271 / 304
「271話」
しおりを挟む
北上家でご飯を頂き、食後のお茶を飲みながら色々とお話をしていたのだけど、そろそろ遅い時間だから……と、家に戻ることにした。
お泊りはさすがにないない。
玄関を出て車に向かう俺……と遥さん。
明日は朝からダンジョン潜るから、今日もダンジョンの個室に泊まるんだそうな。なんかもうあそこが自宅と化してるよな。
んで、そんな俺たちを見送りに、総出で玄関の外へと出てきてくれた北上さん一家。
俺はぺこりと頭を下げて、お礼と別れの挨拶を述べる。
「ごはんおいしかったです。ごちそうさまでした」
「ふふ。またいつでもいらっしゃい」
「うちの道場でよければたまに鍛えにくるといい。まあ、役に立つかはわからんがな」
「はい! ありがとうございます」
こうして俺は無事に彼女の実家へお邪魔するというでかいミッションをクリアしたのであった。
ほんとよかったわ……これが「娘は貴様なんぞにやらん!」とかなってたらまじで洒落ならん。
はー……安心したらどっと疲れが出てきた。
帰ったらクロに癒されたい……ちょっと寄り道してお土産買わないとなー。
などと考えながら家まで車を走らせるのであった。
一方、車を見送った北上一家であったが……。
「どうでした? お父さん」
居間で茶をだしながら、そうたずねる遥母。
次女は自室に、長男は敷地内の見回りにいっており、ここに居るのは父と母の二人だけである。
娘の彼氏が初めて訪ねにきて、ついさきほどまで居たのだ、会話が彼氏に対してになるのも当然だろう。
遥父は方眉をあげ、お茶を受け取ると口を開く。
「母さんはどう思った?」
質問に対して質問で返すのは……と一瞬思う遥母であったが、口にすることはない。
おそらく自分よりも彼女の前にいる夫のほうが複雑な思いを抱いているであろうことは想像に難くなかったからだ。
父親とはそういうものなのだろう。
遥母は少し肩をすくめ、夫の問いに答えを返す。
「好青年そうですし、良いと思いますよ。あの子とも上手くやっているみたいですし」
そう遥母は期限良さそうに話す。
それをみた遥父の眉が、キュッと顰められる。
「ケーキ旨かったか?」
まさか買収されてないよな? と視線で問う遥父であるが、遥母は否定はしない。ニコニコと笑みを浮かべたままである。
お土産のチョイスを含めて高評価、ということなのだ。
なんとなくそれを察した遥父は、そっと視線を横にそらす……そして何かを思い出すように、ポツリと話始めた。
「確かに好青年に見える。だが、道場で見せたあの圧……」
「なにか問題があったの?」
遥父が思い出すのは、道場で最近増長しつつある子弟と対峙した婿(仮)の様子だ。
道場には遥母はついてきていなかった。自分の居ない間になにか不味い事が起きたのだろうか? と不安そうな表情を浮かべて遥母は尋ねる。
すると遥父は、視線を遥母に戻し、にっと笑みを浮かべてみせる。
「実に良い」
ならそんな意味深ないいかたするんじゃないよ。と遥母の冷たい視線が遥父に突き刺さる。
「ならお付き合いは認めるのね?」
「む……それとこれとは……いや、だが」
彼氏に対する評価は良い。
だが実際に付き合うのを認めるとなると……父親としては踏ん切りがつかないのだろう。
そんな遥父をみる遥母の視線がさらに冷たくなった。
「男っけのないあの子にできた初めての彼氏よ? 高評価なんでしょう? 絶対逃がしちゃダメよ」
「むう……」
遥母としては付き合いを認める……というか、推し進めようとしている感もある。
そんな遥母におされるように、遥父の声も小さくなっていった。
そんな風に遥父が小さくなっていると、居間の扉がガチャリと音を立て、長男の茂がミカンを手に入ってきた。
「なに、康平くんの話?」
ミカンを机上に転がし、一つを手に取ると会話に参加する。
遥父は助かったとばかりに、長男へと話しかけた。
「うむ。茂も感じただろう? 全身の毛穴が開いたかと思ったわ」
「羆と対峙したらあんな気分になるのかな? すごかったね」
「そう……なにかよく分からないけど、よかったのね」
対峙した際に無意識に発動した圧は、島津が気付いてないだけで遥父や長男にも影響があったようだ。
ただ耐えて、表情には出さなかったため島津が気付かなっただけである。
ちなみに高レベルの遥には影響がなかった。うっかり漏れ出した……そのレベルの圧であったのだ。
「ダンジョンか……」
「興味が出てきたか?」
「そうですね」
「儂もじゃ」
そういってお互いニヤリと笑みを浮かべる、遥父と長男。
そんな二人をみて、遥母は何かを思いついたように頬に指をあてた。
「あらそう? なら今度ケーキを買ってきて貰おうかしら……」
「まあ、構わんが……」
遥母はよほどダンジョン産のケーキを気に入ったようだ。
それをみて思わず苦笑する遥父。
一方、ケーキのことを詳しく知らない長男は首を傾げていた。
「そういえば、さっきも言ってたけどケーキがどうかしたの?」
そんな長男の疑問に、嬉々としてこたえる遥母。
その勢いに若干引いてる遥父と長男であったが……娘とその彼氏(仮)がダンジョンに潜っているのだ。二人がダンジョンに潜る日もそう遠くはないのかも知れない。
