異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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42話 「日常の変化 その2」

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昼を少しまわった頃バクス亭の扉を開け一人の男が入っていく。

 「あ、八木じゃん。おかえりー」

 「おう、ただいま」

 帰るなり椅子に腰掛けだらける八木を見て、加賀は果汁のはいったコップを渡すと口を開く。

 「建築ギルドはどうだったー? 交渉うまくいったん?」

 「ああ、交渉自体はうまくいったよ……ただ」

 「ただ?」

 果汁のはいったコップを一気に傾け中身を飲み干す八木を、ふうっと一息つくと再び顔を加賀へと向ける。

 「建築ギルドはモヒカンの巣窟だった」

 「………………んん?」

 八木の言葉をすぐには理解できなかった加賀、何言ってんだこいつ、と言った目で八木を見ている。
うーちゃんも一緒にだ。

 「大工がみんなモヒカンだったんだよ……この街の大工はみんなモヒカンらしい」

 「へー……」

 八木の表情から本当のことを言っていると分かったのだろう、加賀は少し気の毒そうな表情をし、そっと八木の肩に手を置く。

 「……バリカンでいい?」

 「俺はしないからな!」

 思わず叫ぶ八木に加賀は冗談、冗談。と言う、笑いながら楽しそうに。


 「あー笑った。のど乾いちゃったよー」

そう言って果汁のはいったコップを傾ける加賀、ペロリと唇をなめ口を開く、

 「しっかし、あれだーね」

 「んー?」

 「なんだってよりによってモヒカンなんて伝えたんだかー」

 加賀の言葉に地球の…それも日本から来たであろう過去の神の落とし子のことだと理解した八木、ちょっと考える仕草をしながらああ、と呟く。

 「それ多分違うぞ」

 「うん?」

 「あの漫画ができたのって30年前とかそれぐらいだろ? 俺らの前の神の落とし子がいたのって、50年前とかだから……」

 「それってつまり……」

 加賀の方を見て頷く八木。

 「あいつらは自然に発生したモヒカンってことだ」

 「……天然のモヒカン」

その事実に驚きを隠せない加賀思わずじりと後ずさり

 ふいに背後から声が掛かる。

 「お前ら楽しそうだな……」

いつの間に戻ったのか、バクスが扉をあけ二人を呆れた表情でみていた。
 荷物をおき椅子にどさりと座るバクス、加賀からコップを受け取り一息に飲み干すとさて、と口を開いた。

 「二人とも今日はどうだった? なんとかなりそうか?」

 「わりとすぐ売り切れましたよー。トラブルもなかったです!」

 「えぇ、契約は大丈夫そっす……」

バクスの問いに笑顔で答える加賀と微妙な表情で答える八木。
バクスは少し首をかしげふむと頷く。

 「まあ、問題ないなら良い。……俺の方も一応良い報告がある」

そういって懐から一枚の紙を取り出すバクス。
やや高級そうなそれを二人に手渡すと再び口を開いた。

 「ここの領主の手書きだ。二人とも喜べ、当面この街に居ても良い事になったぞ」

その言葉に一瞬かたまり、次いではっとした表情で喜びの声を上げる二人。
そんな二人をみてバクスは苦笑しつつ続きを話し始める。

 「お前ら忘れてただろ……ほかの国との調整が大分もめたらしいがな、なんと神から各国のお偉いさんにお告げがあったそうだ。それでお前らが戦う力がないって話にも納得してこの国に留まることを受け入れたそうだ」

 神様に感謝の言葉を述べつつ二人喜びの声をあげる。そんな二人を見つつバクスは少し言いにくそうにしながらただ、と言葉をつなげる。

 「まだ本決まりではないが、監視てきなものはつくかもしれん」

 「監視……ですか」

 「それぐらいなら……まあ」

この国から出て危険な旅に出るぐらいなら、と納得した様子の二人。

 「ま、そのあたりが決まるのは当分先だろうし。今はゆっくりしとくと良い、この前みたいに暴走するあほが出ることもないだろうしな」

 「この前……もしかして前襲ってきたの野党じゃなくて……」

 以前馬車が襲われた際に何となく引っ掛かりを覚えていた八木。バクスが言っているのがその事だとすぐあたりをつける。

 「ああ、あほな貴族が神の落とし子がいると聞いて、確保しようと動いたそうだ」

それを聞いてうへえと言った表情を浮かべる二人。

 「あの、その貴族ってどう…あ、やっぱなんでもないっす」

 貴族がどうなったか聞こうとした八木であるが、バクスの瞳に一瞬宿った冷たい光にすぐ言葉を引っ込める。

 「あ、そだバクスさん」

 「ん?」

 「オージアスさんちょっと前に来てまして、燻製肉もっとほしいそうですよ。かなり評判いいらしくてすぐ売り切れちゃうみたいです」

 思い出したようにバクスへと話かける加賀。
それを聞いてすごく嬉しそうな表情をするバクス。
 自分のお気に入りが他人にも好評で嬉しいのだろう、さらに自分で作ったのだからなおさらだ。

 「そうかそうか、じゃあもっと作らないとなあ。肉の在庫はもうないし買いに……いや、いっそ狩るか?」

 「バクスさん、香辛料なくなっちゃいますぜ」

そう言いつつも、八木も燻製肉は好物だ。
 次は何を作るかでバクスと二人話がもりあがる。

 「またトゥラウニいかないとねー? うーちゃん」

うー(おさかな食えるならいってもいいぞい)

 二人の様子をみてやれやれと言った様子の加賀と、相変わらずマイペースなうーちゃん。
バクス亭はなんだかんだで今日も平和である。
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