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323話 「ワカサギ釣り再び5 煌めくパウンドケーキ」
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「釣れない」
「釣れないですね」
「いい加減腹が空いてきたのであるな……」
ウナギ狙いに切り替えおよそ1時間ほど経っただろうか。
時折ワカサギ以外の魚が釣れるも肝心のウナギはいまだに釣れないでいた。
うな丼のためにと天ぷらを食べる量を制限していた者たちもいたが、いい加減お腹が空いてきたようで徐々に目が死んできている。
「意外と釣れないのね」
「ウナギ用の仕掛けじゃないだろうしねえ……あ」
その様子をみて釣れないねと呟くアイネ。
加賀もチラリと視線を向け、仕掛けがあわないからと言うが、実際にはウナギでも問題ない仕掛けだったりする。釣れないのは単に運が悪いか何かだろう。
ふいに加賀が口元を抑え呟く。加賀の視線の先で何かあったようである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?」
「……?」
「ドラゴンさんが飛び込んだ……」
ヒューゴの叫び声が再び上がったかと思うと次いで激しく水面を叩く音があたりに響き渡る。
耐えきれなくなったドラゴンが水面に飛び込んだらしい。もちろん全裸で。
真冬に水の中に飛び込むのは自殺行為のような気がしなくもないが、そこはさすがドラゴンといったところだろうか、数分後氷漬けになったウナギを抱えたドラゴンが水面から顔を出す。
「寒いのである」
「ったりめーだろぉっ!」
……鼻水垂らしてるあたり実は寒かったようだ。
久しぶりのワカサギ釣りを終えた数日後。宿の厨房にて冷蔵庫をごそごそあさる加賀の姿があった。
「ふふーん」
鼻歌まじりに冷蔵庫から取り出したは紙で包まれた棒状の物体である。
外見からはそれが何であるか分からないが、あたりに漂う甘い香りからそれがケーキであることが伺えた。
「今日でちょうど2年目かー。 どんな具合かなー? …………んんん??」
お酒をたっぷり染み込ませたラムレーズンのパウンドケーキである。
加賀は2年間欠かさず毎日魔力をこめ、じっくり熟成させてきたのである。2年たった今もう食べてもいいだろう……というかアイネがもう我慢出来ないと1個だけ開けて食べてしまうことにしたのである。
そんな大事に熟成してきたパウンドケーキであったが、ある異変がおきていた。
「出来具合は……ど、う? ……何かあったの? まさか傷んでた?」
「うにゃ傷んではないんだけどー……これどう思う?」
加賀の様子がおかしいことに気が付いたアイネが厨房まで様子を伺いに来る。
2年も熟成したということで傷んでいるかと心配したようだが、実際はそうではなかった。
「……なに、これ」
「何か光ってるんだよねー……食べる?」
包みの中にあったのはケーキである。 だがちょっと名前に疑問符がつくようなものへと仕上がっていた。
厨房の明かりの下でもはっきりわかるほどケーキは光を発していたのである。
「ケーキは、光らない……のよ?」
さすがにアイネも光るケーキはちょっと遠慮したいようである。
楽しみにしていたケーキが得体のしれない物体となってしまったことも相まって涙目である。
「だよねー。 どうしよこれ……レインボーケーキっていったら八木あたり食べないかな」
「聞こえてんぞ」
「わあ、びっくり。 いつからいたの?」
本人に聞かれたら不味そうなセリフであるが、ばっちり聞かれたいたらしい。
背後から聞こえた八木の声に振り替えると、ごまかすようにぺろっと舌をだす加賀。
「ついさっき帰ってきたんだよ。 ……んで、何がレインボーだって?」
「これ。 食べる?」
あきれた様子でため息をつく八木。
一体何があったのかと尋ねる八木に加賀はすっとケーキを包み毎渡した。
「何で光ってるんです!? いやだよ、絶対くわねー!」
「むう……」
やはりというか八木もノーセンキューであったようだ。
むうと頬を膨らませる加賀であるが、普通に考えて光る得体のしれない物体を食いたがる人物は早々居ないだろう。
「しかもさ、ほのかに光るならともかく……これダメだろ。 なんで蛍光色なんだよ」
これが、ほのかにぼんやりと光る程度であればまだ違ったかもしれない。
だが残念なことにそのケーキは某国産のケーキよろしく蛍光な虹色に光り輝いていたのだ。
「おまえ何したのさ」
「別になにも……ちょっと2年ばかし魔力込め続けたダケダヨ」
じとっとした目で加賀をみて問い詰める八木。
加賀は別にと答えるがすぐにそっと目をそらし鼻歌を歌いはじめる。
「おう、責任もって食えよ。ほらぁ」
「やだー!」
ケーキをぐいぐい押し付ける八木から逃げるように距離をとる加賀。そしてアイネ。
