家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「29話」

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クロがアマツから貰ったカードはウサギ2種だ。
さらに俺から犬とネズミ、それにゴブリンのカードも渡してあるので、クロの手元には今入手できるカードが全部揃っている。

「クロ、さっき渡したカードから好きなの選んでセットしてね」

そうクロに告げると、クロは端末を前足でたしたしと操作する。
ぱっと見た感じ俺と同じウサギのカードを選んでいたようだった。

あ、ちなみにゴブリンはレベル1のカードだったよ。
俺とクロもレベル10を越えているので、レベル2のスロットが空いているのだけど……これ使うのは何時になるんだろうな。


何て考えている間にクロの操作が終わっていた。
次は装備の改造かな、俺はポイント余りないけど、クロなら何回か出来るだろう。

「改造もしちゃおうか。 ……ああ、1回500ポイント掛かるのね、残りポイント見つつ好きなの選ぶと良いよ」

改造は1回500ポイントと……俺も3回ぐらいならいけるかな。
クロの装備でポイント使いまくったけれど、0になった訳ではないのだ。


「武器は強度アップして、防具はサイズ変更かな?」

クロの端末を眺めていると、どうやら武器の改造メインで行くようだ。
防具に関してはサイズ変更のみっぽい。

「うおっ!? なんか出て来たぞ」

クロが操作を続けていると、急にクロの目の前にホログラム?が現れた。

「ほー、こうやってやるんだねえ」

ホログラムに映っているのはクロそのものであり、どうやら改造後の内容を目で見て確認出来るようになっているらしい。

うっかりデカくし過ぎた! とかを防げそうなので便利な機能だなーと思う。


「俺はー……手袋とプロテクターの修復と、鉈の重量アップかなー」

改造もしたいけれど修理もしたい。
改造も修理もどちら共に使用するポイントは同じだったので、俺は悩んだ末にダメージの酷い防具二つの修復と、武器の改造を1回だけすることにした。

身体能力上がったお陰で鉈がすっごい軽いんだよね。
ただちょっと軽すぎる感じなので重量を上げたい。 軽すぎて金属と言うか木製の鉈を振るってる気分になるんだよねー。

重量上げれば威力も上がるだろうし、結構良い選択だと思うよ?

「すっご、まじで傷が消えたぞ……鉈もそこそこ重くなってる。 ……肉厚変わった?」

ちなみに修復の場合は選択すると空中に金属製の台が出現するので、その上に装備を乗せると自動で修復してくれたりする。
手袋もプロテクターも2つセットで1つの防具として認識してくれているらしく、そこは有難かった。

鉈に関しては重量どうやって上げるのかと思っていたら、まさかの肉厚厚くするという方法で重量を上げてきた。

てっきり材質が変わったりするのかなー? とか思っていたのでちょっとビックリしたけれど、まあ普通はそうだよね、重量を上げたいならかさ増しするよね。

まあ、肉厚が厚くなったぶん丈夫にもなっているだろうし問題なしだ。



そうして装備を調えた俺とクロはゲートをくぐり抜け5階へと向かう。

そのまましばらく狩りを続けていたのだけど、正直楽勝過ぎて……と言うわけでクロに扉の先を覗いてみるかと話を持ちかけてみる。

「もうすぐ昼か……実は扉の先まだ見てないんだよね。覗いてみる?」

クロの返事はにゃーんっと嬉しそうな返事であった。
元気有り余っていてゴブリンだけだと物足りなかったんだろうね。

もうすぐお昼だし、扉の先の奴を倒すかどうかは別にして覗いてから帰ろうと思う。



扉の先を覗くのは結構ドキドキする。
何せ未知の敵がこの先待ち構えて居るわけだからね。

さて、この先には何がいるのかな?

