異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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257話 「見つけてしまったもの3」

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「んお?」

どこかに隠し扉があるのではないか、そう思い壁を手で軽く叩きながら歩いて行た3人であるが、少し進んだところで八木が叩いた壁から周囲とは違い妙に軽い音が響く。

「そこ、音が違うね」

「おーみっけた?」

周囲を念入りに叩くと人二人が並んで通れる程度の空間が壁の奥にある事が分かる。
そして隠し扉があるのならそれを開くための仕掛けもあるはずだ、と言うことで周囲の壁をもう少し探ると一部が押すと凹む部分が見つかる。

「んー……ここ、押すと凹むぞ」

「二人とも私の後ろに……押すよ」

開いた先に何か危険があるかも知れない。
そう考えたアイネは二人を後ろに下げると凹む壁をぐっと押し込んだ。

「わーやっぱ隠し扉だ」

やはり凹む壁は隠し扉を開くための仕掛けだった様で、鈍い音を立てながら壁が二つに分かれ開いていく。

「すげー! いかにもそれっぽい箱……と、何かすげー怪しい像が」

「わーこれ絶対襲ってくるやつじゃん」

開いた先にはいかにもお宝ですといった雰囲気の箱がいくつも置かれており、そしてそれらを守るかの様に怪しさ満点の像がでんと置かれていた。

「何か台座に書いてあるー……字ちっさ!」

「あー確かに小さいな……えっと何々? 左はこの国の言葉だな、で右は英語と……」

像の台座部分には何やらびっしりと文字が刻まれている様だ。
ただ像まで少し距離があるのと字が小さすぎるせいもあり、加賀には馬首読めなかったらしく代わりに八木が台座に刻まれた文字を読んでいく。

「要約するとお宝欲しければ力を示せって事らしいな。示した力の具合によって貰えるお宝が変わると……この線越えた奴が挑戦者って事になるから間違ってもそこ越えるなよ?」

「わかったー。んで右には何て?」

そこまでが現地の言葉で書かれた部分である。
恐らくはこの地に住む者達へ向けられた言葉だろう。

「あー……こっちは神の落とし子向けだな……とりあえず読むぞ?」

右側部分は英語……つまりは神の落とし子向けである。
以下は八木が読み上げた台座に書かれていたいた内容である。

秘密基地の様な住まいが出来たのでせっかくだからお宝と守護者を配置してみた。
相手を殺すことはない設定にしてあるし、子供とかが万が一来てしまった場合に備えて相手の強さに合わせて手加減するようにも設定してある。
お宝は俺達が趣味で作った物が多く、神の落とし子にして見ればそこまですごい物では無いだろう。
なので出来れば神の落とし子がこれを見たならチャレンジせずにおいて欲しい。

「――あともし現地の者と一緒でここに来たのなら上記の事は内緒にしておいて欲しい。……最初に書けよっ!? 思いっきり声に出して読んじまったじゃねーかっ」

「あはー」

思わず叫ぶ八木と微妙な表情でとりあえず笑う加賀。

「どうしようねー? 正直言うと趣味で作った物が気になるんだけど」

「……アイネさん挑戦してみます?」

宝の内容が気になる加賀であるが正直戦うとなると厳しいものがある。それは八木も同じようでアイネの様子を窺うように小声で尋ねる。

「やってみようかとは思うのだけど……私が本気で戦ったらこの建物崩れてしまうかも」

アイネ自身も一応やる気はあるようである。だが戦うとなるとその部屋はあまり広くはない上に長い年月が経過した事により少しぼろくなっている。アイネが本気で戦えば恐らくは建物ごと崩れてしまうだろう。

「あ、そっか……でもそれ考えると建物が壊れるほどの戦いになる様な相手じゃ無いって事かな?」

「普通に切った張ったすりゃ倒せると? ふーむ」

ただそれは相手側にも言えることであり、建物が崩れるような戦いになる相手ではないとも考えられる。

「いざとなったらうーちゃん呼び出すとして……どします?」

「やってみる。趣味で作った物が気になる……もしかすると見たこと無い作物かも知れないし」

それらを吟味した上でアイネは挑戦する事を選択した。
いざという時のためにデーモン達と精霊には何か危険があれば二人を守るようにとそばで待機させ、アイネは白線を踏み越える。

「アイネさん気を付けてねー!」

「やばそうだったら逃げてくださいね」

「ん」

白線の向こうで応援に手を上げて応えるアイネ。
彼女の前では守護者である像がゆっくりと動き始めていた。

「よくぞ来た挑戦者よ……宝が欲しいのだろう? 良いぞ、くれてやる……ただしこの俺に勝てたらだがなあ!!」

急に目に光が灯ったかと思うと低く響く声で語り出した守護者。
両手を広げアイネに向かい叫んだところでピタリと動きを止める。

「挑戦者以外の方は白線から出ないようにしてください。白線から出た場合挑戦者と見なされ攻撃対象となります。応援する場合は壁際の席にて観戦願います」

そして辺りに響き渡る妙に丁寧で無機質な声。
どちらも守護者から発せられた音声であるが、その落差に3人ともなんとも言えない表情を浮かべていた。

「……前半と後半のテンションの落差が酷い」

「えー……壁際の席ってどこだろ」

とりあえず観戦しようと壁際にある席に向かおうとキョロキョロ辺りを見る二人であったが肝心の席が見当たらないでいた。

「あれ揺れて……いや下がってる?」

そして少しの間を置いて床が揺れ出し、やがて下へと沈み込んでいく。

「おっほ! 地下こんなんなってたのか! すっげえ」

これも土関係の魔法が得意であった元ここの住民が作成したのだろう。
隠し部屋の下、そこは巨大な闘技場となっていたのだ。
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