家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「59話」

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あとはクロも見せれば良いかな……なんかやる気満々だし。

ふふふ……見せて貰おうじゃないか。お手本とやらをっ。

「それじゃ次クロいってみる?」

俺がそうクロに声をかけると、クロは嬉しそうに、うにゃうにゃと鳴くと小部屋を出て通路を進み始める。

するとそれを見た隊長さんが慌てた様子で声を掛けてきた。

「し、島津さん……大丈夫ですか?」

「ええ、クロとは普段一緒にダンジョン潜ってましたから」

そう俺が答えるか、隊長さんはやはり不安そうだ。それに隊員さん達も心配そうに前を行くクロを見ている。

確かにクロはどう見ても猫だし、相手がネズミとは言えデカくて数は多いし、不安になるのは仕方のない事だろう。
最終的にはクロが小部屋に入った直後に全員も部屋へと入り、何か起きた場合は即座に助けに入るという事で落ち着いた。

皆良い人だね。
どんな人が来るか分からないし、不安ではあったけど良い人達が来てくれて良かった。



そして俺たちが見守る中でクロの戦闘が始まった。
相手は10匹である。

クロは俺とは違い、ネズミの半身を粉々にするようなことはなかった。
噛みついてきたネズミをするりと躱し、前足でそっとネズミの顎あたりに触れ、グイっと押し込む。

それだけでネズミは倒れ動かなくなる。
見ればネズミの頭が180度回転していて……まあ即死だろう。

クロはそれを全てのネズミに対してやってのけた。


飼い主としての威厳が……いや、違うっ。
あれは肉球の効果だ、クッション的な何かだ、そうに違いない。 俺にも肉球があればきっと同じことが出来ただろう……人間用のアクセサリーでその手の出ないかな?


とまあ、クロは最低限の力でもってネズミを制圧してのけた訳だけど。
これはこれで隊員さん達から見たらやべー事してるんじゃないかと思うんですがそれは。


「はは……俺達は猫未満か」

ほら、凹んでるじゃない。

「すぐ追いつくと思いますよ」

半分ぐらいは本気でそう思ってる。
なにせこっちは素人で彼らは訓練を受けたプロなんだし。

戦闘技術なんかも俺と比べたらずっと上のはずだ。
今はレベル差で俺たちの方が強いけれど、いずれ追いつくとは思う。

まあ、そう簡単に追いつかれる気は無いけどなっ。


「ところでこいつらどうします? 調査のために持って帰ったり?」

戦闘での確認は一通り終わったので、ネズミの死骸をどうするか尋ねてみる。

俺にとってみれば食えないので要らないとなるんだけど、自衛隊さんの場合はここに調査に来た訳だからねー。
このネズミも彼らにとっては成果物になるはずだ。

「いえ、それは専門のチームが後から来ますんで、彼らに任せますよ」

そう思って聞いたのだが、どうやら彼ら以外もチームが来るらしい。
自衛隊さんはダンジョンかどうかの確認と、あとは敵の強さを確認して……後からくるチームの護衛とかもするのかな?

と言うわけで、調査はこれで一旦終了となる。

「それでは一度戻りますか」

「あ、戻るなら休憩所で休んで行ったほうがいいですよ。 身体能力が上がるのダンジョン内だけなんで、そのまま外に出ると疲れが一気にきます」

「む……なるほど通りで。 では、お言葉に甘えて休んでいくとしましょう」

帰ろうとする隊員さん達にこのまま出るとすっごい怠いので、一度休憩をしましょうと誘ってみる。
彼らもその事に覚えがあるのだろう。休憩所で休む提案を受けれ入れてくれた。


ふむ……時間はお昼にはちょっと早いぐらいか。
せっかくだからお昼に誘ってみようかな? お肉はたっぷりあるし、納屋からコンロやらなにやら持ってくれば休憩所で焼き肉ぐらい出来るだろう。
ご飯も今朝炊いたばかりだ。 この人数だと少々足らない気もするが、そこは肉でカバーすればいい。野菜もあるしね。



「せっかくだからお昼食べて行きますか? ここで取れたお肉ありますよ?」

「……ゴブリンですか?」

んな訳ねーでしょが。

「いやいやいや。 牛ですよ牛。 10階で出てくるのが牛なんです。 美味しいですよ?」

何が悲しゅーてゴブリン食わないといかんのだ。
隊員さん達の脳内でモンスター=ゴブリンとでも刷り込まれているのだろうか?

「ネズミにウサギに牛……? どうなってるんだここのダンジョンは……」

「いや、ちゃんと人型のも出ますよ?」

誤解が広まりそうなので一応否定しておこう。
鹿と羊もいるんですよーって言ったらさらに誤解しそうなので、そっちは聞かれるまで言わないでおこうと思う。


さて、焼き肉の準備しますかね。

隊員さん達には休んでもらって、俺は納屋からコンロと炭を、あとは家から大量にあるお肉と野菜、それに割りばしや紙皿をとってくる。 あとは一応タレと塩コショウもね。 お肉は味ついてるけど、お野菜にはついてないから。


「ちゃんと普通のお肉もあるんでご安心を、こっちの野菜も大丈夫ですよ」

家にあったのはダンジョン産の牛と羊、それと普通の味付け焼き肉だ。
羊は在庫があまり無かったので除外、牛はかなり余り気味だったので痛む前に彼らに消費してもらおうと思う。

あ、野菜はじいちゃんばあちゃんに貰ったやつね。 たぶん近所の農家さんに貰ったやつじゃないかな?
アスパラは全部食ったからもう無い。


「せっかくの好意を無駄にしちゃいかん。 お前らありがたく頂くんだぞ」

そう言って各々焼き肉を食い始める隊員さん達。


「このご飯旨いっすね」

「ゆめ〇りかですね。 親戚からの貰い物ですが」

「おぉ、これが……次からこれ買うかな」

体使うお仕事している訳だし、皆食欲すごいね。
ご飯がすごい勢いでなくなっていく。それに肉だけじゃなくて野菜も結構な勢いでなくなっていく……これなら全部売れそうかなーと思ったんだけど。

「……味はどんな感じなんですか?」

「ちゃんと牛肉って感じで美味しいですよー」

やはりダンジョン産のお肉に手を付けるのは勇気がいるらしい。
今のところ俺意外は誰も手を付けていない。

まあ、食えるって根拠は今のところ俺の証言だけだから仕方ないよな。
彼らからしてみれば得体の知れないモンスターのお肉な訳で、下手すりゃ食ったら即死とかもありえるしね。

だが俺が平気でバクバク食っているもんで、少しずつ彼らの意識も変わって来たらしい。


「田尻、牛肉好きだったよな」

おおっと隊長さんの無茶振りが部下を襲う。

「いえ、俺は豚肉ですね。 牛肉は大野です」

それを華麗にスルーパスする田尻さん。

「ッ!??」

振られた大野さんは俺ぇ!?って感じで二人を凝視している。
ご飯吹き出したら怒るど。

「そうかそうか、ほら大野。 いっぱいあるし頂いたらどうだ? ん?」

「隊長ぉぉ……ひどいっす」

「俺が最初に食べてから二月は経ってますし、大丈夫ですよ。 たぶん」

酷いパワハラを見た。

俺としてはお肉が売れたらいいなー程度の思いなので、別にそこまで無理して食って貰わなくてもいいんだけど。

その無茶ぶりされた大野さんは、震える箸でお肉をつかみ口元へと運んで……ハァーハァーと荒い息を吐きながら、ものすっごい葛藤している。

なんか顔芸が凄いことになっていて、思わず吹き出しそうになったが必死にこらえた。

30秒ぐらい葛藤していたけど、大野さんは勇気を出してお肉にくらいつく。
涙目になりながらモグモグと口を動かしていたが、やがておや?っといった表情を浮かべ、ごくりと飲み込む。

「…………旨い」

そう言って次のお肉に手を伸ばし、ばくりと食らいつく。
もう先ほどまでの怯えは無くなっていた。


「これ滅茶苦茶旨いですよ!」

「ほう」

「まじか」

「では私も」

「俺も」

「……」

コントかな?

まあ、その後は皆で和気あいあいと焼き肉を食べ、なかなか隊員さん達と仲良くなれたんじゃないかなーと思う。
たぶん向こうもなるべく仲良くしろ的な指示を受けてそうな気もするし、まあ仲良くなったんだし何でもOKだ。


さて、親交を深めたところで……ちょっと答えにくそうな質問をしてしまおうかな?
具体的に言うと俺たちはこの後どうなるか、だ。

このまま家に住めるのか、ダンジョンに潜り続ける事は出来るのか、身の安全は保障されるのか。
ほかにも気になることはいっぱいある。

でもまずはこの辺りを聞いてみようかなと思う。
もしやばそうであれば何時でもダンジョンに逃げる準備はしておこう。


「都丸さん、ちょっと質問があるのですが、聞いてもいいですか?」

「ええ、勿論ですよ」

隊長さんに質問があると聞いてみるが、反応は悪くない。
……そういや出来るだけ協力するって話だもんな。そら質問ぐらい答えてくれるか。

「俺たちってこれからどうなるんでしょう?」

「ふむ」

質問が抽象的すぎた。
焦るな俺。

「えっと、今思い浮かんだのは……このまま家に住めるのか、ダンジョンに潜り続ける事は出来るのか、身の安全は保障されるのか、そのあたりです」

「なるほど……まず上が実際にどう判断するかは私には分かりません。 その上で答えるのであれば……」
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