家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「282話」

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丸太の直撃をくらった中村は、そのまま壁に激突しずりずりと壁にもたれ掛かるようにして、地面に座り込んだ。
これ、レベル1の状態ってことで考えると、結構やばいダメージ受けてそうだけど……。

「中村いきてる?」

罠を踏まないように、全員で中村の元へと向かい、代表で俺が声を掛ける。
ちなみにクロは『あれぐらいよ避けなさいよ』と言いたげな目で中村を見ていて、太郎は中村が飛んで行ったのが面白かったのか、尻尾をぶんぶんと振りながらはしゃいでいる。
遥さん……じゃなくて、ダンジョン内だと北上さんは辺りを警戒しているようだ。
ダンジョンだし、いつ敵がくるか分からんからね、助かる。

ちなみに生首は爆笑してた。
罠の上に置いてやろうかこやつめ。


で、肝心の中村だけど……。俺の声に反応してノロノロと顔を上げ、口を開く。

「……生きてる」

無事っぽいな。
手を貸すと、すくっと立ち上がったし、ダメージが無さそう……なのか? それとも痛くないからなのか。
ぱっと見だとよう分からんけど。

普通に考えたら無事じゃないはずだから、ダメージあると考えたほうが良さそうだが……さてはて。

とりあえず中村は後ろに下げて、このまま続行とするか。それとも一度戻るべきか……なんと考えていたのだけどね。北上さんが何かに気付いたようで、すっと中村の頭上をゆびさした。

「なんか頭上にバー出てるんだけどー」

「へ?」

「あ、まじだ」

中村の頭上に、半透明なバーが浮かんでた。
よくゲームとかでキャラの頭上に表示されるようなやつだ。

なるほどね。
痛みもないし、ダメージの程度が分からんからこれ見て判断せいってことか。
それで中村がどれだけダメージ受けているかんだけどー。

「HPバーかな……もう半分じゃん」

丸太強すぎ。

「初めの一歩でHP半分なるとかひどすぎない?」

「中村の運が悪いだけの可能性も」

「くそがーっ」

たぶん、罠の配置はランダムだろうしねえ。
ほんと中村ついてない。

とりあえず慰めておこうかなーと、中村に声を掛けようとしたところで、クロと太郎が一斉に通路のほうへと顔を向けたんだ。

俺も釣られて通路へと顔を向けるが、そこには何もいないし、音もしない……が、クロと太郎の両方が反応したのだから、何かきているのだろう。

ああ、ちなみにダンジョンの造りだけど、俺たちが今いるのは床も壁も板材で出来た大部屋だ。
イメージとしては少し古めの道場をイメージしてもらえばぴったり合うと思う。
部屋の数か所には、引き戸タイプの扉があり、何故か最初から開いており、その奥に通路が続いているのが見えるが……最初の控室のように、ある程度から先は真っ暗で様子を伺うことはできない。

上を見上げれば屋根や梁が見える。アマツのダンジョンみたいに青空が見えるなんてことはない。
光源は見当たらないが、部屋の中は十分な明るさがある。
それが生首ダンジョン全てに言えるのか、それとも1階のみなのかはまだ分からないけどね。

ぱっと見で分かるのはこんな所だろうか。


「敵かな」

俺がそう呟いた時には、中村も北上さんも臨戦態勢に入っていた。
さすが、頼もしいね。

中村もなんだかんだで結構な期間をダンジョンで過ごしているしねえ。
やっぱ経験者は頼りになる。

「俺やるよ。みんなちょっと下がってて」

中村はダメージ受けてるし、ここは無傷の俺が前にでたほうが良いだろう。
北上さんでも良いんだけど、そこはやっぱ良いところ見せたいからなっ。

さて、相変わらずクロも太郎も通路へと視線を向けたままだ。
やがて通路の奥から足音が聞こえてきて……足音から二足歩行タイプかな? と思ったところで、そいつが姿を現した。

「うへ」

「わー」

そいつの姿を見て、思わず変な声を出す中村と北上さん。
俺も正直ちょっとビビったけど、なんとか声を出すのはこらえた。

出てきた敵だけどね、鳥居とか和室ときて、さらには道場ときていたから『たぶん和風の敵が出るんだろうなあ』と、なんとなくは思っていた。でもね、まさかいきなりのっぺらぼうが出るとか思わないじゃん。しかも手に包丁もってるし。

のっぺらぼうはこちらを視認すると同時に、両手で包丁を腰だめに構えて俺に向かい真っ直ぐに突進してきた。
殺意高すぎませんかね??

幸い突進する速度はそこまで早くない。普通の人と変わらないだろう。
包丁を突き出されても、普段であれば盾でいなせるレベルだとは思う……でも今さ、俺って素手なんだよね。

素手でいなせるかは微妙だし、躱せるかと言われるともっと微妙だろう。
なので待ち構えることはやめ、あえて一歩前に踏み出した。

「おっら!」

そして、踏み出したのとは逆の足で、相手の手元を思いっきり蹴り上げた。どうせならこれで死んでくれといわんばかりに。

反応できなかったのか、それともする気がなかったのか分からないが、俺が放った蹴りは見事にのっぺらぼうの手元にあたり、包丁をはじくことに成功した。

さらには思っていたより蹴りの威力があったのだろう。
のっぺらぼうの体がくの字に曲がり、その動きを止める。

「どっせい!」

チャンスと思った俺は、思いっきり掌底をのっぺらぼうの顔面に叩き込む。
ゴッと鈍い音がして、のけぞったのっぺらぼうの足がふわりと浮く。

俺はそのまま流れで顔を鷲掴みすると、思いっきり床に投げつけるように落とした。

「死んだ?」

床に頭をしこたま打ったのっぺらぼうは動きを止めたが、俺は念のため首に膝を落としておいた。
それでも動かないのっぺらぼうを見て、死んだと判断し警戒を解く。

「……死んだか」

「オーバーキルにもほどがある。てかやっぱ死ぬと消えるのな」

消える? と中村の言葉に俺は改めてのっぺらぼうの死体を見る。
すると足元から徐々に死体が消えていっていた。

10秒かそこらで死体はきれいさっぱり消えてなくなり、あとには何も残っていなかった。
ドロップもなかった。

初回特典でドロップ確定とかないのか。
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