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森の賢人
「91話」
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一方、指導者を担当するゴリさんパーティであったが、ウッドが開幕いきなりピンチになっていたこと、それに近寄らなければ指導者達が攻撃してこなかった事もあり、ウッドの戦いの様子をじっと眺めていた。
場面がウッドが吹き飛ばされた腕を再生、鉄竜の背をとったところでゴリアテはふぅ……と眉間を抑え息を吐く。
「……あっちは何とかなりそうだな」
軽く首を振り、顔を上げてそう口にするゴリアテ。
腕が生えたり、種を飛ばしたり……何より腕が生えたのはいったいどういう事なんだと疑問が浮かぶが、ゴリアテはそれらをとりあえず見なかったことにしたようだ。
「腕っ、生えたんだけどー! ウッド君てば本当面白いねー」
「生えるなら思い切った行動も出来るし、便利だよなあの体」
「あの腕を植えたらどうなるのかしらねえ……」
「……」
が、パーティメンバーはそうじゃなかったらしい。
再び眉間を抑えるゴリアテ、今後は深く深く息を吐く。
「あー……よし! やるぞ」
気持ちを切り替え前方にいる指導者とその取り巻きへと意識を集中する。
指導者と取り巻きはじっと動くことなくゴリアテ達を見つめている。
連中の習性なのだろうか、何にせよゴリアテ達にとってはありがたい事である。
遠くから観察し、作戦を立てることが出来るのだから。
「最初はどうする?」
前方を見つめるゴリアテに対しそうたずねるベルトラム。
ゴリアテは少し考え、ベルトラムに答える。
「タマさんが派手にぶちかましたからな、俺らも負ける訳にはいかん……初手は魔法でいく。 一番強力なやつな」
ゴリアテの言葉に全員が頷く。
彼らは皆、魔法を使用出来るのである。
最も魔法主体のマリーと比べると使える魔法の種類、威力、精度どれもが劣るが……レベル補正によって威力はそれなりにでる。
大き目の魔法を使えば、指導者とゴリアテ達の間に居る雑魚敵はもちろんのこと、上手くいけば指導者やその取り巻きにもダメージが期待出来る。
「魔法を放ったら突っ込むが……マリーは水か氷で広範囲の魔法を追加で一発撃ってくれ、たぶん熱くてまともに進めないだろう」
マリーと違い、ゴリアテ達は使える魔法のいわゆる属性が偏っているようだ。
恐らくは火や、爆発など熱を発するものが主体なのだろう。
各自が詠唱を開始し……ゴリアテが手を上げ、下す。
その瞬間、彼らと指導者との間に閃光、爆発、炎が上がり、やがてそれは大きな火の渦となりモンスターを飲み込んでいく。
「よっし、突撃!」
マリーが前方に魔法を放つと赤熱した大地が音を立て冷やされていく。
前方に居た敵は見える限り皆黒焦げとなっており、指導者への道を邪魔する者はもう居ないだろう。
4人は一斉に駆け出した。
火の渦を追うように指導者との距離を詰めていくが、爆音がしたかと思うと渦がかき消すように散らされてしまう。
「っち、やっぱほとんどダメージ入ってないな」
吐き捨てるようにそう口にするゴリアテ。
渦が晴れた先には指導者やその取り巻きが居るがまったくの無傷である。
「障壁みたいのあるねー。 あれ指導者のかなー?」
「まあそうだろうな」
指導者と取り巻きの前にうっすらと壁のようなものが透けて見える。
恐らくは指導者が出したものであり、ゴリアテ達の魔法を防ぐために展開したのだろう……ただ、指導者の推奨レベルは75、それに対しゴリアテ達のレベルは補正込みで80程である。
障壁を出したとしてもそれ単体では魔法を防ぎ切る事は出来なかったであろう。
単体ならば。
「竜が4体も……」
ゴリアテ達が攻めるまで伏せてでも居たのだろうか? いつの間にか指導者の周りには4体の竜が存在していた。
その内の1体はゴリアテをアフロにした鉄竜である。
同一個体では無いだろうが、アフロにされた恨みがあるのだろう、ゴリアテは鉄竜を完全にロックオンしたようだ。