お泊りはさすがにないない。
玄関を出て車に向かう俺……と遥さん。
明日は朝からダンジョン潜るから、今日もダンジョンの個室に泊まるんだそうな。なんかもうあそこが自宅と化してるよな。
んで、そんな俺たちを見送りに、総出で玄関の外へと出てきてくれた北上さん一家。
俺はぺこりと頭を下げて、お礼と別れの挨拶を述べる。
「ごはんおいしかったです。ごちそうさまでした」
「ふふ。またいつでもいらっしゃい」
「うちの道場でよければたまに鍛えにくるといい。まあ、役に立つかはわからんがな」
「はい! ありがとうございます」
こうして俺は無事に彼女の実家へお邪魔するというでかいミッションをクリアしたのであった。
ほんとよかったわ……これが「娘は貴様なんぞにやらん!」とかなってたらまじで洒落ならん。
はー……安心したらどっと疲れが出てきた。
帰ったらクロに癒されたい……ちょっと寄り道してお土産買わないとなー。
などと考えながら家まで車を走らせるのであった。
一方、車を見送った北上一家であったが……。
「どうでした? お父さん」
居間で茶をだしながら、そうたずねる遥母。
次女は自室に、長男は敷地内の見回りにいっており、ここに居るのは父と母の二人だけである。
娘の彼氏が初めて訪ねにきて、ついさきほどまで居たのだ、会話が彼氏に対してになるのも当然だろう。
遥父は方眉をあげ、お茶を受け取ると口を開く。
「母さんはどう思った?」
質問に対して質問で返すのは……と一瞬思う遥母であったが、口にすることはない。
おそらく自分よりも彼女の前にいる夫のほうが複雑な思いを抱いているであろうことは想像に難くなかったからだ。
父親とはそういうものなのだろう。
遥母は少し肩をすくめ、夫の問いに答えを返す。
「好青年そうですし、良いと思いますよ。あの子とも上手くやっているみたいですし」
そう遥母は期限良さそうに話す。
それをみた遥父の眉が、キュッと顰められる。
「ケーキ旨かったか?」
まさか買収されてないよな? と視線で問う遥父であるが、遥母は否定はしない。ニコニコと笑みを浮かべたままである。
お土産のチョイスを含めて高評価、ということなのだ。
なんとなくそれを察した遥父は、そっと視線を横にそらす……そして何かを思い出すように、ポツリと話始めた。
「確かに好青年に見える。だが、道場で見せたあの圧……」
「なにか問題があったの?」
遥父が思い出すのは、道場で最近増長しつつある子弟と対峙した婿(仮)の様子だ。
道場には遥母はついてきていなかった。自分の居ない間になにか不味い事が起きたのだろうか? と不安そうな表情を浮かべて遥母は尋ねる。
すると遥父は、視線を遥母に戻し、にっと笑みを浮かべてみせる。
「実に良い」
ならそんな意味深ないいかたするんじゃないよ。と遥母の冷たい視線が遥父に突き刺さる。
「ならお付き合いは認めるのね?」
「む……それとこれとは……いや、だが」
彼氏に対する評価は良い。
だが実際に付き合うのを認めるとなると……父親としては踏ん切りがつかないのだろう。
そんな遥父をみる遥母の視線がさらに冷たくなった。
「男っけのないあの子にできた初めての彼氏よ? 高評価なんでしょう? 絶対逃がしちゃダメよ」
「むう……」
遥母としては付き合いを認める……というか、推し進めようとしている感もある。
そんな遥母におされるように、遥父の声も小さくなっていった。
そんな風に遥父が小さくなっていると、居間の扉がガチャリと音を立て、長男の茂がミカンを手に入ってきた。
「なに、康平くんの話?」
ミカンを机上に転がし、一つを手に取ると会話に参加する。
遥父は助かったとばかりに、長男へと話しかけた。
「うむ。茂も感じただろう? 全身の毛穴が開いたかと思ったわ」
「羆と対峙したらあんな気分になるのかな? すごかったね」
「そう……なにかよく分からないけど、よかったのね」
対峙した際に無意識に発動した圧は、島津が気付いてないだけで遥父や長男にも影響があったようだ。
ただ耐えて、表情には出さなかったため島津が気付かなっただけである。
ちなみに高レベルの遥には影響がなかった。うっかり漏れ出した……そのレベルの圧であったのだ。
「ダンジョンか……」
「興味が出てきたか?」
「そうですね」
「儂もじゃ」
そういってお互いニヤリと笑みを浮かべる、遥父と長男。
そんな二人をみて、遥母は何かを思いついたように頬に指をあてた。
「あらそう? なら今度ケーキを買ってきて貰おうかしら……」
「まあ、構わんが……」
遥母はよほどダンジョン産のケーキを気に入ったようだ。
それをみて思わず苦笑する遥父。
一方、ケーキのことを詳しく知らない長男は首を傾げていた。
「そういえば、さっきも言ってたけどケーキがどうかしたの?」
そんな長男の疑問に、嬉々としてこたえる遥母。
その勢いに若干引いてる遥父と長男であったが……娘とその彼氏(仮)がダンジョンに潜っているのだ。二人がダンジョンに潜る日もそう遠くはないのかも知れない。
3
あなたにおすすめの小説
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる