家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
60 / 304

「60話」

しおりを挟む

と、隊長さんはそこまで話すと急に考え込む様に黙ってしまう。

いや、そこで黙られるとられると怖いんですけど……。

「……まずこのまま住めるかですが、今まで通りの生活を過ごすのは厳しいかと思います」

ふむ。
今まで通りでなければ住めるって事?

やっぱさ、多少不自由でも俺としてはこの家に居たい。
色々と思い出いっぱいだかんね。

「ハチ公前のダンジョンはニュースでご覧になったかと思いますが、あそこと同様に周囲を建物で囲む必要があります。 あそこまで大規模では無いにしろ、庭の大半は建物で埋まるでしょう」

「あー……」

それは確かにそうだ。
ダンジョン剥き出しはあかんよなあ。 それこそダンジョンに興味津々な人たちが勝手に入って来てしまうかも知れない。

てか間違いなく来る。

「さらには自衛隊が常駐する事になりますし、かなり住み辛くなるかと……恐らく近隣の住民も含め、引っ越しを勧められると思います。 従わない場合は土地を接収する事も考えられますね」

「うわー」

常駐もまあ分かる。
見張り居なければ侵入し放題だしね。

しかし、接収かー……近隣の人も含めてとか、そこまでちょっと考えていなかった。
都心からはちょっと離れているし、そこまで住宅が密集している訳じゃないんだけど、それでも数軒は対象になりそうだ。


「ですが、島津さんの事情次第では交渉の余地はあるかと」

「なるほど」

事情は汲んでくれそうだと。
情報提供者には協力をってことだね。

ちょっと近所の人の話を聞いてもらって、ダメそうな感じであれば……アマツにお願いしてダンジョン移転してもらうか。
出来れば近所がいいなー……まあ割と土地余っているし、移転先は問題ないだろう。
移動がちょっと面倒になるだけかな。

「ダンジョンを潜り続けられかについては条件次第で可能です。 一般人としては難しいでしょうが……島津さんは予備自衛官制度をご存じですか?」

「一応は」

なんか普段は普通に会社で仕事してて、いざって時に動員かかる自衛官。みたいなイメージぐらいしか知らないけどね。

とは言え一応知ってはいるので都丸さんにはそう返事しておいた。

それを聞いた都丸さんは満足そうに頷くと、言葉を続ける。

「でしたら話は早い。 一般人では難しい、ならば自衛官になってしまえば良いのです。 実はこの件について上からも言われていましてね……何せ現状世界で最もダンジョンに詳しく、攻略を進めているのが島津さんですからね。 色々と融通も効くかと思います。もちろんデメリットがまったく無い、と言うことでは無いですが」

なるほど?
そう予備自衛官ってそう簡単になれるものだったっけ? と疑問が浮かぶが、そこは融通が効くとのことなので何とかなるのだろう。

ダンジョンに潜れると言う事であれば、なっても良いと俺は思っている。
ここでYESと答えなければ、まともに潜るれるのは何時になるか分からんしね。
一般開放されるまではまだ暫し時間が係るだろう。