「今なら一人一体いけるだろ……指導者が何もしなければ、だがな」
ダンジョンであった時と違い、今なら一人一体相手にすることは出来る。
ただ問題は指導者である。
「……まあ無いな」
竜と1対1で戦っているのを黙って見ていてくれる。そんな都合の良い事はまず起こらないだろう。
レベル的にはゴリアテ達が有利だが数的には4対5と不利である。
「あれが指導者か」
近づくにつれて指導者の姿がはっきりと見えてくる。
遠目からは人型である、ぐらいにしか分からなかったがその異形が徐々に明らかになる。
「頭から……なんだありゃ? 触手か?」
胴体に手と足がついている、そこまでは普通に人型であった。
ただ、頭から4本の触手が伸びているその姿は否が応でもそいつがモンスターであり、自分たちとは相容れぬ存在あると言っていた。
「ウッド君とキャラ被ってるじゃーん」
「…………いや、あれを被ってると言うのはさすがに……いや、割と被ってるか」
カールの言葉を否定しようと思ったゴリアテであるが、ああ言った人型でしかも触手を出すやつなんてこの辺りではウッドぐらいしか居ないと思い当たる。
そうこうしてる間にも敵はもう目の前まで迫っていた。
竜は時折ブレスを吐いてはいたが、魔法で散らされるなり避けられるなりして足止めにもなっていない。
(直接こっちを狙ってくる訳じゃないか……どうするつもりだ?)
走りながらも考え続けるゴリアテ。
何故かは知らないが指導者はゴリアテらが迫っているにも関わらず、直接手を出そうとはしない。
考えていても答えはでない、そう判断したゴリアテはまずは目の前の取り巻き連中に集中する事にした。
「っふ!」
鉄竜の前腕を掻い潜り、すれ違いざまに切りつける。
恐ろしく堅い鱗で覆われた前腕がバターのように切り裂かれる。
レベルによる補正の差はやはり大きい。 ……だが。
「再生した!? ……指導者か」
完全に切断したはずの前腕が突如として復活する。
一体何があったのかと周囲に注意を向けると、指導者がその触手に口を生み出し何やら詠唱をしているのがゴリアテの視界に入る。
指導者はさらに全ての触手にも口を生み出し、それぞれの竜を回復し始めるのであった。
場面がウッドが吹き飛ばされた腕を再生、鉄竜の背をとったところでゴリアテはふぅ……と眉間を抑え息を吐く。
「……あっちは何とかなりそうだな」
軽く首を振り、顔を上げてそう口にするゴリアテ。
腕が生えたり、種を飛ばしたり……何より腕が生えたのはいったいどういう事なんだと疑問が浮かぶが、ゴリアテはそれらをとりあえず見なかったことにしたようだ。
「腕っ、生えたんだけどー! ウッド君てば本当面白いねー」
「生えるなら思い切った行動も出来るし、便利だよなあの体」
「あの腕を植えたらどうなるのかしらねえ……」
「……」
が、パーティメンバーはそうじゃなかったらしい。
再び眉間を抑えるゴリアテ、今後は深く深く息を吐く。
「あー……よし! やるぞ」
気持ちを切り替え前方にいる指導者とその取り巻きへと意識を集中する。
指導者と取り巻きはじっと動くことなくゴリアテ達を見つめている。
連中の習性なのだろうか、何にせよゴリアテ達にとってはありがたい事である。
遠くから観察し、作戦を立てることが出来るのだから。
「最初はどうする?」
前方を見つめるゴリアテに対しそうたずねるベルトラム。
ゴリアテは少し考え、ベルトラムに答える。
「タマさんが派手にぶちかましたからな、俺らも負ける訳にはいかん……初手は魔法でいく。 一番強力なやつな」
ゴリアテの言葉に全員が頷く。
彼らは皆、魔法を使用出来るのである。
最も魔法主体のマリーと比べると使える魔法の種類、威力、精度どれもが劣るが……レベル補正によって威力はそれなりにでる。
大き目の魔法を使えば、指導者とゴリアテ達の間に居る雑魚敵はもちろんのこと、上手くいけば指導者やその取り巻きにもダメージが期待出来る。
「魔法を放ったら突っ込むが……マリーは水か氷で広範囲の魔法を追加で一発撃ってくれ、たぶん熱くてまともに進めないだろう」
