黄昏と黎明の死者奴隷《スレイデッド》

柊木榎流

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第1章 『動き出す世界』

第2話 剣士

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「リョーダン、今いいか?」

「姫さん、どうしたんで?」

ソランの剣術の稽古を終えたリョーダンにアトラが聞いた
見た感じ散歩がてらソランの様子を見に来た所の様だが。

「ソランの調子はどうだ?うまくやっているか?」

「そうだな、あの位の子供の上達速度からすると順調ってところですかな」

ソランがリョーダンから剣術を教わりはじめてから1ヶ月
ソランの剣術は、思ったよりも順調に上達していた
この世界の剣士ソードテイマーには位があって下から
剣士(上級、中級、下級)

剣師

剣王

剣帝

剣皇

剣聖

剣神
の称号がある。
剣士ソードテイマーの中には、極稀に『剣印』と呼ばれる紋様を持つ者が居る。
『剣印』とは、3つの爪痕のような形で、身体のどこかに発現するものだ。
因みにアトラは3歳の頃に発現していて、臀部の上の方に紋様が見られる。
『剣印』は先天的にも、後天的にも発現し、発言した者は身体能力が上昇したりといった効果がある。
それ故に、位の上りが早い。
現在、ソランは中級剣士、リョーダンは剣皇、アトラは剣帝である。

「そうですか、それは楽しみですね。」

「ですがねぇ」

リョーダンが顔を曇らせた
ソランの剣術に何かが問題があるのだろうか。
アトラは、ますます不安になってきた

「いや、アイツに問題がある訳じゃない・・・事もないな。
アイツ、あの戦争で大切な人を失って、やっと立ち直れたじゃないか。
その誓いを守るために負のエネルギーで強くなろうとしてんだ」

「で、でも、それで強くなれているなら、いいのではないか?」

「それが、問題なんだよ。不安定な心で力を付け続けていたら、いつか崩れて戦えなくなっちまうんだよ。いつかの俺みたいにな。」

───最底辺で何もできなかった人間が、強くなるための支えとして心に残るのは紛れもない復讐心だ。

ソランを気遣うアトラに、リョーダンはそう、キッパリと語った
それを聞いたアトラもまた、不安定な心がどれだけ脆いか、様々な戦場を駆け抜けてきたが故にわかっていた

「アイツ自身の心を安定させなければ、これ以上前に進むことはできない」

「ソランには、それが出来るだろうか?」

「今のアイツにはなんとも・・・」

廊下内にしんみりとした雰囲気が漂う
それに痺れを切らしたリョーダンは話を切り替える

「それはそうと、ソランには会わないのか?」

「すっかり忘れていた、今ソランはどこに?」

「ああ、ソランなら自分の部屋に居るぞ」

「少し話をして来る」

と、アトラがソランの部屋へと行こうと踵を返すその時、

「姫さん、1ついいか?」

「どうした?」

「姫さん・・・アンタはどうしてソランを助けてんだ?」

『戦姫』アトラティーナはアルステラ王国の第3王女として生まれた
アトラティーナは、生まれつき『剣印』を持っていたため3才から剣術を、アルステラ王国直属の戦闘指導者であるリョーダンが仕込んでいた。
流石は『剣印』を持つ者、若干15歳で階級は剣帝、『戦姫』と呼ばれるに至った

「そんなアンタが何故、そこらにいる奴隷なんかの夢の手助けなんかしているんだ?」

そう問いかけた

「それは・・・」

アトラは顔を少し赤らめながら

「あの時聞いたソランの決意に胸を打たれてしまったから、だな」

そう言って優しく微笑んだ
そして強い意思を込めた瞳でリョーダンを見る

「この感情、よくわからないが、どうやら私はソランに恋をしてしまったんだと思う」

それを聞いたリョーダンは苦笑いする

「夢の手助けをするのはいいが、あんま無茶するなよ」

そうは言っているがリョーダンも内心では、とても喜んでいるのだった
3才から男達と剣術に打ち込んできたアトラは男より男らしい少女に育った
そのため、城内の者達からは、将来独り身だろう、と囁かれてきた
リョーダンはアトラをすぐ近くで見てきたため、あと3年で成人、本当に独り身になってしまうのじゃないか、と心配していた

「まだ付き合ってもないが・・・恋をしたと姫さん自身が理解しているなら取り敢えず一安心か」

ソランの元へと駆けていくアトラの背中を暫しの間眺めながら思うのだった

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