家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「204話」

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その後、アマツから出禁をくらってるからねえ……と言うイースを連れてダンジョンの外に出てきたのだけどさ。
外に放置するわけにもいかないし、仕方ないので家に持ち込むことにした……。

幸い運ぶところを誰かに見られることはなかった。
これ、見つかってたらかなりやばかったと思う。

何せぱっと見は女性の生首をもって歩いてるわけだしね……髪の毛つかんでぶら下げてないだけまだましだと思いたい。

「……しっかし、まじでこいつどうしよ」

「ん? 君のものになったんだ、それこそ好きにすれば良いよ。まあ、私としてはできれば捨てないで貰えるとありがたいがねえ」

思わず息を吐く俺に対し、話しかけるイースの顔は対照的に楽しげである。
捨ててしまえればどんなに楽だろうか。

だが、さすがにこのまま捨てては見つかった時が大変だ。
なら燃やすなり、細かくするなりといった手段もあるが……さすがに見た目が人と同じで、しかもしゃべって意思疎通ができるような奴にそんなことは出来ない。

思わずまた大きなため息が出た。

「ところでこの子はさっきから何をしてるんだい?」

そういったイースの顔は、さきほどまでとは違って困惑した様子が見られる。
形の良い眉をひそめるその姿は生首じゃなければ絵になって……いや、ないな。

「……まあ、一言でいうと、こいつくっさ! ってなってる」

なにせ、クロはさっきから頭の匂いを嗅いではフレーメン反応してるわけだし。
こいつ本当に腐ってないよな?

「二人揃って失礼だな、本当に! 私が臭いとかあるわけ無いだろう」

ほんとかなー?

見た目は……まあ汚れているようには見えないかな。
でもねえ、なんかこう……汚れというか、何かが纏わりついてる気がする。

「いや、でもアマツさんと1週間ぐらい戦ってたんでしょ? その間ずっと風呂にはいってないだろうし……ちょっと手を洗ってくるわ」

えーんがちょ。
ってことで手を洗おう。



さて、石鹸で念入りに3回も洗ったし、きっときれいになっただろう。
あとはこいつをどうするかだよ。なんかこのまま置いておくと汚れそうだし、やっぱごみ袋に……。

「本当に洗うとか君ってやつは……ああ、そうかそうか」

「ん?」

こいつの処遇をどうしようかと頭を悩ましていると、急にイースが何か納得したように頷く……生首だから頷けないけど、なんか雰囲気的にそんな感じ。

てか、何に納得したんだ?

「一緒に風呂に入りたいならそうと言えば良いのに。まったく恥ずかしがり屋さんめ」

脳みそ腐ってんのか。



いいだろう。そこまで言うなら洗ってやんよ。
ただし。


「洗濯機でいいか?」

「やめたまえ。さっきのは冗談だよ話せば分かる落ち着きたまえ冗談だから」

風呂じゃないがな!
洗剤も入れてあげたのできっと綺麗になることだろうさ。




「しっかし、本当にどうすっかなこれ……」

なんかさっきも同じようなことを考えた気がする。
まじで一種の呪いのアイテムだよな。これ。

神社とか持っていったらお祓いしてくれないかな? すーって消えてなくなると嬉しい。

「真面目な話をするとだね、魔除け代わりにはなるから置いておくべきだよ」

「魔除け……?」

お前は何をいってるんだ。
魔除けもなにも、イース自体が厄みたいなもんじゃない。

見た目もさ、濡れた髪の毛が肌に張り付いてるせいで、あれだよ。ホラー映画で出てくる悪霊とかそんな感じだもん。

クロも相変わらず匂いを嗅いではフレーメン反応してるし、変なものがダダ漏れしてんじゃないのこいつ。

「私のこの惨状をみたら、皆尻込みするって話だよ」

……まあ、それは分かる。

誰だって生首になったあげく、洗濯機に放り込まれたくはないだろう。

「アマツが私を君に渡したのも、効果があるって分かっているからさ。そうじゃなければ今頃消されてるねえ」

だから半ば押し付けるように渡してきたのか。

「……置きたくねえ。でも置くしかないのか……でもどこにおけば……」

腐ったら嫌だし、冷凍庫とか?
いや、でも食品が汚染されそう……夜中にこっそり海にでも……いや、見つかったらまずい。

それなら山奥に捨てたほうがまだましか……?

なんて思考が危ない方向に向かっていくにつれて、徐々に俺の目が据わっていくが……。

「窓際を希望する」

そんな俺の状態を知ってか知らずか、イースはドヤ顔をしながらそんな要望をするのであった。

あ、クロが後ろ足で砂かけてる。
もう汚物扱いですやん……。


その光景をみていたら、なんか急に気が抜けてしまった。

「置けるわけねえべ……擬態とかできんの?」

でかい溜め息をついて、庭に埋めてやろうかと言おうとしたところで……イースの髪がワサワサと動き、徐々に色を変え……やがて植物のような見た目へと変わっていった。

「これぐらい訳ないさ」

「……まじで鉢植えコースかよ」

正面からみると、顔があるのでバレバレだが、後から見れば植物にしか見えない。

我が家にくるのもせいぜい祖父母や中村、それに隊員さんぐらいだ。
来たときだけ隠せばまあ大丈夫だろう……置きたくはないけど、ここに置いておくのが一番面倒にならなさそうではある。



また盛大に溜め息をついて、精神的な疲れからしばらくぼーっとしていたぼだけど、ふとスマホが光っていることに気が付いた。

「あー……なんかメッセージはいっとる」

スマホを起動すると、メッセージが一件はいっていた。
差出人は中村で、内容は最近見掛けないけどどうした? と俺を心配するものであった。

ここのところ精神的にちょっときてたから、こういうちょっとした気づかいがありがたい。
思わずホロリときたじゃないか。

ちくしょう。中村のくせに……こんど何かおごってやるかな。

「心配してくれてありがと。落ち着いたら遊ぼうぜっと」

そう、中村にメッセージを返した俺は、とりあえずイースの首でも鉢植えに植えるかと、むんずとイースの首を鷲掴みにする。

と、そのタイミングでスマホが振動する。どうやら中村からすぐに返信がきたようだ。
たまたまスマホをいじっていたんだろうか。

えっと、なになに……?

「……もう、きちゃった……?」

なん、だと……?

メッセージを見た俺は、ばっと振り返り、窓の外をみるが……そこには笑顔を浮かべながら手を振る中村の姿があった。

「おう、遊びにきた、ぞおおおぉぉぉっ!?」

そして、俺に向かい笑顔で話し掛けてくる中村であったが、その目が目玉が飛び出んばかりに開かれる。
あかん。
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