家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
42 / 304

「42話」

しおりを挟む

「素材2個あるし、クロもつけてみようか?」

そうクロに尋ねると、にゃーと返事が来た。
尻尾が立っているしクロも嬉しいんだろう。

さっそく素材を使おうとするクロであったが、それに俺は待ったをかける。

「効果分からんから、まず俺のやつに着けて見るね」

外れだった時が悲しいからね、まずは俺の武器に着けてみようと思う。
そう言いながらクロの頭を撫でると、クロも納得したのか小さくにゃんと鳴いて、端末の操作を止める。



素材を使った改造自体はすぐに終わった。
武器の見た目は特に変わった所は……いや、若干刃の色が変わったか? 薄いけど黒っぽいグラデーションがついたように見える。

ちょっと格好良いな!


「じゃあ試し切りに行こうか?」

そう言って5階へと繋がるゲートに向かう俺とクロ……あ、言って無かったかもだけど、休憩所のゲートだけど10階へも繋がる様になってるんだ。

ゲート潜ろうとすると選択肢が空中にポンと出て来るから、行きたい方に触れるだけで行けちゃう。

ゲートがどんどん増えていったら邪魔そうだなーって思ってたけど、この方式なら場所取らないから良いね。



とりあえず10階へと向かい、牛さんでスキルを試そうと思ったんだけど。

「発動方法は分かった。 でも効果は分からんのよね」

鉈をもってスキルを使いたいと思うと、脳内にふっとスキルの発動方法が思い浮かんだ。

でも、肝心な効果が分からないままなんだよなー。

防具じゃなくて、武器に付けられるってことは攻撃用のスキルだとは思うんだけどね。


てか、頭にふっと思い浮かぶって、よく考えると怖いな。
脳内いじられてないよね??



「んー……ん?」

そこらの壁に向かって試しに使ってみようかな? ……なんて考えていたら足音が聞こえてきた。

タイミング悪いなあ、しかも2匹いるね。
出来れば1匹が良かったんだけど、しゃーないやるか。



ちなみにスキルの発動方法だけど……発動すると言う意思をもって、スキル名を叫べば発動すると言うものだった。

かなり恥ずかしい気がする。
人様の前では使えんよねこれ。


でもここには俺とクロとモンスターしかいないから、使っちゃうんだけどね。



通路の奥から聞こえてた足音が急に激しくなる。
向こうもこちらに気が付いて速度を上げたのだろう。

程なくして見える牛さんの姿。

1匹を先頭にし、もう1匹が少し遅れてこちらへと一直線に向かってくる。

俺は鉈と盾を構え、牛が突っ込んで来るのを待ち……避けると同時に叫び、首元に向かい鉈を振るう。


「土蜘蛛!!」

そう叫んだ瞬間、鉈の周囲や俺の腕を円錐状の何かが覆う。
それは艶のない黒色をしており、恐ろしく重量感のある……恐らく何かの生き物の一部であった。

少なくとも俺にはそう見えた。


俺は突如現れたそいつにギョッとしながらも、牛に向かい腕を振り抜いた。


本来であればそんな巨大な物を、いくらレベルアップの恩恵で身体能力が上がってるとは言え、軽々振るうことなど出来ない。

だがそれは鉈を振るうのとまったく変わらない速度で振り切ることが出来た。


そしてそれは恐ろしいまでの威力を発揮した。

それは牛の首に当たると強烈な破裂音と共に巨大な穴を穿ち、首をはね飛ばした。
さらには後方にいた牛にもあたり、その半身をごっそりと削り取ってしまう。



「ひぇぇぇえっ!?」

……いや、正直ドン引きするレベルの威力なんですけど!?
牛の首の骨って堅いし、首自体も太いから一撃で切り落とすなんてまず出来ない。

それなのにこいつは一撃で首を吹っ飛ばした上、威力を衰えさせる事なく2匹目にも致命傷を負わせた。

ヤバいなんてもんじゃ……ん、あれ?ちょっとまって。


「……ダルッ」


もの凄い怠い……なんだこれ、気持ち悪い。

スキルを使ったその反動? それともMP的なものが存在していて使いすぎた……とか?

この怠さも肉体的な疲労と言うよりは別物な気がする。
どちらかと言うと後者な気がする……うぅ、怠いよぉ。



「あー……やっと治った」

5分ぐらいで復活しました。
ポーション試してみたけれど、ダメだったんだよねー。

いやー、強力だけど使った後の怠さがひどいな。

レベル上げると解消されるのか、それともスキルを使い続ければ解消されるのか……さすがにずっとこのままって事は無いだろうし、後で色々試してみるか。



さて、効果も分かったところで次はクロの番だね。
さっきからすっごいソワソワしているし。

でも俺が怠そうにしているから、気を使って待っていてくれたんだろう。


「クロもやってみる? ダルくなるから気をつけて」

そうクロに話しかけると、クロは嬉しそうに端末を操作し、すぐに牛を探しに歩き始める。

クロの後ろをついて歩き、程なくして曲がり角から牛が姿を現した。
今度は1匹らしい。

クロは牛を見つけると同時に飛び出し、牛が反応するよりも早く、にゃー!と鳴いて噛み付いた。

クロはどうやら首輪を改造したらしい。

クロの攻撃は見事に牛の前脚を二本とも噛み砕くに至るが、それだけであった。

「……出てない、よね?」

どう見ても何時ものクロの攻撃と変わらない。スキルが発動していないのだ。

その後も念の為と言うことで、引っ掻き攻撃でも試して見たが発動はしなかった。


「よしよし……」

目に見えて落ち込んでいるクロを抱きかかえ、しばらく頭を撫でてあげた。



んんん。

なんでクロはスキルを発動できなかったかだけどー……何となくアマツがやらかしている予感がひしひしとするのです。

こりゃ確かめに行くしかあるまい。





「アマツさんいますかー……あ、いた」

クロが落ち着いたところで5階に行くと、アマツは椅子に腰掛け一人でニコニコ……と言うかニマニマしながら空中を見ていた。

怖いわっ。

「いらっしゃあああい!」

そして無駄にテンションが高い。


「……何か良いことあったんすか」

「ははは! いい感じにダンジョンの情報が広まりそうでね、ついつい嬉しくなってしまったのさ」

「あー、動画アップされてましたもんね」

「そう! 実に素晴らしい事だよ。 あのおかげで大勢の人がダンジョンの存在を知った……多少のトラブルはあるだろうが、これからダンジョンに来る人が増えるのは確かだろうからね」

やっぱアマツもあの動画の存在に気が付いていたらしい。

それで今後増えるであろうダンジョンを訪れる人達の事を思い、ひとりでニヤニヤしていたと。

このダンジョンマスター、残念感がすごいよね。



まあ、それは良いとして。

「それで、今日はどうしたんだい?」

「あーっと。 宝箱から出た素材で武器を改造したらスキル使えるようになったんですよ」

本題を話さねば。

「おお! おめでとう! どれどれ……おお、当たりを引いたね。 それは相当レアだよ、運がよかったね」

なるほど、そんなレアだったのか……確かにそれならあの威力も納得だ。

ただ問題はクロが使えなかったと言うこと……。

「それで、俺はスキルを使えたんですけど、クロが使えなかったんです。 これって何が原因なんでしょう?」

「使えない? スキル名を叫べば使えるはずだよ」





やっぱそーか!
そうだと思ったよこんにゃろめーっ。


「クロは喋れないんで」

「あはははっははっ!!」


なにわろとんねん。


「お゛ぅっ!?」


笑うアマツの顔面に、クロの両足がめり込んだのであった。

猫のドロップキックとか初めて見たわ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...