家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
10 / 304

「10話」

しおりを挟む
あれから2週間が経った。
俺とクロの探索は順調で既にマップの半分が埋まっている状態だ。
……いや、この場合はまだって言った方がいいのかな? 1階の時は半分埋めるのに確か1日ぐらいしか掛かってないんだよね。 それから比べると大分遅れていると言っても良いだろう……まあ原因は分かっているんだけどー。


「……ネズミがウサギになったら難易度上がったなあ」

単純に敵が強くなったからなのだ。
ウサギの行動パターンは近付いて噛みつくか、飛び跳ねて蹴るかの2択なんだけど、選択肢が一つ増えただけでこれが結構大変なのだ。

ネズミはひたすら噛みつくだけだったから対処は楽だったんだけど……いや、楽すぎるぐらいだったんだけどさ。
ウサギの場合は下手すると避けられた上に蹴られるからねえ……どうしても慎重になっちゃうのだ。

んで、慎重になるって事はつまり倒すのに時間が掛かるってことで、1匹だけじゃなく2匹3匹と同時に相手しなくちゃいけなくなるって事なのだ。

クロはウサギよりも大分素早いからヒットアンドアウェイな感じで問題なく戦えてるんだよね、数がもっと増えてもたぶん問題ないと思う。

俺も一応3匹同時ぐらいなら問題は無いのだけど、これがもう1匹増えると被弾が多くなる。まじ痛い。
俺はクロみたいに小回り効かないからヒットアンドアウェイも出来ないしねー。 そんな訳でまだ小部屋の大半を攻略出来ないでいたのだ。


「ごり押し出来なくはないんだけどね」

ポーション頼みでダメージ無視してごり押しでも行けなくはないんだけど、それは最終手段だからなー……あ、そうそうポーションだけどね、大体週に10個ぐらいのペースで手に入ってたりするよ。 そろそろ30個ぐらいたまるのかな? 何個か使ってはいるけれど、たまるペースの方が早いね。

たまったポーションをどうするかは一応考えてはあるのだけど、実際にどうにかするのは高校卒業して……もっと攻略が進んでからか、それかここ以外にもダンジョンの存在が確認されたらかな? ここだけにしか無い可能性だってあるけど、その逆もありえるんだよね。 他にもダンジョンがあるのであればポーションを表に出しても目立ちにくいんじゃないかなーって思ってる。
とりあえずそれまでにもっと在庫増やして、出来れば他のお宝も手に入れたいところだ。 いや、ほんとまじでそろそろ他のお宝が欲しい。


……ま、それは置いといて攻略の方を進めないと。
先に進めば他のお宝が出るかも知れないし……とは言っても急いで進めるのは難しい……。

「次は何が来るか分からないし……やっぱ部屋にいる連中を無傷で倒せるぐらいじゃないと次の階に行くの危ないかな」

ウサギと初めて戦った時、俺とクロの戦闘能力?はもうネズミなら何匹でも余裕ですー、みたいな状態だった。
それでもウサギに良いの一発貰っちゃった訳で。次の階層行くときには少なくともウサギなら何匹でも余裕だーって状態にしておかないと危ないと思う。

そこまで強くなるには結構な数のウサギを倒さないとダメだ。ネズミは1000まで行かなくてもそれに近い数は倒していたはずだからね、ウサギもそれぐらいは倒さないと……多いなっ。

「あと半分ぐらいかなー……」

多いけどやらねば、やらずに突っ込めばボコボコにされるのが落ちだろうし。
もう500は倒したし、とりあえず土日は午前と午後フルで戦って、平日は暇な日だけ……ん?

「どうしたのクロ?」

俺が考え事しながら歩いていると、クロが前足で俺の足をタシタシっと叩いたのだ。
振り返ってクロを見ると……クロはどこかむすっとした感じの目で俺をじーっと見ていた。

……この感じは。


クロの様子にはっとした俺は慌ててスマホの時計を見る。
時刻は11時をとうに過ぎていた。

「あ、そっかもうこんな時間なのね。クロありがと、一度戻ろうか」

クロのあれはようはお腹空いたぞって事だ。
俺はちょっと駆け足で1階の休憩所へと向かうのであった。



「それ新商品だから買ってみたんだけど……美味しい?」

そうクロに尋ねると、クロはうにゃうにゃと返事を返してくれた。
どうやら美味しかったようだ。 いつもの缶詰より食いつきが良いし、次からはこれを多めに買っておこうかな。

「お昼どうしようかなー」

クロのご飯は用意したけれど俺のがまだなのだ。
ダンジョン潜っているときはそうでもなかったけれど、地上に戻ってきたら段々お腹が空いてきちゃってねー。

お肉は夜使う予定だし……冷凍うどんでもチンして食べるか?いやそれとも……と俺がお昼のメニューをどうするかで頭を悩ましていると、玄関のチャイムが不意に鳴らされる。

「誰だろ?」

首を傾げ玄関へと向かう俺。
基本的に我が家を訪ねてくる人は限られている、集金の人だったり、怪しい勧誘だったり、あと近所に住んでるじいちゃんばあちゃん。友人は来る前にスマホに連絡来るのでたぶん違う。

