ループ8回目ですが、わたくしは悪役令嬢であって魔女ではありません!

仲室日月奈

文字の大きさ
29 / 47
第三章

29. 勝負の行方は

しおりを挟む
 お茶会の場所は、白い梔子とハーブが植えられている中庭だった。中央に白い円卓を置き、ケーキスタンドの一番上には綺麗な焼き色のカヌレがあった。
 高い木が大きな影を作り、風通しもよいため、意外と涼しい。
 それぞれ椅子に座り、若いメイドがティーカップの中を紅茶で満たしていく。ハーブティーだろうか。どこかホッとする上品な香りに、セラフィーナは緊張の糸がゆるんでいくのを感じた。

「さあ、どうぞ召し上がって」

 カレンデュラが口をつけたのを確かめてから、セラフィーナは手袋を外し、サンドイッチを手に取る。
 見た目も鮮やかなフルーツサンドは果物が瑞々しく、食パンの生地もふわふわだった。一口含んだ瞬間、わずかに目を見開く。

「……とても美味しいですね」
「ふふ、そうでしょう。うちのシェフは腕がいいもの」

 エディは食べ物には手をつけず、ティーカップをソーサーごと持ち上げ、ゆっくりと味わっている。白地に青の葡萄柄のティーカップは美しい曲線を描き、取っ手も洗練されたデザインだ。茶器のセンスもいい。

(それにしても、今日もカレンデュラ様の装いは気合いが入っているわね。レスポワ伯爵家の裕福な暮らしぶりを如実に表しているみたい……)

 カレンデュラはエディと世間話を始めた。
 懐かしい話なのか、エディが目元を和らげて相づちを打っている。自分にはわからない話題で盛り上がっているのは、セラフィーナへの当てつけだろう。だが、ここで口を挟むような野暮はしない。話の邪魔にならないように空気に徹した。
 和やかなお茶会が進んで紅茶のおかわりも終えた頃、カレンデュラが使用人を呼んだ。
 メイドは心得たように包みを両手で抱えて持ってきた。

「お嬢様。こちらを」
「ええ。ありがとう。──下がっていいわよ」

 メイドがぺこりと頭を下げ、背中を向ける。その姿を目で追っていると、カレンデュラが含みを持たせた口調で言った。

「セラフィーナ様。勝負のことは覚えていらして?」
「……もちろんです」
「では、私から発表させてもらうわ。どうぞ、ご覧くださいな」

 テーブルの上に、白い布がふわりと広がる。
 次の瞬間、色鮮やかな花々が目に飛び込んできた。うっとりするほど美しい庭の奥には邸宅があり、手前では小川が流れ、風で葉が舞っている。

「これは……」

 セラフィーナのつぶやきに、カレンデュラは得意げに「ふふん」と短く返し、薄紅色の髪を肩越しに払った。
 遠くから見たらきっと絵画に見えるに違いない。刺繍とは思えない大作だ。

「お見事です。これを一ヶ月で……?」
「正確に言うと、一ヶ月半ですわ。私が言い出した勝負ですもの。全力でやりました」
「しかし、カレンデュラ。だいぶ無理をしたのではありませんか?」

 心配そうに言うエディに、カレンデュラは優雅に微笑んだ。

「まあ、ご心配ありがとうございます。でも、私とあなたの未来のためですもの。このくらい、なんてことありません」
「…………」

 セラフィーナはエディと顔を見合わせた。

(正直、カレンデュラ様の作品は予想を上回る出来映えだったわ。……もう負けは確定ね)
 
 完成品を知っているエディも同じ気持ちだろう。
 別の勝負だったら結果も違っていただろうが、こればかりは致し方ない。

「……次はわたくしの番ですね」

 セラフィーナは、カレンデュラの作品の横に自分の作品を置いた。布のサイズも一回り小さいため、比較するのが申し訳ないほどだ。
 おそるおそる様子を窺うと、カレンデュラは笑顔のまま固まっていた。
 やがて、ぷるぷると腕を震わせた彼女の口から、押し殺したような小声がもれてくる。

「なによ……これ……っ」
「…………」
「こんなの、幼稚な子どもの作品じゃない! あなた、私をばかにしているの!?」

 バンッとテーブルを叩き、カレンデュラが怒りをあらわにした。
 セラフィーナは真面目な顔で言葉を返す。

「それは正真正銘、わたくしが縫った作品です」
「は……? 冗談でしょう?」
「いいえ。刺繍だけは昔から苦手でして。これでも上達したほうなのですが……」

 伏し目がちに言うと、冗談ではないことが伝わったのか、同情するような眼差しを感じた。
 気まずい沈黙が流れ、風が木の葉を揺らす。木漏れ日がちらちらと緑色に踊る。

「こほん……勝負は勝負よ。あなたにはエディ様の恋人の座から降りてもらうわ!」
「わかりました。潔く負けを認めます」
「ふふん。わかったのなら、さっさと帰るのね!」

 勝ち誇ったような顔で言われたものの、セラフィーナは首を左右に振った。

「確かに勝負に敗れ、恋人ではなくなりました。けれども、わたくしがエディ様をお慕いする気持ちに変わりはありません」
「な、何を……! あなたは負けたでしょう!」

 こうなることは想定済みだ。
 勝負には負けたが、まだ話は終わっていない。本題はここからだ。

(そもそも今回の件は、二人がしっかり話し合っていれば回避できたと思うのよね。エディ様は傷つけまいと言葉を選んだのだと思うけれど……本音をぶつけなければ気持ちは伝わらないもの。本当はこんな回りくどい真似をしなくてもよかった)

 セラフィーナはちらりとエディを見やった。

「本人に決めていただきましょう。誰が自分の恋人にふさわしいか。それとも、選ばれる自信がないとでも?」
「ば、ばかにしないでちょうだい! 私が選ばれるに決まっているでしょう。付き合いだって私のほうが長いのよ。エディ様のことをよく知っているのはあなたではなく、私。──そうでしょう!?」
「いいえ、答えは決まっています。わたくしですよね?」
「え、ええと……」

 二人から詰め寄られ、逃げ場を探すようにエディの視線がさまよう。

(カレンデュラ様に身を引かせるためには、エディ様の口から本心を話さないと意味がない。どうか気づいて……!)

 必死の願いが通じたのか、困り顔のエディが観念したように小さく息をつき、カレンデュラに向き直った。

「カレンデュラ。この際なので、はっきりお伝えしますが、私はあなたと結婚するつもりはありません。どうか私のことは諦めてください」
「な、なぜです!? 見た目や教養のどこに不足があるというのですか!? あなたの妻になるために、これまで自分磨きを頑張ってきましたのよ」

 今まで明らかな拒絶はされていなかったのだろう。カレンデュラは理解しがたいという表情で食ってかかった。
 その反応を真顔で見つめ、エディは嘆息した。

「……そういうところです。あなたは芯が強い。ただ、いささか強すぎる。自信があるのは結構ですが、努力さえすれば、すべて自分の思い通りになると決めつけているでしょう。私が好む女性像からかけ離れています」
「で、では、その女のことは……!?」

 カレンデュラが指差す先にいるのはセラフィーナだ。
 無言のまま、エディと目が合う。だがそれは一瞬だった。彼はカレンデュラに視線を戻し、話を続けた。

「少々無鉄砲なところがありますが、好ましく感じています。どちらかを将来伴侶とするならセラフィーナを選びます」
「そ……そんな」
「ですが、妹の友人としては、カレンデュラは頼りになる存在だと思っていますよ。いつも引っ込み思案の妹を引っ張ってくれているでしょう。そういう存在は貴重ですから。これからも妹のことをお願いできますか?」

 それは嘘偽りのない言葉だったのだろう。
 素直な賞賛にカレンデュラは唇をぎゅっと引き締め、拗ねたような表情を浮かべた。

「……振った女に残酷なお願いをなさるのね。いいわ。レスポワ伯爵家の名前に誓って、その願いを叶えましょう」
「ありがとうございます」

 一件落着だ。セラフィーナは静かに自分の作品を鞄にしまう。
 最初から二人でしっかり対話を重ねていれば、すれ違いも起こらなかったはずだ。けれど、エディに熱を上げていたカレンデュラは、彼の答えを自分に都合よく受け取っていた可能性が高い。
 今回、話し合いが無事に終わったのは、セラフィーナが同席していたことも大きいだろう。

(ただ……初恋に終止符を打つことになったカレンデュラ様の胸中を思うと、やはり心苦しいわね。でも芯の強い彼女なら、きっとこの痛みを乗り越えられるわ。恋人になれなくても、大事な妹を任せられる相手だとエディ様が認めているのは、それだけの信用があるからでしょうし)

 失恋の傷は残るだろうが、エディの言葉で少しは和らいだのではないだろうか。
 自分自身の欠点を見つめ直せば、彼女に寄り添える相手も見極められると思う。気づいていないだけで、案外そういう存在は近くにいるものだから。

   ◇◆◇

 話がまとまって帰る挨拶も済ませた後、ふとカレンデュラが呼び止めた。

「お待ちなさい。結局、あなたの家名を聞いていなかったわ。私だけ名乗るなんて不平等ではなくて?」
「──これは失礼いたしました。わたくしはアールベック侯爵の長女、セラフィーナと申します」

 馬車に乗ろうとしていたセラフィーナはステップから降り、ドレスをひとつかみして淑女の礼をした。
 本当は名乗る家名などない。貴族名鑑から抹消され、平民に落とされたのだから。

(だけど、今のわたくしはエディ様の偽恋人役だもの。正直に話せば、レクアル様やエディ様に迷惑をかけてしまう。それだけは避けなければ)

 レクアルから求められたのは侯爵令嬢としての教養だ。どんなに心が痛んだとしても、最後まで彼女が諦めるような女性を演じなくてはならない。
 セラフィーナは何の反応もないことに不審に思い、そっと顔を上げた。
 カレンデュラは目をぱちくりとさせていた。数十秒の間を置いて、ぷっくり二重の菖蒲色の瞳が驚きに彩られていく。

「なっ……なんですって!? あ、あなた……あのアールベック侯爵家の娘!?」
「はい。そうですが」
「あの黒魔王……んん、ヴォール宰相の娘なの? 本当に?」

 なぜか疑い深い目を向けられ、セラフィーナは小首を傾げた。

「ヴォール宰相は父です。それが何か……?」

 肯定すると、めまいを堪えるようにカレンデュラが額に手を当てた。
 それほど驚かれる理由がわからない。ここは帝国ではなく、クラッセンコルト公国だというのに。エディも心当たりがないのか、戸惑ったような顔をしている。
 やがて、カレンデュラがうめくように言った。

「アールベック家には……大きな借りがあるのよ……。なんなの、もう。初めから私は身を引くしかなかったんじゃないの……」
「ええと、カレンデュラ様?」

 話が見えず瞬きしかできずにいると、菖蒲色の瞳にキッと睨まれた。

「私は身を引くけれど、勝負は私の勝ちだったから! そのことは忘れないでちょうだい!」
「わ……わかりました」
「エディ様も! 幸せにならないと怒りますからね!?」
「……は、はい」

 今にも噛みつきそうなほどの剣幕に押され、セラフィーナとエディは頷き返す。その反応に満足したのか、カレンデュラがふんと胸を張った。

(さっぱり事情はわからないけれど……。まあ、結果よければすべてよし、ということにしておきましょう)

 改めて別れの挨拶を口にすると、カレンデュラは悔しげな顔を隠そうともしなかった。
 その素直さがまぶしかった。妹がいたら、こんな感じだろうかと思う。
 カレンデュラは後ろにいた執事になだめられて、渋々といった様子ながらも淑やかに辞儀をした。こういった光景には慣れているのか、エディが肩をすくめた。けれども、その眼差しはとても柔らかい。

(一時はどうなることかと思ったけど、喧嘩別れにならなくてよかったわ)

 セラフィーナはわずかに口元をゆるめ、今度こそ馬車に乗り込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

王妃を蔑ろにし、愛妾を寵愛していた王が冷遇していた王妃と入れ替わるお話。

ましゅぺちーの
恋愛
王妃を蔑ろにして、愛妾を寵愛していた王がある日突然その王妃と入れ替わってしまう。 王と王妃は体が元に戻るまで周囲に気づかれないようにそのまま過ごすことを決める。 しかし王は王妃の体に入ったことで今まで見えてこなかった愛妾の醜い部分が見え始めて・・・!? 全18話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

処理中です...