家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
257 / 304

「257話」

しおりを挟む
ギシッと体全体が軋んだ音がした。
あ、これやばそう……そう思った直後から体全体に変化が起きる。
筋肉が盛り上がり、骨が太く堅く、骨格そのものが変わっていくのが分かる。

「ん……ぎっ」

別に痛い訳ではないが、体に生じた異常に思わず声が漏れる……が、ほとんど声にならない。
声帯なども変わっていってるのだろう。空気だけは漏れる音がした。

変化が起きたのは体だけではなく、装備にも変化が起こっている。
素材を使って強化していたりしていたので、元々生物っぽい部分はあったが……それでも大半は生地などであった。それが全て生物のそれに置き換わっていく。

体感的にはとても長く感じたが、実際の変化に掛かった時間はせいぜい数秒だろうか。

「うわ……うわ、これ声がどっから出てんだ?」

手足に胴体、見える範囲でも明らかに人のそれではなくなっている体を見て、声が漏れるが……その声にまた驚いてしまう。
喉から声が出てないのだ。

どこかと言われると難しいが……位置的には胃のあたりが近いかも知れない。
そこに胃があるのか? と問われるとそれはそれで怪しいが……。

「鉈と盾が体と一体化してる……まじか」

次に気になったのは手に持っていたはずの鉈と盾が肉体の一部になってしまったことだ。
盾は腕全体を覆うように透明感のある甲殻のようになっており、鉈は長くて肉厚な一本の爪と化している。

「視界もなんかおかしい、なんでここ見えるの」

頭上に手を翳せば、本来見えないはずの手が見える。
なんだろう。視界が二つあるような感じだ。
焦点も二つあるので、これはヘルメットが変化して目が出来ているんじゃないかな……。


ちょっとここまでは肉体が変わり過ぎていて、正直なんとも言えない気持ちになってしまった。
だけど素直に喜べる変化もある。

「翼もあるし飛べそうだなこれ」

身の丈よりやや小さいぐらいの翼が背中から生えていた。
これだけだとせいぜい出来て滑空ぐらいかなーって気がするけど、そこはファンタジーな能力がついているもんで、かなりの速度で自由に空を飛べそうである。

それならさっそく飛んでみようということで、クロと一緒にランデブー開始と洒落こもう。

「はやっ!?」

クロに声を掛けて、翼をくいっと羽ばたかせると、凄まじい勢いで上空へと舞い上がった。

「オゴゴォッ!?」

早すぎてちょっと制御できないですねえっ!?
ぐいんぐいんと曲がりまくった挙句、地面ですり下ろされる羽目になったわ。

こりゃ練習が必要だね。
ただ本当にかなりの速度がでるので、自在に飛べるのであれば飛竜に対しても空中でドッヅファイトと洒落こむことが出来そうだ。

あとはね。

「身体能力アホみたいにあがっとんな」

記載がないだけど、身体能力はがっつり上がってる。
体感的に倍かな?

「時間制限ないのもいいなあ……竜化もなぜか時間制限なくなってるぽいし」

ドラゴンカードは竜化に制限があったけど、飛竜カードにはそれがない。
そしてなぜか一緒に使った竜化が解ける様子がないんだよね。地味にうれしい。


「たっぷり狩ったし、帰ってご飯にしよっか」

その後はクロと一緒に実際に飛竜を狩りにいったりして、がっつり体を動かしたよ。
クロも俺も満足したので、帰ってご飯かなーって声を掛けたんだけど、クロがなにやらこっちをじーっと見つめている。


「ん? ああ、称号かー……これ効果分かんないんだよね」

一つ確認してないのあったわ。
称号だけは効果が分からんのよな。スキルと違った何か発動させるといった風でもないし……さっぱりだ。


「この称号って効果なんなんですー?」

なので作った本人に聞こうと思う。
20階のセーフルームに戻ったところで、アマツに聞いてみる。
姿は見えないけど、声を掛ければ顔を出すに違いない。

そして案の定、声を掛けるとすぐにアマツが顔をだし、笑顔で答える。

「ただのフレーバーさっ!!」

「……」

フレーバーかよぅ……。

「ちなみに誰に目を付け……気に入られるかによって内容は変わってくるよ」

「何か今へんなこと言いませんでした?」

目を付けられるとか言いかけませんでしたかね? 気のせいかな。気のせいじゃないよな。

「……じゃあもし仮にあの生首に目をつけられたら、あいつに関係する内容になると?」

「そういうことだね! 早い者勝ちだけど!」

「中村かわいそう」

「アハハ!」

どうやら俺はセーフだったようだ。
ただ中村は犠牲になるかも知れない……アマツ的には単に俺の友達ぐらいにしか思ってなさそうだし。ああでも動画とか作って……ダメだ、あれは生首と遭遇したあとだ。