集金は今月はもう来ているので、となると……怪しい勧誘だったら居ない振りしよう。

「……」

そろーっと足音を殺してドアののぞき窓から外を見ると……そこには見慣れた顔があった。

「あ、じいちゃん。 待ってね今開けるから」

「おーう」

じいちゃんだった。
ばあちゃん一緒じゃないけど、どうしたのかなー?
とりあえず玄関開けてっと。

「ほれ、土産だ」

「おー、野菜だ! ありがとうじいちゃん……あれ、これ今って時期だっけ?」

「そりゃハウスのだからの」

「あ、なるほど」

じいちゃんは玄関に入るとほい、と野菜がみっちり詰まったビニール袋を渡してくる。

じいちゃんは農家をやっているので時々こうやって採れたての野菜をお裾分けしてくれるのだ。
それは両親が亡くなる前からもだったけど、亡くなってからは残った俺を心配してより頻繁に顔を見に来てくれてる。

あ、ちなみに母方のじいちゃんばあちゃんね。
父方のじいちゃんばあちゃんは海で漁師をやっているのだけれど、ちょっと距離が遠いので頻繁に来るのは難しい。
それでも年に何度か会いに行ったり、来たりしてるよ。
じいちゃんばあちゃんもだけど従兄弟とかも含めて親戚付き合いは結構有る方だと思う。

「康平、もう昼は食ったか?」

「いや、これから作るところー」

野菜貰っちゃったし、野菜炒めとラーメンとか良いかも。
じいちゃんとばあちゃんの分も一緒に……ん、もう食べたかって聞いたってことはー。

「丁度ええわ。 ばあさんがスーパーで何か買ってくるそうでな、一緒に食うとええ」

「やった、ありがとー!」

あ、やっぱりばあちゃんが何か買いに行ってたのね。
俺の家からスーパーまで100mもないし、たぶん途中でばあちゃんと別れてじいちゃんだけ先に来たのだろう。

「お、チャイムが」

「ばあさんだろう」

噂をすれば何とやら。
玄関のチャイムがなったのでじいちゃん置いて出迎えに行く俺とクロ。……クロ?


「よっ……こいせ。 ついたついた」

「ばあちゃん、いっぱい買ったねー」

ばあちゃんまた大量に買い込んで……ってこれはっ。

「重かったでしょって寿司だー!」

寿司だ!

「康平、お寿司好きだったでしょ? いっぱい買ってきたからたんとお食べ」


やったぜ、ばあちゃん大好き。
寿司は焼肉と並んで好きな食べ物トップである。
久しぶりのお寿司に思わず小躍りしちゃうぞ。


……なんでクロも?って思ったらクロ、寿司に反応したのか。
部屋に戻ったらじいちゃんが少し寂しそうにしてたけど、寿司の後をついて行くクロを見てニコニコしていたのでたぶん大丈夫。



「はい、お茶おかわり」

「おお、すまんなあ」

「ありがとねえ」

久しぶりのお寿司は美味しゅう御座いました。

クロはもうご飯食べた後だったので、マグロを一切れだけあげといた。
今も食卓の端っこに置いた切り身をちょいちょい……とつついて前足をぺろぺろしてる。

……なんかね、お刺身系はすごい欲しがるのに直接あげたり餌用の皿にいれても食べないんだよね。
食卓の端っこに置いたやつを少しずつ動かして、落ちるとぱくって食べるの。ほんと謎である。


「康平はそろそろ卒業だったか?」

お茶をずずずっと飲み、じいちゃんがそうたずねてくる。

「うん、来月だね。 授業は今月半ばまでだったかな?」

俺は湯呑みを置いてちらっと壁に掛けたカレンダーを確認し、そう答える。
卒業式までもう一月を切っていた。

「そうかそうかもう卒業か……早いもんだの」

「本当ねえ……」

俺を見てそうシミジミといった感じで話すじいちゃんと、それに相槌を打つばあちゃん。

いや、本当にいざ卒業するとなるとねー3年間あっと言う間だよ。 色々あった……し……危ない、思考が暗い方向に行きかけた。

「就職は決まったのか?」

「んー、一応は考えてるけどまだなんだ」

本当は3年上がってすぐ決まっていたんだけど……事故の後に辞退した。ちょっとあの当時の精神状態じゃ仕事は無理だと思ったから。
会社の就職担当さんは落ち着いたら来ると良いと言ってくれたけど……ダンジョンあるしたぶん、行かないと思う。ごめんなさい。


「そうかそうか。 まあ。焦らんでええ……いざとなったら畑継いでも良いでな」

「いざって時はお願いね」

畑を継いでも良いと言うじいちゃんにそう笑って答える。
……継ぐかどうかは別として手伝ったりはしようかなーと思っていたりする。
いつもお野菜貰ってばかりで悪いしね。 それにじいちゃん結構な年だし、この間腰が痛くてー……とか言ってたから、俺でも重い物持ったり手伝える事は有るだろうし。

……いや、腰が痛いならポーションを? 身内とは言えさすがに不味いかな……ポーションはもう少し落ち着いたらにしよう。 あ、そういやウサギはどうなんだろ、じいちゃん熊肉とか食ってたしウサギもいけちゃうのかな?

「そうだ、じいちゃん」

「ん?」

「ウサギって食べたことある?」

聞いてみよう。

「あるぞ、割とうまかったが……食いたいのか?」

「ウサギなんて売ってたかしらねえ」

やっぱ食ったことあるんかいっ。
てかうっかり俺が食うことになりそうな流れになってるし!

「あ、いやいや! そういう訳じゃないから大丈夫!」

慌てて首振って否定しておいた。
俺の慌てた態度にちょっと首を傾げていたけれど……それ以上の追求はなかった。危ない危ない。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...