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再会
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その日の夜、マリーは私に隠れてオリバーに会いにいったせいか、ご機嫌な様子であった。二人でよほど楽しい話をしたのだろうか。二人が私に隠れて密会していると思うと心底不愉快ではあったが、私も一週間後にはルインと会える、と思うと我慢出来た。
それにマリーは気分が良くなったからか、私に陰湿な嫌がらせをしてくることも減ったのは少しだけ嬉しいことだった。
そんな訳で、その一週間は表面上は何事もなく過ぎた。
一週間後、私はルインに会いにいく日がやってきた。本当は精いっぱいおしゃれしていきたかったが、それで義母上やマリーに怪しまれても困る。そこで私はぐっとこらえて、地味な服を着て何食わぬ顔で外出する。幸いというかなんというか、家族の誰も私の外出を怪しんでくることはなかった。
が、王都の城門に向かうにつれ、私の心に不安が募っていく。
彼は本当に来てくれるだろうか。彼が私に好意を持ってくれているのは確かだったのだが、一週間の間に心変わりしているかもしれない。
それに彼は彼で事情がありそうだったので、もしかしたらよんどころない事情でこられなくなっているかもしれない。
そんな訳で私は城門が見えてくると、緊張してしまう。
「やあ、本当に来てくれたね」
だから城門の内側でそう言って手を振ってくれる彼の姿を見て私は安堵した。
そしてぱっと笑顔を浮かべる。
「ルインさん、来てくれたのですね!」
「当然だ。僕は約束は守るからね。それに実は結構楽しみだったんだ」
「良かったです! 実は私も今日を結構楽しみにしていたんです」
「そうか、じゃあ早速行こう。楽しみ過ぎて朝食も抜いてきたんだ」
楽しみにしていたと聞いて少し嬉しかったが、どうも彼が楽しみにしていたのは食事の方だったらしい。そう思ったときだった。
“さすがに見知らぬ女性にあなたと会うのを楽しみにしていた、などと口説くようなことは言えないな”
突然、彼の心の声が聞こえてくる。そして彼も私と同じ気持ちだったんだ、と嬉しくなる。
「今日はどこに行くのでしょうか?」
「ケーキバイキングだ」
「私も一度行ってみたいと思っていたんです」
確かに男一人では入りづらいだろう。
私たちは王都の大通りにあるファンシーな装飾のお店に入る。こちらも前回のお店と負けず劣らず女性向けの雰囲気を漂わせていた。
中央のテーブルには所せましとカラフルなケーキが並んでいる。
「わあ、すごい」
「やはり男一人だからといってこういうお店にこれまで入らずにきたのは間違いだったな」
そう言って私たちはしばらくの間思い思いにケーキをとり、やがてお互い席に座る。ルインはクールそうな見た目をしているが、大皿の上にぎゅうぎゅうにケーキを載せていた。その様子は少し微笑ましい。
「ルインさん、ケーキ載せすぎじゃないですか?」
「そうか? なかなか来られないからいっぱい食べておかないといけないからね。そう言うエレンはそれだけでいいのか?」
対する私は気になったものを少しずつ乗せるだけにとどめていた。
「もちろん、またお代わりするつもりですよ」
「やっぱりそうか」
そしてしばらくの間私たちは無心でケーキを食べた。
ケーキを食べている間、ルインの心の声もケーキの感想で埋まっている。もちろん、こうして一緒にケーキを食べているだけでも楽しいのだが、私は彼との関係を一歩深めたかった。
少しして、私は意を決して切り出す。
「あの、相談したいことがあるんですが」
それにマリーは気分が良くなったからか、私に陰湿な嫌がらせをしてくることも減ったのは少しだけ嬉しいことだった。
そんな訳で、その一週間は表面上は何事もなく過ぎた。
一週間後、私はルインに会いにいく日がやってきた。本当は精いっぱいおしゃれしていきたかったが、それで義母上やマリーに怪しまれても困る。そこで私はぐっとこらえて、地味な服を着て何食わぬ顔で外出する。幸いというかなんというか、家族の誰も私の外出を怪しんでくることはなかった。
が、王都の城門に向かうにつれ、私の心に不安が募っていく。
彼は本当に来てくれるだろうか。彼が私に好意を持ってくれているのは確かだったのだが、一週間の間に心変わりしているかもしれない。
それに彼は彼で事情がありそうだったので、もしかしたらよんどころない事情でこられなくなっているかもしれない。
そんな訳で私は城門が見えてくると、緊張してしまう。
「やあ、本当に来てくれたね」
だから城門の内側でそう言って手を振ってくれる彼の姿を見て私は安堵した。
そしてぱっと笑顔を浮かべる。
「ルインさん、来てくれたのですね!」
「当然だ。僕は約束は守るからね。それに実は結構楽しみだったんだ」
「良かったです! 実は私も今日を結構楽しみにしていたんです」
「そうか、じゃあ早速行こう。楽しみ過ぎて朝食も抜いてきたんだ」
楽しみにしていたと聞いて少し嬉しかったが、どうも彼が楽しみにしていたのは食事の方だったらしい。そう思ったときだった。
“さすがに見知らぬ女性にあなたと会うのを楽しみにしていた、などと口説くようなことは言えないな”
突然、彼の心の声が聞こえてくる。そして彼も私と同じ気持ちだったんだ、と嬉しくなる。
「今日はどこに行くのでしょうか?」
「ケーキバイキングだ」
「私も一度行ってみたいと思っていたんです」
確かに男一人では入りづらいだろう。
私たちは王都の大通りにあるファンシーな装飾のお店に入る。こちらも前回のお店と負けず劣らず女性向けの雰囲気を漂わせていた。
中央のテーブルには所せましとカラフルなケーキが並んでいる。
「わあ、すごい」
「やはり男一人だからといってこういうお店にこれまで入らずにきたのは間違いだったな」
そう言って私たちはしばらくの間思い思いにケーキをとり、やがてお互い席に座る。ルインはクールそうな見た目をしているが、大皿の上にぎゅうぎゅうにケーキを載せていた。その様子は少し微笑ましい。
「ルインさん、ケーキ載せすぎじゃないですか?」
「そうか? なかなか来られないからいっぱい食べておかないといけないからね。そう言うエレンはそれだけでいいのか?」
対する私は気になったものを少しずつ乗せるだけにとどめていた。
「もちろん、またお代わりするつもりですよ」
「やっぱりそうか」
そしてしばらくの間私たちは無心でケーキを食べた。
ケーキを食べている間、ルインの心の声もケーキの感想で埋まっている。もちろん、こうして一緒にケーキを食べているだけでも楽しいのだが、私は彼との関係を一歩深めたかった。
少しして、私は意を決して切り出す。
「あの、相談したいことがあるんですが」
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