家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
194 / 304

「194話」

しおりを挟む
「一体何のつもりだ?イース」

上から降ってきたのはやはりアマツだった……が、俺の知っているアマツと雰囲気が違いすぎる。

俺に向けられている訳じゃないのに、圧が凄まじい。
表情も違う、無表情に近いが……あれはガチ切れしてるんだと思う。

正直この場に居るだけでも辛い。

だと言うのに、イースと呼ばれたそいつは飄々とした様子でまったく堪えた様子がない。

「いやね、面白そうな事をやってるって聞いて参加してみただけだよ?」

「来るなと言ったはずだが?」

また圧が一段強くなる。

……アマツは同僚と言ったけど、この感じはどう考えても同僚に対する対応ではない。
つまりこいつは敵か?アマツの。

「来るなと言われると来たくなるのが人の性ってやつだよ?君が素直に歓迎してくれていたら、あんなことしなくても良かったのにねえ」

「……」

アマツの半身が、異形に変わっていく。
あれがアマツの本当の姿……直視しちゃダメな奴な気がする。
なるべく見ないでおこう。


さすがにこれは無視出来なかったのだろう、そいつはアマツの方へ向きなおす……つまり俺からは背中が見えている状態だ。
殺そう。



一切声も出さず、呼吸も止めて一気に距離を詰めて鉈を振るう。
狙うのは首だ。

再生するまで時間掛かるのは分かっている。
切断すれば後はアマツがどうにかするだろう……そう思い、振るった鉈であるが。

「っと、危ないなあ」

そいつは俺の鉈を手の平で平然と受け止めて見せた。
こちらを見てすらいない……さっきまでの戦闘は手加減していたってことかよ。

ならば土蜘蛛を……と思った直後、腹に凄まじい衝撃と激痛が走り、俺は吹き飛ばされピンボールのように跳ねて、転がりまくる。

地面に転々と転がっているのは、俺の臓物か。
くっそ痛てえ。



「今は大人しくしててね、あとでいっぱい……?」

手をひらひらとし、そう言ったそいつであるが、ふと動きを止める。

よく見れば手の平から黒い液体が零れ落ちている。
俺の攻撃はまったく通じていなかった訳ではなかったらしい。

少しの間呆けた様子で自分の手の平を見つめていたそいつであったが、急にアマツの方を向いたかと思うと手の平を見えるように両手を上げ、話始める。

「さて、それじゃ私はここらでお暇するとするよ。安心してほしい、もう君のダンジョンに入ることはないし、ダンジョンで彼らにちょっかい掛ける事もない。約束する」

「……」

その言葉を聞いたアマツであるが、無言であった。
ただ半身はまだじわじわと異形へと変わりつつある……そして完全に変わり切る前にそいつはふっとその場から消えて居なくなる。


「居なくなったか……?」

誰かがいったその一言切っ掛けに、アマツがふーっと大きく息を吐く。

「ああ、もう居ないね……約束は必ず守るやつだから、もう来ることはないよ。そこは安心して欲しい……っそれより島津くん、無理はいけないよ……さすがに肝が冷えた」

「背中見せた、殺らなきゃと思って……すんません」

どうやら本当に居なくなったようだ。
アマツの体もいつの間にか普段の姿へと戻っている。

そして約束は必ず守るやつと言うことなので、今後ダンジョンであいつと出会うことはないだろう。

あと、俺の行動は余計だったのかも知れない……あいつが帰る切っ掛けにはなったかもだけど、正直短絡的過ぎた。

「思考が物騒すぎんぞおい」

まじすんません。
自分でもそう思います……はい。


「ねえ、さっきのさ……ダンジョンでちょっかい掛ける事もないって言ってたよね?」

ん?

「ああ」

「言ってましたね」

言ってた、言ってた。
嘘だったら絶対許さぬ。



「じゃあ、ダンジョンの外は?」

「……」

……そんな事、気付きとうなかった。

いや、気付かなかったらそれはそれでダメなんだけどさー!
さあ終わったぞ!って感じだったのに……くそう、どうすりゃ良いんだ。
街中であいつにこられたらどうする事も出来んぞ?




結局アマツがあいつに街中で変なことをするなと言い含めることで落ち着いた。
てか、もうそれしか手段がない。

幸いと言うか、街中で戦闘するのは本当にNGな行為だそうで、あいつもそれをやる事は無いらしい。
向こうが何かしたとしてもせいぜい話しかけてくる程度だろう……との話だ。
不安しかねえ。

常に鉈を持ち歩いて……職質で捕まるな、俺が。

もう、エンカウントしないことを祈るしかないな。
目を付けられた気がしなくもないけど!



……まあ、とりあえず戦闘は終わりだ。
ステージ3もとりあえずはクリアしたと見なしていいだろう。
景品貰ってあとはクロを回収して帰るだけ……まてよ、一つ気に忘れてた事があった。

「ところでさっきの戦闘って、流してないですよね?」

「ああ、あれ流してたらさすがに不味いよな」

「でも、さすがにアマツさんが何か手を打って……ますよね?」

あの戦闘の映像を流すのはまずい。
今後一般人がダンジョンに入らなくなってしまうかも知れない。

見てなくても噂は広まるだろうし……あと、俺の素顔がちょっと流れてそうなのも気になる。
目の周辺だけだから大丈夫とは思うけどね。


まあ、その辺りの映像が流れると不味いってのはアマツも認識しているだろうし、きっとなにか対策はしただろう。


そんな思いを抱いた俺たちの視線を、アマツはそっと顔を背けることで逃れるのであった。
まてやコラ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...