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埋め合わせ
そんなことがあった翌日のことである。
さすがに昨日のことは私にとってもショックで、いつものようにクラインに話しかけるような心境にはなれなかった。
そのため、いつものように学園の教室に入ってもクラインに「おはよう」の一言が言えずに自分の席に向かう。一瞬目が合いかけたクラインは私が目をそらすと、少し寂しそうな表情に変わった。
最初の授業が終わると、私の席に少し焦った表情のクラインがやってくる。
そして不安そうな声で言った。
「もしかして、昨日の出来事をまだ気にしているのかい?」
「……いや、そんなことは」
もし気にしていると言えば私は器が小さい女だと思われてしまうだろう。
そのため、私はそう否定して聞き分けのいい女であろうとする。するとクラインは無邪気にもぱっと表情を輝かせた。
「そうか、てっきり君との約束をドタキャンする形になったから気にしているのかと思っていたけど、そうじゃなかったんだね。それなら良かった」
「そ、そうだね」
私は苦笑いを浮かべながらもそう言うしかない。内心彼は何て鈍感なんだ、と思ったが一度自分が頷いてしまったため「やっぱり気にしている」とは余計言いづらい。本当はあんなに気にしてしまっていたというのに。
「ところで、昨日カフェに行けなくなってしまった分、週末デートに行かないか? 一緒に行きたいレストランがあるんだ。本当は朝言おうと思ったんだけど言いそびれてしまってね」
「本当に!?」
それを聞いて私は思わず喜びの声をあげてしまう。何だかんだ私は彼と二人の時間を過ごしたかったのだ。彼の方からこんなことを提案してくれるなら聞き分けのいい女でいて良かった。もし我がままを言っていたらこうはならなかったかもしれない。
そんな私の喜びようを見てクラインも嬉しそうに笑う。
「喜んでもらえて良かった。レイラのことで仕方なかったとはいえ、やっぱり申し訳ないことをしたなとは思っていたんだ。だからその埋め合わせが出来て嬉しいよ」
「うん、ありがとう。本当に私は全然気にしてないから。クラインの優しいところも含めて好きだし」
そう言って私は胸を撫で下ろす。
昨日はお昼と放課後、立て続けにレイラの件で嫌な思いをしてしまっていたが、本来のクラインはこういう気遣いの出来る優しい男なのだ。
クラインの言葉に私は今朝は少し大人気なかったな、と思い直す。
この時点で私の中から昨日の件のわだかまりはほとんど消え去っていた。
ただ、思い返せば前にもこういうこともあったような気がしたが、今はそれはいいだろう、と思い直す。
「じゃあ、そういうことで僕は店の予約とかをしておくから、カレンも行きたいところがないか考えておいてくれ」
「うん、ありがとう」
私が答えると、次の授業の始まりを告げるベルが鳴り、クラインは自分の席へ戻っていった。
クラインと二人でデート。放課後を除いて丸一日一緒に過ごすのはもしかすると久しぶりかもしれない。クラインがカレンのことで過保護なのもあるが、元々お互い家の教育や手習いなども忙しいのだ。
それなら服とかアクセサリーも買いに行きたい、出来ればクラインに選んでもらいたいな、などと思いながら私は行きたいお店を考えるのだった。
さすがに昨日のことは私にとってもショックで、いつものようにクラインに話しかけるような心境にはなれなかった。
そのため、いつものように学園の教室に入ってもクラインに「おはよう」の一言が言えずに自分の席に向かう。一瞬目が合いかけたクラインは私が目をそらすと、少し寂しそうな表情に変わった。
最初の授業が終わると、私の席に少し焦った表情のクラインがやってくる。
そして不安そうな声で言った。
「もしかして、昨日の出来事をまだ気にしているのかい?」
「……いや、そんなことは」
もし気にしていると言えば私は器が小さい女だと思われてしまうだろう。
そのため、私はそう否定して聞き分けのいい女であろうとする。するとクラインは無邪気にもぱっと表情を輝かせた。
「そうか、てっきり君との約束をドタキャンする形になったから気にしているのかと思っていたけど、そうじゃなかったんだね。それなら良かった」
「そ、そうだね」
私は苦笑いを浮かべながらもそう言うしかない。内心彼は何て鈍感なんだ、と思ったが一度自分が頷いてしまったため「やっぱり気にしている」とは余計言いづらい。本当はあんなに気にしてしまっていたというのに。
「ところで、昨日カフェに行けなくなってしまった分、週末デートに行かないか? 一緒に行きたいレストランがあるんだ。本当は朝言おうと思ったんだけど言いそびれてしまってね」
「本当に!?」
それを聞いて私は思わず喜びの声をあげてしまう。何だかんだ私は彼と二人の時間を過ごしたかったのだ。彼の方からこんなことを提案してくれるなら聞き分けのいい女でいて良かった。もし我がままを言っていたらこうはならなかったかもしれない。
そんな私の喜びようを見てクラインも嬉しそうに笑う。
「喜んでもらえて良かった。レイラのことで仕方なかったとはいえ、やっぱり申し訳ないことをしたなとは思っていたんだ。だからその埋め合わせが出来て嬉しいよ」
「うん、ありがとう。本当に私は全然気にしてないから。クラインの優しいところも含めて好きだし」
そう言って私は胸を撫で下ろす。
昨日はお昼と放課後、立て続けにレイラの件で嫌な思いをしてしまっていたが、本来のクラインはこういう気遣いの出来る優しい男なのだ。
クラインの言葉に私は今朝は少し大人気なかったな、と思い直す。
この時点で私の中から昨日の件のわだかまりはほとんど消え去っていた。
ただ、思い返せば前にもこういうこともあったような気がしたが、今はそれはいいだろう、と思い直す。
「じゃあ、そういうことで僕は店の予約とかをしておくから、カレンも行きたいところがないか考えておいてくれ」
「うん、ありがとう」
私が答えると、次の授業の始まりを告げるベルが鳴り、クラインは自分の席へ戻っていった。
クラインと二人でデート。放課後を除いて丸一日一緒に過ごすのはもしかすると久しぶりかもしれない。クラインがカレンのことで過保護なのもあるが、元々お互い家の教育や手習いなども忙しいのだ。
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