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放課後
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その後授業が終わり、学園は放課後を迎える。放課後の生徒たちの活動は様々で、スポーツをする者や手習いをする者など様々だが、私やクラインはどちらも学園での活動には所属していなかった。
昼休みに気まずい雰囲気になってしまったこともあり、勇気を出して私はクラインを誘うことにする。大丈夫だ、今度は気を付けてレイラを想起させる話題は振らないようにしよう。そしたら彼は私が好きな彼のままでいてくれる。
そう自分に言い聞かせて私はクラインに歩み寄る。
するとクラインはいつものように優しい笑みを浮かべて私を見る。
「どうしたんだい、カレン」
「クライン、今日は途中まで一緒に帰らない?」
「もちろんいいよ」
私の提案にクラインが頷いてくれてほっとする。
「あの、それでもし良ければ近所に新しくオープンしたカフェによらない?」
「いいよ」
「ありがとう」
クラインの答えに私は表情を輝かせる。カフェに行きたかったのは本当だし、カフェに入ればレイラの話題にはならないだろう。
そう思ってカフェに誘ったのだが、クラインが頷いてくれてほっとする。それにそこは令嬢友達も行ったらしく、彼女らにも評判が良かったので行ってみたいと思っていたのだ。
私はクラインと一緒に歩いて校舎を出ようとした。
その時だった。
「お兄様!」
後ろから聞こえてきた声に私はびくりと震えてしまう。
「どうしたレイラ?」
一方のクラインは私と話している時とは違い、穏やかな笑みを浮かべて振り返る。そこに立っていたのはきれいな金髪に巻き毛の可愛らしい外見の少女だった。一年生らしくぴしっと制服を着ているがどこか制服に着られているという印象があるあどけない少女で、もし彼女が婚約者の妹でなければ私も庇護欲をそそられたかもしれない。
レイラの方もクラインを見ると、なぜかまるで恋人の前に出た乙女のように幸せそうな笑顔を浮かべる。兄妹という関係だからそれ以上のことはないのだろうが、見ているこちらとしては不愉快だった。
が、彼女はクラインが駆け寄っていくと急に沈痛な表情を浮かべる。
「お兄様、今日は同じクラスのイレーナに虐められましたの」
「何てやつだ。一体何をされたんだ?」
「彼女は取り巻きと一緒に私のことを『ぶりっこ令嬢』とか、『恋人に色目を使った』とか言いがかりをつけてきましたの。皆で私を囲むようにして言ってくるから怖くて怖くて」
そう言って彼女は目に涙をにじませる。
「全く、何て酷い奴らだ。こんな可愛いレイラを虐めるなんて」
そんな光景を見て私は胸の奥がずきりと痛むのを感じる。婚約者の妹にこんなことを思ってしまうのは良くないことだと分かっているのに、私はイレーナという顔も知らぬ令嬢に共感してしまう。
レイラは本人が意識しているのか無意識なのかは分からないが、いわゆる「魔性の女」であった。彼女の仕草の一つ一つが男心を惹くものがあった。それで一番惹かれているのが実の兄というのは滑稽であったが。
イレーナはそんな彼女に苛ついて、つい強く言ってしまったのだろう。
「ありがとうございます、お兄様は何があっても味方だと信じていますわ」
「もちろんだ。だって僕はレイラのたった一人の兄なのだからね」
そう言って彼はレイラを抱きしめる。
兄と妹のスキンシップとしては普通のことだ。そう自分に言い聞かせようとするが、なかなかうまくいかない。
ひとしきり二人は話した後、クラインは申し訳なさそうな表情でこちらを見る。
「悪い、カレン。今日はレイラは不安定なんだ。だから彼女の側にいてやりたいんだ。だからカフェは今度にしてやってくれ」
「……分かった」
もしここで「嫌だ」と言ったらそれは我が儘だろうか。
聞き分けのない女と思われるだろうか。
そんなことを思いつつ私は頷くしかなかった。が、頷いた瞬間胸の内を無数の小さな針で刺されたような気持ちになるのだった。
昼休みに気まずい雰囲気になってしまったこともあり、勇気を出して私はクラインを誘うことにする。大丈夫だ、今度は気を付けてレイラを想起させる話題は振らないようにしよう。そしたら彼は私が好きな彼のままでいてくれる。
そう自分に言い聞かせて私はクラインに歩み寄る。
するとクラインはいつものように優しい笑みを浮かべて私を見る。
「どうしたんだい、カレン」
「クライン、今日は途中まで一緒に帰らない?」
「もちろんいいよ」
私の提案にクラインが頷いてくれてほっとする。
「あの、それでもし良ければ近所に新しくオープンしたカフェによらない?」
「いいよ」
「ありがとう」
クラインの答えに私は表情を輝かせる。カフェに行きたかったのは本当だし、カフェに入ればレイラの話題にはならないだろう。
そう思ってカフェに誘ったのだが、クラインが頷いてくれてほっとする。それにそこは令嬢友達も行ったらしく、彼女らにも評判が良かったので行ってみたいと思っていたのだ。
私はクラインと一緒に歩いて校舎を出ようとした。
その時だった。
「お兄様!」
後ろから聞こえてきた声に私はびくりと震えてしまう。
「どうしたレイラ?」
一方のクラインは私と話している時とは違い、穏やかな笑みを浮かべて振り返る。そこに立っていたのはきれいな金髪に巻き毛の可愛らしい外見の少女だった。一年生らしくぴしっと制服を着ているがどこか制服に着られているという印象があるあどけない少女で、もし彼女が婚約者の妹でなければ私も庇護欲をそそられたかもしれない。
レイラの方もクラインを見ると、なぜかまるで恋人の前に出た乙女のように幸せそうな笑顔を浮かべる。兄妹という関係だからそれ以上のことはないのだろうが、見ているこちらとしては不愉快だった。
が、彼女はクラインが駆け寄っていくと急に沈痛な表情を浮かべる。
「お兄様、今日は同じクラスのイレーナに虐められましたの」
「何てやつだ。一体何をされたんだ?」
「彼女は取り巻きと一緒に私のことを『ぶりっこ令嬢』とか、『恋人に色目を使った』とか言いがかりをつけてきましたの。皆で私を囲むようにして言ってくるから怖くて怖くて」
そう言って彼女は目に涙をにじませる。
「全く、何て酷い奴らだ。こんな可愛いレイラを虐めるなんて」
そんな光景を見て私は胸の奥がずきりと痛むのを感じる。婚約者の妹にこんなことを思ってしまうのは良くないことだと分かっているのに、私はイレーナという顔も知らぬ令嬢に共感してしまう。
レイラは本人が意識しているのか無意識なのかは分からないが、いわゆる「魔性の女」であった。彼女の仕草の一つ一つが男心を惹くものがあった。それで一番惹かれているのが実の兄というのは滑稽であったが。
イレーナはそんな彼女に苛ついて、つい強く言ってしまったのだろう。
「ありがとうございます、お兄様は何があっても味方だと信じていますわ」
「もちろんだ。だって僕はレイラのたった一人の兄なのだからね」
そう言って彼はレイラを抱きしめる。
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ひとしきり二人は話した後、クラインは申し訳なさそうな表情でこちらを見る。
「悪い、カレン。今日はレイラは不安定なんだ。だから彼女の側にいてやりたいんだ。だからカフェは今度にしてやってくれ」
「……分かった」
もしここで「嫌だ」と言ったらそれは我が儘だろうか。
聞き分けのない女と思われるだろうか。
そんなことを思いつつ私は頷くしかなかった。が、頷いた瞬間胸の内を無数の小さな針で刺されたような気持ちになるのだった。
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