヒューゴの言葉に気をよくした八木は他のも食べてもらおうと大きな声で加賀を呼ぶ。
人間、自分が好きなものを褒められると嬉しくなるものである、加賀を呼ぶ八木の顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「……声でかい。で、どしたの? お代わり?」
やがて厨房からひょこりと顔をだす加賀。
八木の声が厨房に響いていたのかその顔は少しむーっとしている。
「いや、ピザとか準備はしてあんだろ? あれの他にも大福とおこわ……あと他に何かあれば持ってきてくんない? ちょっと試しに食って貰おうかと思ってさ」
「……うん、いいよ。味見用って事で少なめにしとく?」
八木の言葉を聞いてちらりと視線をヒューゴに移す加賀。視線の先では八木が背中を向けているのを良い事に揚げ餅を次々口に放り込んで行くヒューゴの姿があった。
それを見なかった事にした加賀、とりあえず了承し量をどうするか八木にたずねる。
「そうだなー……じゃ、少なめで」
「ん、了解。ちょっとまっててね」
そう一言残し厨房へと戻る加賀。ほどなくしてピザの焼ける香ばしい匂い、それに燻製肉を焼いた匂いが食堂へと漂ってくる。
「ピザ……となんだろ」
「さぁなあ……お、きたきた……」
ピザは生地を用意し具を乗せてオーブンに入れれば焼けるまでそう時間は掛からない、加賀が厨房にはいりそう待たないうちに料理は出来上がったようだ。
二人の前に加賀がお皿を置いて行く。一つはピザが乗った大き目の皿でもう一つは丸めたベーコンの串焼きのようなものである。
「お、ベーコンで巻いたのか。やったぜこれ大好き」
「ほー? まあ、とりあえず温かい内に食おあつっ……ちいいいぃい!」
温かい内に食べよう、そう考えたヒューゴは何時もと同じ感覚でピザへと手を伸ばす。だが伸ばした指先にあったのは熱々のお餅である。
触れた瞬間熱さに気が付いたヒューゴはすぐさま手を引っ込める、が見事にヒューゴの指先に引っ付いた餅はヒューゴへ持続ダメージを与えていく。
「……じゃ、先にベーコン貰おうかな」
もがいて苦しむヒューゴを見てピザを後回しにする事にした八木、串に触ったベーコンを一つ口に放り込む。
「っほあーっ あっふ!」
噛んだ瞬間中からとろとろになった餅とチーズが飛び出す。あらかじめ心構えしていた為そこまで取り乱す事は無いがそれでも熱いものは熱い。
「っくはー……うめえ。むっちゃうまい、てかビール欲しい」
「ほい」
久しぶりに食べた餅とチーズのベーコン巻きはうまかったらしい。
ビールを飲みたくなった八木が手をわきわきしていると、その手に加賀がビールを渡してくれる。
どうやら事前にビール欲しがるであろうと予測し注いでくれていたようだ。
「ありがてえ、ありがてえ」
「加賀ちゃん俺にもー…‥お、ピザうめえ。ちょっと何時ものと違うけど、うんうまいよこれ」
ぐびぐびとビールを煽る八木。そして片手をぶらぶらさせながらもう片方の手で持ったピザを頬張るヒューゴ。どちらも好評なのは見てすぐわかる。
この様子なら他の人も大丈夫そうだと少し安心した加賀、これからくるであろう他の探索者達にそなえ厨房へと戻るのであった。
10
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる