家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「43話」

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「はい、調整完了。 これでクロも使えるようになったよ」

作業にしてほんの数秒だろうか、アマツはあっと言う間にクロでもスキルが使えるように調整を済ませる。


「ありがとうございます」

「いやなに、これはこちらのミスだからね! まだまだ調整するところはあるからね、気が付いたら遠慮せず言ってくれたまえっ」


そう笑顔で話すアマツの両頬にはクロの足跡がついている。

クロがアマツの顔面にドロップキックした時は、良くやった! と思ったけれど冷静に考えると結構やばいことしてたんだよな。

アマツがその辺のこと一切気にしないタイプでよかった……むしろ頬を触って嬉しそうにしているし、動物好きなのかもね。


その後でクロもスキルを試して見たのだけど、俺とはちょっと違う感じだった。

俺の場合は円錐状の……たぶんあれ、脚だと思うんだけど、それが1本出るだけだった。

それに対してクロの場合は小さめの円錐が2本出た。
あれはたぶん牙だと思う。

俺の場合は土蜘蛛の脚が、クロの場合は首輪につけたもんで牙が出るようになったんじゃないかと思う。


……それとこれは予想なんだけど、この土蜘蛛ってたぶんダンジョンの下層に実在するんじゃないかな? ここのダンジョンに居るかは分からないけれど……あの威力見た後だと絶対戦いたくない相手だ。

そもそも虫って時点でアウトである。
……アマツにも言っておこうか。虫を出すと潜る人減るかもよって。



その日はスキルを何度か試し、お開きとなった。

ちなみにアマツについた足跡だけど、1週間ぐらい消えなかったとだけ言っておこう。

治すの忘れていたのか、それともわざと残したか……たぶん後者だろう。
気持ちは分からなくも無い。






美味しくても、同じ物が続くとさすがに飽きてくるよね。

「さすがに毎日牛肉だと飽きちゃうよね」

狩りに行く度にお肉が手に入るのもんで、毎日牛肉食べまくってるんだよね。
マーシーに頼んで日替わりで色々食べているけど、さすがに牛肉そのものに飽きが来てしまったのだ。


じいちゃんばあちゃんにお裾分けするにも、さすがにあの量は多かったみたいで、さらに近所にも配ってどうにか消費している状態らしい。


美味しかったらしいんだけどね、上げたその日にじいちゃんがわざわざ電話かけてきたし。

でもあの年齢になると量は食えないそうだ。
ご近所さんも年は余り変わらないそうだし。



なので牛肉に変わる新たな獲物が必要なのである。



そう言った訳で俺とクロは次の階へと進むため、扉の前へと来ていた。

「そんな訳で扉の先いってみたいと思います。 わーぱちぱちぱち」


その場を盛り上げようとそんな事を言ってみたけれど、返ってきた反応は無言と冷たい視線のみ。


「んじゃ、開けるよー……冷たい」


俺はそれぐらいでは挫けないのだ。
気を取り直して、盾を構えてそっと扉に手を掛ける……冷たい。

え、どういうこと。


「え、なんで冷たいの……すっごい嫌な予感するんだけど」

クロがじゃなくて、扉自体が冷たい。
よく見ると結露しているし、明らかに周りより冷たくなってるねこれ。

いやーな予感がする。


「クロ、ちょっと離れてて……あ、あけるよ?」

クロに少し離れるように指示を出し、俺はそろーっと扉を開け、盾越しに中をのぞき込んだ。

そしてその瞬間、何やら青白く尖った何かが俺に向かい何個も飛んできた。


大きさは500mlのペットボトルぐらいだ。
先端は如何にも刺さります!と言った具合に尖っていて……これは、氷だ。 氷の矢?槍?がこちらに向かい飛んできていたのだ。



「うぉぁああっ!?」

食らったら絶対やばい!
直感的にそう感じた俺は盾で受け止めるのではなく、回避する事を選んだ。

幸い速度はそこまでじゃなかったので、何とか回避する事が出来た。

俺の横を通り過ぎた氷の矢だか槍は、地面へと派手な音を立てて突き刺さる。


「な、なに今の!? って、凍ってる、凍ってるぞ??」

氷が突き刺さった地面を見ると、パキパキと音を立てて氷が広がっていく。

盾で受けてたら、腕ごと凍っていたかも知れない。
俺ってばナイス判断。


「盾で受けちゃまずいよな? ……クロ、ちょっと荷物から頭もらうよ」

受けた瞬間に手放せば大丈夫かもだけど、盾が氷付けになると困る。溶かすの大変そうだし痛みそう。

と言うわけで牛さんの出番だ。

俺はクロのバックパックから牛の頭を取り出すと、角を掴んで扉からひょいと出してみる。

すると牛の頭に氷がガンガンあたるので、氷が途切れると同時に手放し、部屋の中へと突入する。


すぐに次が飛んでくるかと思ったが、多少ためが必要であるらしい。

部屋の中央付近には1匹の青白い、やたらとゴツゴツしたトカゲのような生き物がいた。
体長は尻尾の先まで3m程でかなり大きい。

氷はこいつが放った物だろう。
一体どうやって飛ばしたのか……と思ったが、よく見ると空中に
じわじわと氷が生まれ始めている。


……まさかの魔法? いや、スキル?


どっちか分からないけれど、撃たれる前にやっつけないとダメってのは分かる。

俺はトカゲに駆け寄ると首めがけて鉈を振るった。


「かてぇっ」

幸いトカゲの動きは非常に緩慢で、攻撃は難なく当てることが出来た。
反撃もない。

だが、致命傷には至らなかった。

トカゲの鱗……と言うよりは鎧の様な物を叩き割り、肉には達したが鎧も肉も非常に硬く、刃が余り通っていない。


しとめ損なったが、まだクロがいる。

クロはトカゲ目がけて飛び掛かり、にゃー!と鳴いて思いっきり歯をガチリと鳴らす。

するとクロの不可視の攻撃だけではなく、スキルが発動し巨大な円錐……いや牙が2本生まれ、トカゲに大きな穴を穿つ。


「まだ生きてるっ!?」

だが、そこは弱点ではなかったのだろうか、トカゲはまだ生きていた。

空中にある氷は徐々に大きくなり、もうすぐ先ほど飛んできたのと同じ大きさになる。

恐らく避けることは出来るだろうが、万が一食らったらと思うと、非常に不味い。

俺は即スキルを発動した。

「土蜘蛛!!」

狙うのは一撃目で傷をつけた部分!

俺が放った一撃は首をえぐり取り、今度こそトカゲは動かなくなった。

すると同時に空中に浮かんでいた氷が地面に落ち、サラサラと消えて無くなった。

きっちり倒せたようである。


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