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44話 「ギルドのノルマ」

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森へと続く道を1台の馬車が通る。

 御者台に座るのは加賀とうーちゃん。
ギルドのノルマを達成すべく、今回は栗を拾いに来たのだ。

 冬に備えて食いだめをする動物が多く、自然と危険な生物と出会う確率も高くなる。
この時期のこの手の依頼は複数回受けたものと同じ扱いとなり、うーちゃんと一緒であれば安全に採取できる加賀にとってはおいしい依頼となっていた。

 「栗とれたらー。どうしようね、なにかお菓子作りたいけど」

うっ(お菓子?あまいやつかの。それならさくさくしたのがええの)

 「さくさくかー。栗つかったやつでさくさく……なにかあったかな」

もちろん余計にとった分は加賀達の胃袋に収まることになる。むしろそちらが主目的といってもいいだろう。

 「とうちゃーっく」

 「いっぱい落ちてるわねえ、ごめんなさいね。手伝えなくて……」

いいよいいよーと言いながら馬車を降り、籠を背負う加賀。
 今回アンジェはイガが毛に絡むという理由でその場でお留守番となる。

うー(全部とりつくすんじゃー)

 「ありすぎても食べきれないよー」

 栗を靴で挟み込みひょいひょいと栗を拾っていく加賀。
 虫食いがないのを籠にどんどん詰め込んでいく。

 栗は拾うのに少し手間がかかるのと一つ一つがそこまで大きくないので籠がいっぱいになるまで時間がかかるようだ。
 3つほどいっぱいなったところで、うーちゃんが加賀のそでをぐいぐいと引っ張る。

うっ(加賀ー、そろそろめしにしようぞ)

 「ん、そろそろお昼っぽいね、ごはんにしよっか」

 籠を抱え馬車へと戻る加賀とうーちゃん。
 馬車から敷物と弁当をとりだし地面へと広げる。

 「あらあら、ずいぶんとたくさんあるのねえ」

うー(でかしたー加賀)

 「いっぱいたべてねー」

さきほどまで使っていた籠より大きな包み、中には加賀が朝から仕込んできてお弁当がはいっている。
3人と考えるとあきらかに多すぎるその量だが、アンジェの存在を考えればむしろ少ないかも知れない。
と、思われたが

「も、もう食べれないわあ……」

うっ(くるちぃ)

 「ボクも……あれ、アンジェっていがいと小食……?」

 予想以上にあまる弁当。
うーちゃんは最近手乗りサイズから猫並みのサイズへと変わっていたが、それほど量は食べれない。
 加賀もうーちゃん並みである。
 予想外だったのがアンジェだ。加賀よりはあきらかに食べているが、それでも普通の人並み程度に思える。

 加賀がどうしたのかと尋ねるがアンジェ曰く、自分は人と食べる量はさほど変わらないとのこと
 その量でどうやってあの巨体を維持しているのか不明だが、現にアンジェはもうおなか一杯でこれ以上食べれそうにない。

あまったものをどうしようかと悩む加賀、ふいにその耳に何者かの声が届く。

 (……ケテ…ス………タスケ)

 「ん……何かきこえたよう…な」

 音がした方向へと振り向く加賀、その視線の先にいたのはうーちゃんであった。だがその姿にどこか違和感を覚える加賀。
よくよくみると頬がぽこりと膨れている。

 口の中で何かを転がすように頬のふくらみが動く、そしてごりっと何かをかむ音と同時に先ほどの声が聞こえてくる。タスケテと。

 「う、うーちゃん……? な、なにたべてるのかな?」

うっ(なんかおちとった)

 「それ食べちゃだめなやつだから! ぺっしなさいぺっ」


 加賀にいわれしぶしぶといった様子で口に含んだものをはきだすうーちゃん。
それは一見すると飴玉のような綺麗な赤色をした玉であった。

 吐き出された玉はころころと転がり、ふいにふわりと宙に浮かぶ。

 (やれやれ、ひどいめにあったわい……)

 「玉もしゃべるのね……」

 (んんー? ほっほう、神落もとし子かあ久しく見てなかったのう)

 球がなぜ喋るのかというのは置いておいて、ひとまずうーちゃんが食べようとしたことを謝罪する加賀。
そういった性格なのか、本当に気にしてないのか。球はよいよいと言って怒った様子はみせない。

そしてそんな事よりも気になることがあるのか、ふわふわとお弁当の上にくるとそこで動きを止める。

 (ぬう? なんじゃこれは、何かええ匂いがするのう)

 (鼻あるの……?)

どうみてもただの球体。どこに鼻があるのか疑問ではあるが加賀はひとまず置いておくことにしたようだ。
 神の加護により自分が作った料理は誰でも食えること、おそらく球も例外ではないことを話す。

 (ほー……ためしに食べてみていいかの?)

 「あ、どうぞどうぞ。ボクらもうおなか一杯なので」

 果たしてそれを食べると言って良いのかどうか難しいところである。
 玉が近づいた瞬間、周りにあった料理がかき消えていくのだ。

 「お、おぉぉ……?」

 不思議な光景に目をしばたたく加賀。
そうこうしている間にも料理は消えていき、消えていく量に比例して玉がどんどん大きくなっていく。

 料理が全てなくなったとき飴玉サイズだった玉は一抱えほどもある大きさとなっていた。

 (ふいー……こりゃすごい、まさか一気に満腹になるとは思わんかったわい)

 「ええっと、お粗末様でした?」

 満足げにため息をつくと再びふわりと宙に舞う玉。
 加賀の前までゆっくりと進みぴたりと止まる。

 (腹もふくれたし戻るとするかの、すっかりごちそうになってしまったのう……神の落とし子よこの礼はいずれ)

そう言うと玉は地面に溶け込むように消えてしまう。

 「なんだったんだろね、あれ」

うっ(わしがしるかーい)

 「よく分からないもの食べようとしちゃダメだよ……」

その後何事もなく残りの栗をひろった3人?は街へと戻るのであった。
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