どうやら誰も食べたくないと言うことで一致したようである。
「釣れないですね」
「いい加減腹が空いてきたのであるな……」
ウナギ狙いに切り替えおよそ1時間ほど経っただろうか。
時折ワカサギ以外の魚が釣れるも肝心のウナギはいまだに釣れないでいた。
うな丼のためにと天ぷらを食べる量を制限していた者たちもいたが、いい加減お腹が空いてきたようで徐々に目が死んできている。
「意外と釣れないのね」
「ウナギ用の仕掛けじゃないだろうしねえ……あ」
その様子をみて釣れないねと呟くアイネ。
加賀もチラリと視線を向け、仕掛けがあわないからと言うが、実際にはウナギでも問題ない仕掛けだったりする。釣れないのは単に運が悪いか何かだろう。
ふいに加賀が口元を抑え呟く。加賀の視線の先で何かあったようである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?」
「……?」
「ドラゴンさんが飛び込んだ……」
ヒューゴの叫び声が再び上がったかと思うと次いで激しく水面を叩く音があたりに響き渡る。
耐えきれなくなったドラゴンが水面に飛び込んだらしい。もちろん全裸で。
真冬に水の中に飛び込むのは自殺行為のような気がしなくもないが、そこはさすがドラゴンといったところだろうか、数分後氷漬けになったウナギを抱えたドラゴンが水面から顔を出す。
「寒いのである」
「ったりめーだろぉっ!」
……鼻水垂らしてるあたり実は寒かったようだ。
久しぶりのワカサギ釣りを終えた数日後。宿の厨房にて冷蔵庫をごそごそあさる加賀の姿があった。
「ふふーん」
鼻歌まじりに冷蔵庫から取り出したは紙で包まれた棒状の物体である。
外見からはそれが何であるか分からないが、あたりに漂う甘い香りからそれがケーキであることが伺えた。
「今日でちょうど2年目かー。 どんな具合かなー? …………んんん??」
お酒をたっぷり染み込ませたラムレーズンのパウンドケーキである。
加賀は2年間欠かさず毎日魔力をこめ、じっくり熟成させてきたのである。2年たった今もう食べてもいいだろう……というかアイネがもう我慢出来ないと1個だけ開けて食べてしまうことにしたのである。
そんな大事に熟成してきたパウンドケーキであったが、ある異変がおきていた。
「出来具合は……ど、う? ……何かあったの? まさか傷んでた?」
「うにゃ傷んではないんだけどー……これどう思う?」
加賀の様子がおかしいことに気が付いたアイネが厨房まで様子を伺いに来る。
2年も熟成したということで傷んでいるかと心配したようだが、実際はそうではなかった。
「……なに、これ」
「何か光ってるんだよねー……食べる?」
包みの中にあったのはケーキである。 だがちょっと名前に疑問符がつくようなものへと仕上がっていた。
厨房の明かりの下でもはっきりわかるほどケーキは光を発していたのである。
「ケーキは、光らない……のよ?」
さすがにアイネも光るケーキはちょっと遠慮したいようである。
楽しみにしていたケーキが得体のしれない物体となってしまったことも相まって涙目である。
「だよねー。 どうしよこれ……レインボーケーキっていったら八木あたり食べないかな」
「聞こえてんぞ」
「わあ、びっくり。 いつからいたの?」
本人に聞かれたら不味そうなセリフであるが、ばっちり聞かれたいたらしい。
背後から聞こえた八木の声に振り替えると、ごまかすようにぺろっと舌をだす加賀。
「ついさっき帰ってきたんだよ。 ……んで、何がレインボーだって?」
「これ。 食べる?」
あきれた様子でため息をつく八木。
一体何があったのかと尋ねる八木に加賀はすっとケーキを包み毎渡した。
「何で光ってるんです!? いやだよ、絶対くわねー!」
「むう……」
やはりというか八木もノーセンキューであったようだ。
むうと頬を膨らませる加賀であるが、普通に考えて光る得体のしれない物体を食いたがる人物は早々居ないだろう。
「しかもさ、ほのかに光るならともかく……これダメだろ。 なんで蛍光色なんだよ」
これが、ほのかにぼんやりと光る程度であればまだ違ったかもしれない。
だが残念なことにそのケーキは某国産のケーキよろしく蛍光な虹色に光り輝いていたのだ。
「おまえ何したのさ」
「別になにも……ちょっと2年ばかし魔力込め続けたダケダヨ」
じとっとした目で加賀をみて問い詰める八木。
加賀は別にと答えるがすぐにそっと目をそらし鼻歌を歌いはじめる。
「おう、責任もって食えよ。ほらぁ」
「やだー!」
ケーキをぐいぐい押し付ける八木から逃げるように距離をとる加賀。そしてアイネ。
どうやら誰も食べたくないと言うことで一致したようである。
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