「何が出るか……な?」

ドキドキしながら中を覗いた訳だけど、中に居た者達をみた瞬間ドキッと心臓が跳ね上がる。

別に中に居た奴がやべー敵とかそう言うわけじゃない。
中に居たのは装備がちょっと良くなっただけのゴブリンだ。


じゃあ、何に驚いたのかと言うと……覗いた瞬間ゴブリンと目が合ったんだ。


「…………え、なんでこっち見てた??」

今までの敵は覗いただけではこちらに気が付くことは無かった。
必ず部屋に踏み入ってからこちらに気が付いていた。

だからこそ部屋に入る前に助走を付けて、不意打ち気味に奇襲したりとか出来たんだけど……。

「不意打ちできないじゃん、まじかよ。 チュートリアル突破したからかー?」

こう最初から気付かれていては不意打ちは絶対無理だ。

チュートリアル突破したからかーと思わず口に出たが、よく考えるとそれは違う。
なにせこの扉の向こうに居る奴以外は、チュートリアル突破後も部屋に踏み入るまで気付いてなかったし。

「んー……戻って作戦でもって、クロやる気満々だね」

一度戻って作戦考えるかと思ったけれど、クロは相変わらずやるきだった。
お尻ふりふりして今にも飛び掛かりそうである。


まあ、作戦考えてもろくなの思いつかない気がするし、行っちゃうか。

「……いくか、クロは右の奴をお願い。俺は左の奴とやるね」

相手は2匹のゴブリンだ。
ただし今までのゴブリンと違って装備がいい。

恐らく皮鎧だと思うが、黒っぽい艶のある鎧を身に纏っている。腕と臑にも同じように革製と思しき防具がついている。
さらには丸形の盾と、ヌメッと切れ味の良さそうな大振りのナイフを手に持っている。


まあ、こちらの装備だって負けていない。
1対1であれば負けることは無いだろう。勿論油断は絶対しない。



「1、2の3!」

合図と共に俺とクロは部屋に踏み入り、そして左右に別れる。

ゴブリンも二手に別れ俺とクロにそれぞれ向かってくる、俺とクロはお互い距離を取り、1対1の状況で各個撃破を……と思っていたのだけどそうはならなかった。

「! ……こいつら」

ゴブリンは俺とクロを追うことはせず、互いに背中合わせの状態で盾を構え、じっとこちらを見つめていた。


こう待ち構えられると正直やりにくい。
ああも盾を構えられていると攻撃する場所も限られるし、出来たとしても盾を動かして防がれるかも知れない。

こいつらの狙いはカウンターだろうか? それとも……いや、考えても仕方ない。何を考えているかなんて読めるもんじゃない。


俺は意を決して一気に距離を詰めると同時に、ゴブリンに向かい鉈を思いっきり叩きつけた。

盾を構えるならそのまま叩き潰してやろうという考えだ。 ……ちょっと思考が蛮族染みてきたかも知れない。

「っふ!」

俺の目論見は半ば成功していた。
盾を構えたゴブリンの腕から鈍い音がし、腕が拉げる。
さらには鉈は盾を切り裂き、ゴブリンの肩にも浅いが傷を負わせていた。

「うぉっ」

ただゴブリンはそれで戦闘能力を失った訳では無かった、鉈を振り下ろし伸びきった腕に向かい、ヌメッとした光が伸びてくる。
俺は咄嗟に距離を取った。



が、痛みが腕に走る。 
ゴブリンのナイフは俺の腕を掠めていた。

ただし血は出ていない。どうやら防具を突破できるだけの威力は無いようだ。


「よっと!」

ゴブリンは少し距離を取った俺に向かい、さらにナイフを突き出してきた。

俺は盾を持つ腕をしならせ、はじき飛ばすようナイフの一撃を防いだ。

体勢を崩したゴブリンに向かい鉈を突き立てるが、首を狙った一撃はネックガードに阻まれ、ぎりぎり致命傷には至っていなかった。

俺はさらに鉈を跳ね上げるように振るい、ゴブリンの顔を引き裂いた。

その一撃は骨を断ち、脳まで達したようだ。
後ろにバタリと倒れるゴブリンを見て、俺は大きく息を吐いた。


「すごく強いってわけじゃないけど面倒になった……」

それがこのゴブリンと戦った俺の感想である。


そしてクロの方はどうなったかと言うと。

「うわぁ、ズタズタだ」

ゴブリンの足はぐちゃりと両足共に潰され、上半身はズタズタに切り裂かれていた。

向かい合わせで戦っていたのでよく分かったが、クロのあの不可視の攻撃は中々に反則だと思う。

見えないから初見だと避けようがないだろう。

現にゴブリンはクロの最初の噛み付きをまったく避けること無く、その身に受けていた。

そして足がやられ倒れたところに、猫パンチが連打で入った。

ただの猫パンチならご褒美だけど、生憎とクロの猫パンチはおまけで不可視の爪がついてくる。

あっと言う間にミンチの出来上がりだ。
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