マリーと違い、ゴリアテ達は使える魔法のいわゆる属性が偏っているようだ。
恐らくは火や、爆発など熱を発するものが主体なのだろう。
各自が詠唱を開始し……ゴリアテが手を上げ、下す。
その瞬間、彼らと指導者との間に閃光、爆発、炎が上がり、やがてそれは大きな火の渦となりモンスターを飲み込んでいく。
「よっし、突撃!」
マリーが前方に魔法を放つと赤熱した大地が音を立て冷やされていく。
前方に居た敵は見える限り皆黒焦げとなっており、指導者への道を邪魔する者はもう居ないだろう。
4人は一斉に駆け出した。
火の渦を追うように指導者との距離を詰めていくが、爆音がしたかと思うと渦がかき消すように散らされてしまう。
「っち、やっぱほとんどダメージ入ってないな」
吐き捨てるようにそう口にするゴリアテ。
渦が晴れた先には指導者やその取り巻きが居るがまったくの無傷である。
「障壁みたいのあるねー。 あれ指導者のかなー?」
「まあそうだろうな」
指導者と取り巻きの前にうっすらと壁のようなものが透けて見える。
恐らくは指導者が出したものであり、ゴリアテ達の魔法を防ぐために展開したのだろう……ただ、指導者の推奨レベルは75、それに対しゴリアテ達のレベルは補正込みで80程である。
障壁を出したとしてもそれ単体では魔法を防ぎ切る事は出来なかったであろう。
単体ならば。
「竜が4体も……」
ゴリアテ達が攻めるまで伏せてでも居たのだろうか? いつの間にか指導者の周りには4体の竜が存在していた。
その内の1体はゴリアテをアフロにした鉄竜である。
同一個体では無いだろうが、アフロにされた恨みがあるのだろう、ゴリアテは鉄竜を完全にロックオンしたようだ。
「今なら一人一体いけるだろ……指導者が何もしなければ、だがな」
ダンジョンであった時と違い、今なら一人一体相手にすることは出来る。
ただ問題は指導者である。
「……まあ無いな」
竜と1対1で戦っているのを黙って見ていてくれる。そんな都合の良い事はまず起こらないだろう。
レベル的にはゴリアテ達が有利だが数的には4対5と不利である。
「あれが指導者か」
近づくにつれて指導者の姿がはっきりと見えてくる。
遠目からは人型である、ぐらいにしか分からなかったがその異形が徐々に明らかになる。
「頭から……なんだありゃ? 触手か?」
胴体に手と足がついている、そこまでは普通に人型であった。
ただ、頭から4本の触手が伸びているその姿は否が応でもそいつがモンスターであり、自分たちとは相容れぬ存在あると言っていた。
「ウッド君とキャラ被ってるじゃーん」
「…………いや、あれを被ってると言うのはさすがに……いや、割と被ってるか」
カールの言葉を否定しようと思ったゴリアテであるが、ああ言った人型でしかも触手を出すやつなんてこの辺りではウッドぐらいしか居ないと思い当たる。
そうこうしてる間にも敵はもう目の前まで迫っていた。
竜は時折ブレスを吐いてはいたが、魔法で散らされるなり避けられるなりして足止めにもなっていない。
(直接こっちを狙ってくる訳じゃないか……どうするつもりだ?)
走りながらも考え続けるゴリアテ。
何故かは知らないが指導者はゴリアテらが迫っているにも関わらず、直接手を出そうとはしない。
考えていても答えはでない、そう判断したゴリアテはまずは目の前の取り巻き連中に集中する事にした。
「っふ!」
鉄竜の前腕を掻い潜り、すれ違いざまに切りつける。
恐ろしく堅い鱗で覆われた前腕がバターのように切り裂かれる。
レベルによる補正の差はやはり大きい。 ……だが。
「再生した!? ……指導者か」
完全に切断したはずの前腕が突如として復活する。
一体何があったのかと周囲に注意を向けると、指導者がその触手に口を生み出し何やら詠唱をしているのがゴリアテの視界に入る。
指導者はさらに全ての触手にも口を生み出し、それぞれの竜を回復し始めるのであった。
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