拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです

熊ごろう

文字の大きさ
52 / 156
木の中にいる

「51話」

しおりを挟む
息を整えゆっくりと立ち上がる。
八ツ目はすでにこっちを視界に捉えており、ゆっくり近付いてきていた。

一気に距離を詰めないのは俺の足元に八ツ目の、それも装備持ちの死体があるからだろう。
警戒しているのだ。

近付くにつれて相手の装備の詳細が分かってきた。
全身を甲冑で覆っているのは変わりないが、所々肌が露出している箇所があった。
そこはいいのだが、問題は……。

「……武器持ちとか冗談きついよ。ほんと」

ちゃっかり武器を持っていることだ。
八ツ目が持つとそこまで大きくは見えないが、刃渡り1mはありそうな厚手の片刃の剣である。

補正が落ちてきている今、仮に肉体部分で受け止めたとしたならばっさり斬られるのは間違いない。

そうなると盾か武器で受けることになるのだが……さきほど盾から嫌な音がしたこともあって不安が残る。


「っと」

ふいに八ツ目が距離をつめ剣を振りかぶる。俺が不安に思ってようが何してようが八ツ目には関係ないのだ、むしろ隙と捉え襲いかかる切っ掛けにしかなっていない。


まあこちらも今まで散々モンスターを狩って経験を積んでいるので、そんな不意打ちにやられることはないのだが……受け流した盾からまた軋む音がした。

「げっ……また嫌な音したなあ」

カウンターで相手を殴りつけて距離を取る俺。
良い感じに肌が剥き出しの部分にあたり少し出血をするが……大したダメージじゃなさそうだ、八ツ目の動きに変化は見られなかった。

てか、それよりも盾がやばい。
本当ね、もう壊れる寸前ですよーってむっちゃアピールしてくる音してるんですよ。

これあと数回受けたら壊れる……壊れたああああ!?

「うっそ!?」

八ツ目の攻撃をもう一回受け流した瞬間であった、盾が把手の部分から真っ二つに折れたのである。

慌てて八ツ目と距離を取る俺。
このタイミングで壊れるとか本当ついてないな!?


「何とか蔦で絡め取るっきゃない……」

盾がダメになったので相手の攻撃を防ぐには躱すか、蔦で受け止め……たら斬れるので。蔦で相手の腕を絡め取って止めるっきゃない。

とりあえず避けるのに専念して隙を見て蔦を絡ませよう。

「うっし」

盾が壊れたのをみてチャンスと焦ったのだろう。八ツ目の攻撃は大分大振りになっていて、避けるのにはさほど苦労はしなかった。

そしてその分蔦を絡ませることに集中出切るようになるわけで。
何度かの攻防の末、俺は八ツ目が剣をもつ腕へと蔦を絡ませることに成功していた。

「いっただき――んがっ!?」

やったぜ。と思って残りの手足も封じようかと蔦をさらに追加で伸ばしていく……その瞬間、体に痛みが走ったのである。

「くっそ、こいつ蔦を……!」

痛みが走った方へと視線を向ければ、八ツ目が器用にも手首だけで剣を振るって俺の蔦へと斬りつけていたのだ。
蔦の力が弱くなっていて完全に押さえることが出来ていなかったらしい。


力が加わりピンと張り詰めていた蔦はそれだけで何本か切れてしまっていた。
そしてさらに押さえつける力が弱くなり、まんまと八ツ目は蔦から逃げだしてしまったのである。

補給出来ていれば蔦を絡めた瞬間締め上げて武器を手放せることだって出来ただろうに。

補給出来ないのが本当に痛い。
このさい土じゃなくても良い、どこかで養分というか生命力吸えたら……。

……

…………

………………生命力?

