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クラインの決心
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あれからクラインは自分の行いを思い返すたびにカレンになんて酷いことをしたのだろう、という自己嫌悪に襲われていた。逆に考えてみて、もしもカレンがたとえ兄弟とはいえ自分以外の男をいつも優先していたら、間違いなく不快に思うだろう。
だがカレンはクラインの謝罪を受け入れ、いつも通りに接してくれた。
ならばこちらとしても彼女への愛情を精いっぱい表現しなければ。
「最近お兄様はご機嫌ですが、何かあったのでしょうか?」
カレンとの埋め合わせデート前日、家で夕食を食べているとレイラが話しかけてきた。レイラに真実を話すと、悪いのは自分なのに彼女に負い目を負わせてしまうかもしれない、とクラインは思う。彼にとってはレイラはあくまで無邪気に兄である自分を頼っているだけの可愛い妹だった。
そこでクラインは多少ぼかして事実を話す。
「ちょっとカレンと喧嘩してしまっていたんだが、無事仲直り出来たんだ」
「そうだったのですか」
レイラはなぜか微妙な表情で言う。そんな彼女にクラインは無邪気に告げる。
「そうだ、だから明日は二人で遊びに行く予定だ」
「レイラこそ体調はどうなんだ?」
クラインが尋ねると、レイラは少し考えた。
そしてごほごほと咳をする。
「最近はよくなっていましたが、今日久しぶりに学園に行って少し体を冷やしてしまったかもしれませんわ」
「そうか。じゃあ温かくして寝るんだ」
「……お心遣いありがとうございます」
そう言ってレイラは夕食の席を去っていく。
それを見てなぜかクラインは胸騒ぎがするのだった。
翌朝、いよいよデートの日を迎える。クラインは先週着ていけなかった服を纏い、念入りに髪型を確認する。そしてカレンと行こうと思っていたお店やルートを念入りに確認した。
そんな時だった。
クラインの部屋のドアが弱々しく叩かれる。
「誰だ?」
「お兄様……助けてください、ごほっ、熱が酷いんです……」
聞こえてきたのは弱々しいレイラの声だった。
「大丈夫か!?」
ドアを開けると、そこに立っていたレイラは高熱を出して体中を震わせていた。先週よりも今の方が明らかに体調が悪そうである。
「ごほっ、ごほっ、今朝起きてから頭が痛くて全身がすごく重いんです……」
「レイラ、そんなに悪いならちゃんと寝てないとだめじゃないか!」
そう言ってクラインは彼女の体を抱きかかえると、すぐに部屋に連れていき、ベッドに寝かせて布団をかける。
確かに元々病弱気味ではあったが、最近はそれに拍車がかかっているような気がする。成長すれば病弱体質も治ると思っていたのに、とクラインは思う。
彼女を寝かせるとクラインはメイドを二人呼び、レイラが苦しんでいるのを告げる。すると二人はすぐに薬や風邪でも食べやすい食事を用意しに去っていった。
「さて、僕は今日は用事があるからもう行くよ」
「お待ちください!」
クラインが立ち上がりかけると、そう言ってレイラはクラインの裾を掴む。
そして震える声で言った。
「私、お兄様がいないと不安なんです。どうか一緒にいてはくださいませんか?」
その弱々しい声にクラインの心も揺らぐ。
妹がこんなに弱っているのに自分はそれを置いて出かけようというのか。
だが、ここ数日の間にあったことが脳裏をよぎる。確かに彼女のことは大切だ。しかし自分は医者ではない。自分に出来る看病であればメイドでも出来るだろう。
だが、カレンとのデートに行くことはクラインにしか出来ない。
(そうだ、今度こそ僕がカレンに誠意を見せなければ)
クラインは決意した。
「……悪い、レイラ。僕は行かなければならないんだ」
それを聞いてレイラの表情が変わる。
これまではこうして頼めば必ず言うことを聞いてくれたクラインに彼女は初めて拒絶された。その事実が彼女の心に悲しみよりも大きな衝撃をもたらした。
「そ、んな……」