たぶん中村が飛竜カードを手に入れた場合、称号としてつくのはあの生首関連の何かだろう。


「そんじゃ戻りますねー」

「うん! これからも頑張ってね!」

その後、例の呪殺の視線に関しても話を聞けたのでお暇することにした。
ちなみに味方を巻き込むかどうかは、巻き込まないので安心してほしいとのことだった。
よかったよかった。うっかり発動させて味方が全滅しました! とかなったほんと洒落ならんもんな。


んじゃ、とりあえず謎も解けた事だし帰ってご飯にしますかねー。

と、休憩所に戻ったのだけどね。

「……ん???」

俺をみた隊員さん達が急に武器を構えると、こちらに向けてきたのである。




龍化解除すんの忘れてたぜっ。

「てっきりモンスターが現れたのかと思ったぞ」

「いやー、解除すんの忘れてました。すんません」

なにせ今まで勝手に解除されてたからね……ついうっかりってやつだ。

「もしかして飛竜のカード手に入ったんだ?」

「ええ、入りました。ドラゴンカードをより強力にした感じっすね」

「っへー」

「でもそこまで見た目が変わっちまうと、人前だとちょっと使いにくいな」

俺が飛竜のカードを手に入れた事を伝えると、隊員さん達が興味津々といった様子で食いついてきた。
しかし、見た目そんなに違ったんか。確かに見える範囲はあれだったけど。うーん。

「あー……ちなみにどんな見た目だったんです? まだ鏡とかで見てなかったんすよね」

「二足歩行するドラゴン?」

まじか。ドラゴニュートぽいとかじゃなく、ドラゴンなのか。

「そんな感じ。写真とったげるからちょっと変身してみなよー」

「あ、じゃあたのんます」

「掛け声ないんだ。へんしんっとか」

さすがにそれはちょっと恥ずかしい。
小学生の時ならいけたかも知れないけど、この年になるとちょっとねえ。

まあそれはさておき龍化するとしよう。


本日二回目の龍化だけど、無事成功した。
相変わらず体がギシギシいってたけどな。

んでさっそく北上さんがパシャパシャとスマホで写真とってくれたので、拝見することに。

「こりゃまた……通りで視界が広いと思った」

ヘルメットにあると思っていた目だけど、思ったよりがっつり目だった。
人のそれじゃなくてドラゴンとか爬虫類っぽい目が二つデデンッとついてる。しかもかなりでかい。

人間部分の目も残ってはいるんだけど、こっちも見た目は変わっていてほぼドラゴンだねこりゃ。
しっかしなあ。

「まじで人の部分が二足歩行ってとこしか残ってない……」

こりゃモンスターと思われても仕方がないね。
見た目はまさに二足歩行するドラゴンだ。
ちょっと頭部が特殊な感じだけど、人よりはドラゴンのほうがずっと近い。

なんといったら良いのかな。
たとえが難しい……でっかい鮫の着ぐるみの口の中から、小さい鮫の顔がこんにちわしてるみたいな?
実際には鮫じゃなくてドラゴンだけどさ。


と、俺が写真を見ながら複雑な気持ちでいると、都丸さんが質問してきた。

「クロが使うとどうなるんだ?」

ふむ。

「そういえばまだ試してないですね……やってみる?」

俺だけ使ってクロで試してなかったな。
クロに聞いてみると『にゃー』と一応やると返事があったので、カードをいったん外してクロに渡す。

そしてクロはカードをセットするとさっそく龍化を使ったらしく、その姿が変化していく。
俺の場合は迷彩服とかヘルメットとか諸々全部、生物のように変化したが、それはクロも同じらしい。

クロの装備も原型がなくなり、やがて一つの形を作っていく。



「お、おおおぉぉっぉぉおっ!?」

龍化後のクロの姿を見た俺は思わず歓喜の声を上げていた。

そこに居たのは見た目はクロそのものだった。
ただし装備類は一切なく、サツマイモのようにまん丸となったクロであった。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...