「……あ」

そうか、そうだよ。
別に土じゃなくていい。生命力が吸えりゃ何でもいいんだ。
目の前の八ツ目はモンスターと言えども生命には変わりは無いだろう。
だったらこいつから吸えばいい。


どこから吸うか?
さっきカウンターで放った一撃で傷をつけた箇所、あそこに根を刺せば良い。

そこらに八ツ目に死体が転がってはいるけど、なんとなく死体からは吸えない気がする。
生命力ってことはたぶん生きてないとダメな気がするのだ。
後で検証が必要だけど、今やる余裕はあまりない。

余裕といえば補正もかなり下がってきているので長期戦になればなるほどこっちが不利になっていく。
なので決めるなら一気に決めるっきゃない。

出し惜しみは無しで行こう。


武器を構えて前傾姿勢になる。
何時でも飛びかかれるように準備をして隙を窺うが、八ツ目も油断なくこちらを見ていて隙が無い。

どうも武器よりも蔦を驚異と捉えているようで、武器の動きよりも俺の手足の方を警戒しているように見える。

まあ、隙が無かったらし作るしかないよね。


ぐっと身を沈め、八ツ目に飛び掛かろうとしたその瞬間。
八ツ目の足元から爆ぜるように根っこが飛び出てくる。

石板の隙間を通してこっそり奴の足元に移動しておいたのである。

俺は一拍置いて八ツ目に飛び掛かった。
その瞬間、根っこが千切れ足に痛みを感じるが無視をする。
くると分かっていれば我慢出来ないことはないのだ。


そして突如現れた大量の根に八ツ目は半ば反射的に武器を振るってしまう。

「……掛かったあぁ!」

根っこはあっさりと断ち切られ、俺の体に痛みが……走ることはない、既に体から切り離した後だからだ。

あんな生っちょろい根っこで八ツ目の動きを止められる訳が無い。あれはただの囮なのだ。

「今度こそ頂きー!!」

両手で武器を持つ腕を押さえ、残りは蔦で雁字搦めにする。
盛大に暴れる八ツ目であったが、しっかり押さえているのですぐに抜けるのは不可能だ。そして抜ける時間を与えるつもりも無い。

俺は八ツ目の傷目がけて根っこを突き刺したのである。


「おっほぁ」

吸い始めた途端に全身に力が満ちてくる。
八ツ目は体内を根っこが這い回る痛みと命を吸われていると言う事実に叫び、より激しく暴れ回った。


「悪いけどこうなったらもう負けないんだわ」

だが、八ツ目の手足が俺の拘束から抜け出す事は無かった。
むしろほとんど動かせて無いと言って良い。

命を吸ったことで俺の補正が上がり、逆に八ツ目の力は落ちてしまったのだ。
力関係はすでに逆転しているのである。

……どうでもいいけどこれ、絵面が最悪だよね。
蔦×オーガとか誰得。



本当にどうでも良かった。
それよりも戦闘の続きである……俺は両手の代わりに蔦で八ツ目の腕を押さえつけると、転がっていた金棒を拾い上げた。

そして両手で金棒を持つと大きく振りかぶり、八ツ目の頭部へと叩きつけた。




「……っくはー! つっかれたあああぁぁ……」

八ツ目が動かなくなったのは確認して、地面に転がるように倒れ込む俺。
はたから見るとどうかは分からないけど、かなりの苦戦だった。
正直かなりやばいと思ってたし、必死だった……なので体の疲労はかなりのものである。吸って回復しちゃったけどね!

しかし、結局タマさんこなかったなー……と考えたときであった。

「お疲れニャ」

「おわぁっ!?」

ふいに背後から声が掛かり、俺は思わず叫んでしまう。

振り返ればそこに居たのはタマさんであった。

「い、何時からいたの!??」

「ニャ? ずっと居たニャ。ちゃんと返事してたニャー」

「まじかい……あれそうだったんだ」

ええと……タマさんを呼んだ時に小さく聞こえた鳴き声、あれがそうだったんだろう。
小さかったから距離があると思ったけど、単に小さく鳴いただけだったと、ピンチだったのだから助けてくれても良いのにぃ……なんか急にがくっと疲れが。

「でもよくやったニャ。 装備持ちを2体……それにその能力かなり使えるニャ」

落ち込む俺にタマさんがぽむと肉球を押し付けてくる。
ふん、そんなんじゃ騙されないからね!両足でお願いします!!


ふぅ……。
あ、この能力やっぱ使えるよね?
てか対生物に関しては反則みたいなもんだと思うんだ。

「ありがとー。 うん、使えるよねこれ、戦闘中に吸えばこっちは回復して相手にはダメージ入るし」

回復と同時に相手にダメージ+デバフってことだもんね。
よほど格上か、全身ガッチガチの相手じゃなきゃ勝てちゃうと思うんだ。


「果物食べ放題ニャ」

ぶれないね、タマさん。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

処理中です...