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「88話」

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とりあえず全員にポーションを飲んで貰い、筋トレを始めて貰う。

やり方については隊員さんが詳しい様なので、彼らに任せることにしたよ。
現時点でトレーナーさんとかをここに入れる訳にもいかないしね、助かった。

「不思議な感覚ですね。こんなに重いのにいくら持っても疲れないし、痛くもならない……訳ではありませんが、すぐ治る」

「どんどん重いのが持ち上がるようになるぞ。とんでもねえなこいつは」

最初は軽め負荷でやり、ポーションの効果を実感して貰った後は、ぎりぎり1回出来る……ぐらいの負荷で筋トレをやって貰う。
下手すりゃ筋とか痛めるけど、てか実際に痛めているけどすぐ治るし。
ひたすら筋繊維を虐め抜いて貰うよ。

効果はすぐに出て来る。
さっきまで腕を震えさせながら持ち上げていたダンベルが、気が付けばスムーズに持ち上がりようになる。そしたらまた負荷を増やす。その繰り返しだ。

ここまで効果が目に見えて分かるとやる気にも繋がる。
時折雑談を挟みながらも彼らは休むこと無くトレーニングを続けた。

「……しかし、妙にお腹が空くような気が」

「あ、ごはんはがっつり食べてもらいますよ。じゃないと筋肉つかないですからねー」

筋肉をつけるにはタンパク質が必要。
それにエネルギーもだ。

昼には焼き肉をがっつり食べて貰おう。
この人数なら在庫が大分捌けそうなので、こちらとしてもありがたい話である。




結局彼らのトレーニングは夕方まで続いた。
全員が帰宅したのを見送り、その場に残った全員が大きく息を吐く。

「……お疲れさまです」

思っていたよりずっと緊張していたらしい。
姿が見えなくなった途端にがくっと体から力が抜けた。
隊員さん達も似たようなものらしい、あまり表情には出ていないが疲れてそうだ。

「ああ、今日は助かったよ。全員腰をやった時は本当にどうしようかと……」

「ハハハ」

いや、本当にね。
明日も似たような感じなのかな……不安だ。

まあ、でも何とかなるかー。
今日の感じだと1週間もあればまともに動けるようになると思うし。
てか、今日の筋トレだけで、大分体が締まってたからなあ。やっぱ半端ないわ、この筋トレ法。

「皆さんも良かったら後で筋トレすると良いですよ。トレーニングルームならレベル上がってても問題なく鍛えられますから」

「ああ、早速使わせて貰うよ」

隊員さん達は元から鍛えているけど、もっと鍛えた方がダンジョンを攻略するのが楽になるからーと、お勧めしたんだけど……今からやるのかい。タフだな隊員さん達。



とまあ、初日はこんな感じで終わった。
で、翌朝残りの3人が来たので、先日と同じようにまずはネズミと戦ってもらい……やはり全員がどこかしら体を痛めていたので、筋トレして貰うことにしたよ。

ちなみに昨日の副総理御一行も何故か一緒に筋トレしていたりする……本業の方は大丈夫なのだろうか?

と、言うような事を遠回しに聞いてみたけれど。

「ダンジョンに関する事が最優先なので問題ない」

との答えがあった。
ホントカナー?



とまあ、午前中は皆で平和に筋トレをしていたのだけど、問題は午後になって発生した。

今まで都合が付かずに来られなかった2名が来ただけなんですけどね。
その何が問題かと言うと……。



「……まじかよ」

「官房長官、梶です。よろしく」

「総理の笹森です。遅れての参戦ですが、よろしくお願いしますね」

「まじだよ……島津です。よろしくお願いシマース」

来たメンバーがヤバいのが問題だと思うんです。
まじでトップが来ちゃったよ……どうするのこれ。

この後この二人にも四つん這いになって貰うとかさ、勘弁してほしい。
もう全部隊員さんに投げてしまおうか?そんな事を割と真剣に考えていると……二人は四つん這いになってダンジョンに入って行ってしまった。

勘弁してくれ……。


ああ、そうだ。入り口を変えられないか?だけどね。アマツに聞いたら一応出来るけど、ちょっと時間が掛かるとの事だった。

なんでも入り口を変えると装備の制限に影響が出るとか何とか……なので当面の間は皆には四つん這いになって貰うしかない。

救いなのは皆スーツでは無く動きやすい格好で来ている、と言ったところだろうか。
大した慰めにもなりゃしねーですわ。ハハハッ。



はぁ……ダンジョンに入った二人をとりあえず休憩所に連れて行ったのだけど、中の光景を見て二人の眉間にキュッと皺が寄る。

そりゃーね。副総理を始め各大臣が筋トレしてるんだもん、そりゃ眉間にも皺が寄るってもんですわ。
てか、総理達にこの言葉話してなかったのかな?

「ところで皆さん何をしているのですか?」

「何ってそりゃ筋トレに決まってるがな」

総理の言葉にそう返す宇佐見さんさん。
ああ、眉間の皺が更に深く……。

「ははは。悪い悪い、まあまずは潜って来ることだな」

「ふむ……分かりました。それでは皆さんよろしくお願いします」

「オー」

もうどうにでもなーれ。

とりあえず床で丸まっているクロを確保してと。
眠かったのかうにゃーと抗議してくるが、拝み倒して何とか付いてきて貰う事に。

あとは……そこで他人の振りをしている隊員さんも行きますよ?筋トレの補助が忙しい?ははは逃がさんよ。
4人全員じゃ無くて良いんで、ジャンケンなりでささっと決めるのですよ。




その後は今までと同じ流れだ。
実際に隊員さんが戦ってみせ、クロが弱ったネズミをとってくる。

で、そこを首相がズバッと切り倒し、どこか痛めると。
……うん、やっぱ痛めたみたいね。

「肩痛めましたか?」

「ええ……お恥ずかしいことに。年は取りたくないものですねえ」

腰は無事だけど肩をやったか。
肩もやらかすと結構痛いんだよねえ。

おっと、とりあえずポーション使って貰わんとだ。

「ですが、今はポーションありますし、年齢もその内に……これ、痛む箇所に使ってください」

「ありがとうございます。……これは凄い」

肩の具合を確かめるようにグイグイと動かす首相。
冷静そうに見えるけど、目がキラッキラしてますね。




あとは官房長官だけど……あ、やっぱ痛めたぽい。


「梶さんも……アゴ?」

なんで顎?
噛み付きでもしたんですかねえ。

「噛み締め過ぎたようです……」


なるほど。
普通に考えたら噛み付く訳ないよね。ちょっと頭がおかしくなってきたようだ。

「かけても治らなかったら口に含んで下さい。痛み引いたら飲んでおいてください」

「…………おお」

うむ。
よし、これで後は戻って筋トレだ!

隊員さんに丸投げすんぞおおおおっ。
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