それでもなおも懇願しようとしたレイラだったが、ショックのあまり本当に気を失ってしまった。
それを見たクラインはレイラが眠りに落ちたと思い、ゆっくりと部屋を出るのだった。
だがカレンはクラインの謝罪を受け入れ、いつも通りに接してくれた。
ならばこちらとしても彼女への愛情を精いっぱい表現しなければ。
「最近お兄様はご機嫌ですが、何かあったのでしょうか?」
カレンとの埋め合わせデート前日、家で夕食を食べているとレイラが話しかけてきた。レイラに真実を話すと、悪いのは自分なのに彼女に負い目を負わせてしまうかもしれない、とクラインは思う。彼にとってはレイラはあくまで無邪気に兄である自分を頼っているだけの可愛い妹だった。
そこでクラインは多少ぼかして事実を話す。
「ちょっとカレンと喧嘩してしまっていたんだが、無事仲直り出来たんだ」
「そうだったのですか」
レイラはなぜか微妙な表情で言う。そんな彼女にクラインは無邪気に告げる。
「そうだ、だから明日は二人で遊びに行く予定だ」
「レイラこそ体調はどうなんだ?」
クラインが尋ねると、レイラは少し考えた。
そしてごほごほと咳をする。
「最近はよくなっていましたが、今日久しぶりに学園に行って少し体を冷やしてしまったかもしれませんわ」
「そうか。じゃあ温かくして寝るんだ」
「……お心遣いありがとうございます」
そう言ってレイラは夕食の席を去っていく。
それを見てなぜかクラインは胸騒ぎがするのだった。
翌朝、いよいよデートの日を迎える。クラインは先週着ていけなかった服を纏い、念入りに髪型を確認する。そしてカレンと行こうと思っていたお店やルートを念入りに確認した。
そんな時だった。
クラインの部屋のドアが弱々しく叩かれる。
「誰だ?」
「お兄様……助けてください、ごほっ、熱が酷いんです……」
聞こえてきたのは弱々しいレイラの声だった。
「大丈夫か!?」
ドアを開けると、そこに立っていたレイラは高熱を出して体中を震わせていた。先週よりも今の方が明らかに体調が悪そうである。
「ごほっ、ごほっ、今朝起きてから頭が痛くて全身がすごく重いんです……」
「レイラ、そんなに悪いならちゃんと寝てないとだめじゃないか!」
そう言ってクラインは彼女の体を抱きかかえると、すぐに部屋に連れていき、ベッドに寝かせて布団をかける。
確かに元々病弱気味ではあったが、最近はそれに拍車がかかっているような気がする。成長すれば病弱体質も治ると思っていたのに、とクラインは思う。
彼女を寝かせるとクラインはメイドを二人呼び、レイラが苦しんでいるのを告げる。すると二人はすぐに薬や風邪でも食べやすい食事を用意しに去っていった。
「さて、僕は今日は用事があるからもう行くよ」
「お待ちください!」
クラインが立ち上がりかけると、そう言ってレイラはクラインの裾を掴む。
そして震える声で言った。
「私、お兄様がいないと不安なんです。どうか一緒にいてはくださいませんか?」
その弱々しい声にクラインの心も揺らぐ。
妹がこんなに弱っているのに自分はそれを置いて出かけようというのか。
だが、ここ数日の間にあったことが脳裏をよぎる。確かに彼女のことは大切だ。しかし自分は医者ではない。自分に出来る看病であればメイドでも出来るだろう。
だが、カレンとのデートに行くことはクラインにしか出来ない。
(そうだ、今度こそ僕がカレンに誠意を見せなければ)
クラインは決意した。
「……悪い、レイラ。僕は行かなければならないんだ」
それを聞いてレイラの表情が変わる。
これまではこうして頼めば必ず言うことを聞いてくれたクラインに彼女は初めて拒絶された。その事実が彼女の心に悲しみよりも大きな衝撃をもたらした。
「そ、んな……」
それでもなおも懇願しようとしたレイラだったが、ショックのあまり本当に気を失ってしまった。
それを見たクラインはレイラが眠りに落ちたと思い、ゆっくりと部屋を出るのだった。
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