家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
258 / 304

「258話」

しおりを挟む
クロは変化した自分の姿をしげしげと眺めていたが、やがてゴロンッと寝転がると毛づくろいをはじめる。
だが自分のお肉が邪魔になっているのか、なかなかうまくいかないようだ。
お腹を毛を舐めていたが……やがて諦めて仰向けにコテンと倒れ込む。

「やばっ、むっちゃかわいい」

「島津とはえらい違いだなおい」

「アマツさん! いや、アマツ様! ありがとうございますっ!!」

アマツのが言っていた、俺がどんな龍になるか楽しみって言葉。
あれから考えるに龍化によって変化する姿は人それぞれなんだろう。
みんな一律で龍になってしまうと、クロの姿も龍になっていたはず……それはそれでちょっと見てみたかった気もするが、いまのこの姿を見た後となってはそんな気はなくなってしまっている。

もうね、ちょっと拝んでおこうかなとか思っちゃう。てか実際拝んでおいた。
ほんといい仕事してくれるぜっ。てか、誰か失礼なこと言ってたけど気のせいかな?



その後、落ち着いたところで隊員さん達とダンジョン攻略についてちょっとお話することに。

「次はミノタウロスとかの階層なんですね」

「ああ、やっと……やっとカードがそろってな」

「ははは……」

オーガとかコボルトとかそのへんのカードを集め終えたらしく、いよいよ次のゲートキーパー戦へと挑むことにしたそうだ。
隊員さん達も順調に攻略進んでるね。俺たちも早いところカードをもう一枚手に入れて、次に進みたいところだ。

「それで、何かしらアドバイスを貰えるとありがたいんだが……」

もちろんですとも。
そんな申し訳なさそうにしなくてもしますとも。日頃お世話になってるもんね。

「そっすね。ミノタウロスは見た目のまんまの脳筋ですね。ただスキルがくっそ厄介で、衝撃波を放ってくるんです」

「衝撃波か」

んむ。
ミノタウロスで一番記憶に残ってるのはそれだね。
最初は知らないで盾でがっつり受けた際で、結構えぐいダメージを受けてしまった。
初見殺しはまじ勘弁。

中ダンジョンで出るんだから、隊員さんも知ってるんでないかな……って、同じスキル使ってくるとは限らんか。

「武器の延長線上にいるとくらいますね。盾とか貫通してきますんで頭に食らうと即死するかも知れないです。出来るだけ攻撃は回避したほうがいいです。体を少しだけでもずらせば、手足に当たる分にはそこまでダメージないと思いますんで」

「了解だ。徹底して戦うようにするよ。ありがとう」

内臓はねえ、普段は防具やら骨やらなんやらでガードしているけど、それらを無視してダメージ受けちゃうとどうしてもね。
そこさえ気を付ければミノタウロス自体を倒すのはそう難しくはないと思う。

その後は適当にだべって解散したよ。

んで、週末までは特に何事もなく飛竜を狩りまくって過ごし、そして土曜の朝を迎える。
今日は2回目の撮影を行う日だ。
北上さんには約束済みだし、太郎もくる予定となっている。現地でまってるのかな?

集合場所である5階のセーフルームへ向かうと、すでに誰かがいるようだ。

「あ、島津くんおはよー」

「北上さんおはようございまっす」

先週に引き続き、張り切ってる中村が居るのかな? と思ったが居たのは北上さんであった。
ぷらぷらとこちらに手をふる北上さんであるが、あれ? っといった感じで首を傾げる。


「あれ? クロは龍化してないんだー?」

「せっかくだから動画撮ろうと思いまして」

「なるほどねー」

しゃがみこんでクロをわしわしとなでる北上さん。
最初はちょぴり残念そうにしていたけれど、あとで龍化すると分かり嬉しそうにしている。もしかするとでぶ猫が好きなのかもしれないね。


それから程なくして中村もやってきた。

「おう、おはよー」

「おはー。太郎も連れてきたんな」

「ああ、大丈夫だろうけど放っておくとどこか行っちまうかも知れんし」

その傍らには太郎がいる……クロにあえて嬉しいのか、激しく尻尾を振りながら地面を転げまわっている。元気だなっ。
確かにこんだけ元気だとリードをぶっちぎってどこかに行ってしまいそうな気もしなくもない。

クロ? 俺の頭にしがみついてるよ。
あまり構ってやる気はないらしい。

「今日の撮影は7階から?」

ごそごそと機材の用意をする中村に、今日の予定を確認する。
実は詳しくが聞いてないんだよね。

「そのつもり。一人一階層担当して、アイスリザードだっけ? あそこまで行っちゃおうかと思ってる」

「いいね」

思っていたより先に進むのな。
アイスリザードは牛さんの次だったかな? あれも需要あるモンスターだよね。

ふむ。しかし牛さんか……牛さんといえばBBQだ。


「そういや施設の紹介動画とかってあんまないよね? 飯食うついでにBBQ広場の様子とかも撮影する?」

「あ、それいいかもな」

牛さん美味しいってことアピールしちゃおう。
お肉目当てで潜る人が……増えるかなあ。ちょっと微妙かも知れんけど、やらないよりはいいだろう。


そうこうしている内に中村の撮影準備も終わった。
なので俺たちはさっそく狩りに……の前に人も増えたし自己紹介を先にすることになったよ。


「んじゃ、自己紹介からいってみっかね。北上さんと太郎は俺が振ったら適当に自己紹介たのんます。名前と一言程度でいいんで」

「あいよー」

名前と一言……果たしてたろうに出来るのだろうかという疑問もあるが、まあ適当にワンッと吠えれば大丈夫だろう。


「一週間ぶり、中村でーす」

「島津でーす」

二回目ってこともあるし、中村の挨拶はだいぶ簡略されてる。
俺は先週と変わらずだ。
さてクロはどうなるかな……。

『うにゃん』

カメラを向けられると同時に、俺の頭上から小さく鳴き声が聞こえる。
太郎から避難してそのままだったのだ。これは視聴数稼げそうだなっ。

「北上だよー」

北上さんはカメラを向けられると、手をひらひらと振って自己紹介する。
てか一言は特にないのね。動画上げたら質問大量にきそうだなー。

さて。最後は太郎だけど……大丈夫かな。クロとはまた違った意味で不安でしょうがないんだけど。



『ハッハッハッハッ』

あかん。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...