デメリットは……なんだろうね? 組織としての指示に従わないとダメとか? 変な指示で無ければ問題はないと思うけど。

こればっかりは実際になってみないと分からないね。


「わかりました。 あとで詳しく聞かせてください」

「ええ、勿論です。 身の安全については、国内にいる限り恐らくは大丈夫です。 我々の身内になって頂けるのであればより安全かと思いますよ?」

あ、そっか。組織に入るってことはそういうメリットもあるのな。
俺個人よりも自衛隊と言う組織の中に居れば、ある程度守ってもらえると……。

「なるほど。 ……まあ、私としては受ける方向で内心ほぼ決まってます。 あとでクロと相談してからでも良いですか?」

うん、やっぱ俺としてはこの話受けたほうが良いと思う。
クロと相談だね。



「クロと相談……?」

と、俺の言葉を聞いた都丸さんが首を傾げる。
そういやダンジョンでモンスター倒すと身体能力上がるとは言ったけれど、猫とかは頭も良くなりますって言ってなかったな。

「……あ、ダンジョン内でモンスターを倒した影響で、猫とかは頭も良くなるそうなんです。 決して俺がアレな人って訳じゃないです」

アレじゃないです。

「ははぁ、通りで賢いと思いましたよ。 申し訳ないですが、後ほど到着する別チームにその辺りについてもお話願いますか?」

「はい、大丈夫です」

クロは実際賢いからね。
別チームの人とやらを吃驚させてやろうじゃないの。

家のクロを褒め称えるがよかろうなのだ。


さて、あと聞きたい事は何か……あ、そういや来月麦の収穫とかあったな。
麦の後はトウモロコシだったかな? 結構忙しくなるはずだよね。

「あとはー……行動の自由ってあるんでしょうか? 実は祖父母が農家やってまして、来月かなり忙しそうなんでお手伝いしたいんですが……」

「ええ、その辺りは自由に行動出来ると思います。 ただ護衛兼見張りが付くことになると思いますが……」

「それぐらいであれば問題ないです。 何かあったらフォローもしてくれるんですよね?」

「ええ、勿論です」

なるほどなるほど。
割と自由なのね。 見張りはしょうがない……というかむしろ有難いかな。
何かあった時頼りにしちゃおう。

大体聞けたかな……この後まだまだ質問が出てくるかもだけど、とりあえずはここまでで良いか。
あとは別チームの人に聞いても良いしね。


あくまで都丸さんの予想ではあるけど、都丸さんも上から色々お話は聞いているだろうし、180度話が変わるなんて事はないでしょ。たぶんね。



と言った感じで都丸さんと色々話しこんでいた訳だけど。
お腹も大分落ち着いたあたりで、そろそろ別チームが来る頃だと言うお話だったので、皆でダンジョンから出ることにする。



「なんか車と人が増えてる……」

地上に戻ると車と人が増えていた。
家の敷地内には入っていないが、道路で何やら機材を用意しているのがちらほらと……どうみても隊員じゃない人がいるので、あれが別の調査チームの人だろうか? 白衣とか来ている人もいるし、なんだろうね科学者とかなのかなあ?

あとは、工事用の車両っぽいのも居るなあ。
あれはダンジョンの周りを囲む建物を建てる用だろうか。

「あれが別チームなのかな?」

「ええ、これから本格的に調査が始まります。 島津さんに話を聞くのは……まだ来ていないようですね、自宅でお待ちいただけますか? 我々は調査チームに着いていかねば成らないので……」

俺から話を聞く人達はまだ来てないのか。
で、来るまでは待機とな。

都丸さん達は調査チームと合流し、再びダンジョンに向かうようだね。

「あ、そうなんですね。 皆さん今日はありがとうございました。 また焼き肉でも食いましょうねー」

そう言って隊員さんに手を振り、家へと引っ込む俺。
隊員さん達は俺に手を振り返すと別チームの方へと向かっていった。



いやー……疲れた。
肉体的には余裕だけど、精神的に疲れた。

「何とか上手くいってる感じかな? あとは調査チームの質問に答えて……うん、頑張るよ。ありがとね、クロ」

ソファーにだらりと寝そべり、そう独り言ちる俺。
するとクロがソファーに飛び乗り、俺の顔をじっと見つめ、にゃーと鳴いてゴロリと横になる。

お疲れ、がんばれってことかな?

丸くなるクロを撫で、俺は少しの間休息をとるのであった。




休憩を始めて大体1時間が経過した。時刻は14時を過ぎたあたりだろうか、ふいに玄関のチャイムが鳴らされる。


「はいはい、今いきまーす。 お待たせしま――」

そう言って玄関の鍵を開け、扉を開くと……そいつらは俺を押しのけるようにして玄関へと入ってくる。

「――島津浩平さんですね? ダンジョンについて聞きたい事があります、お時間よろしいですか?」

入るなりそう言ったのは、黒いスーツを着た男だ。
後ろにいる連中も格好は同じである。

どう見ても隊員ではない……妙にギラついたその目に、何やら酷く嫌な予感がした。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...